「セキュリティ・クリアランス」が16日に始まったけど…知ってる? 静かに広がる国の「秘密を守る」動き

2025年5月16日 06時00分 有料会員限定記事
0

記事をマイページに保存し、『あとで読む』ことができます。ご利用には会員登録が必要です。

 経済分野に拡大した機密情報を取り扱う民間人らの身辺を調査する「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」制度。16日から運用が始まった制度では、対象者に飲酒節度や家族の国籍などのプライバシーに踏み込む詳細な報告を求める。恣意(しい)的な「機密」設定の余地を残したまま、民間人の身辺調査を許す制度に、戦前回帰への懸念は根強い。国家の「秘密」が広がる社会の行き着くところは。(福岡範行、西田直晃)

◆飲酒トラブルや借金の有無を聞かれるの「普通に嫌」

 そもそも「適性評価」制度って知っていますか? 始動前日の15日、会社員らが行き交うJR新橋駅前で尋ねた。

記事の内容と直接関係ありません

 「こちら特報部」の質問に、スーツ姿の女性は「知らないです」と困惑。制度の概要を伝えてもピンとくることはなく、「全然、分からない」と申し訳なさそう。
 不動産会社の営業職という都内の男性(36)も「えっ、何ですか」と聞きなれない様子。内閣府が公表している対象者への「質問票」を見せると、「普通に嫌ですよね。なんで人に言わないといけないの」。男性が嫌がったのは、飲酒によるトラブルや借金の有無への質問だ。いずれも時期や具体的な内容を答えるように求めている。犯罪歴の質問にも「社会復帰へ頑張っている人もいる。過去だけで判断されるのは、かわいそう」と述べた。

「適性評価」を拒むときは配置転換などもあると念を押す不同意書

 適性評価は、流出しないよう保全すべき機密情報を扱う人の信頼性を政府が判断する制度。特定秘密保護法のしくみを経済分野にも広げるため、昨年5月、2カ月足らずの国会審議で制度を導入する「重要経済安保情報保護・活用法」が成立。運用初年度の調査対象は民間人を含む数千人に上る見通しだ。

◆不同意書には「配置換えの可能性」明記

 内閣府が今年に入って示した「質問票」はA4判で35ページ。情報を扱う可能性がある対象者に、懲戒処分歴や精神疾患の有無、家族や同居人の生年月日や国籍などの報告を求める。上司らに、対象者の情報を聞く「調査票」もある。
 適性評価は、対象者本人の同意が前提だが、報告を断る「不同意書」には「重要経済安保情報の取り扱い業務が予定されないポストに配置換えとなること等がある」とも明記され、事実上の「強制」になるのではとの懸念も根強い。

「能動的サイバー防御」法案に反対するデモでは、特定秘密保護法や経済安保との関わりを懸念する声も上がった=15日午後、東京・永田町の国会前で

 15日午後、参院での成立が迫る「能動的サイバー防御」法案に反対して国会前に集まった人々も、適性評価制度に対する懸念を共有していた。重要インフラを守る「サイバー防御」法案も経済安保をめぐる機密保全も地続きだ。政府が重要インフラの分野を増やす検討をしていることから日本出版労働組合連合会の研究員前田能成さん(72)は、「セキュリティー・クリアランスの対象になる民間人が増えると意識した方がいい」と心配。
 被差別部落出身という別の女性(61)は、身辺調査が差別を助長しかねないとし「隠し事がなければいい、という人もいるが、事情を隠している人もいる。弱い人が最初にダメージを受ける」と恐れた。

◆大学の先端技術の研究成果やデータも「営業秘密」

 国家による「機密保全」の動きは、学問の自由が保障されているはずの大学でも広がっている。
 経済産業省は3月末、不正競争防止法の保護を受けるために必要な対策を示す「営業秘密管理指針」を6年ぶりに改訂し、...

残り 1547/2883 文字

この記事は会員限定です。

有料会員に登録すると
会員向け記事が読み放題
記事にコメントが書ける
紙面ビューアーが読める(プレミアム会員)

※宅配(紙)をご購読されている方は、お得な宅配プレミアムプラン(紙の購読料+300円)がオススメです。

会員登録について詳しく見る

よくある質問はこちら

記事に『リアクション』ができます。ご利用には会員登録が必要です。

記事に『リアクション』ができます。ご利用には会員登録が必要です。

記事に『リアクション』ができます。ご利用には会員登録が必要です。

記事に『リアクション』ができます。ご利用には会員登録が必要です。

カテゴリーをフォローする

  • 『カテゴリーをフォロー』すると、マイページでまとめて記事を読むことができます。会員の方のみご利用いただけます。

  • 『カテゴリーをフォロー』すると、マイページでまとめて記事を読むことができます。会員の方のみご利用いただけます。

  • 『カテゴリーをフォロー』すると、マイページでまとめて記事を読むことができます。会員の方のみご利用いただけます。

コメントを書く

ユーザー
コメント機能利用規約

    みんなのコメント0件


おすすめ情報

こちら特報部の新着

記事一覧