日本俳優連合、反AIを置き去りにする

 2025年5月10日、経済産業省が、「肖像と声のパブリシティ価値に係る現行の不正競争防止法における考え方の整理について」と題されたpdf文書を公表。

 

https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/shozo_koe.pdf

 

 この文書が、「声優や俳優の声の無断利用に関し、不正競争防止法違反の恐れが生じる事例を示した」としてニュースで報じられ、反AIは「反AI運動の成果」「声が保護されるなら絵も保護されるはず」等として沸き立った。

 

https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/shozo_koe.pdf

 

 しかし、イラスト系の反AIとプロの声優は、一見立場が似ているようで、実際には全く主張が異なる。それは「NOMORE無断生成AI」というフレーズがこの世に生まれた瞬間からそうであった。あくまでも「NOMORE無断生成AI」であって、「NOMORE無断学習AI」ではないのである。

 

note.com

 

 最大の違いは、声優が実際にプロとして活躍している人間を被害者として設定し、いわゆる「狙い撃ちLoRA」に焦点を絞って戦おうとしたのに対し、反AIは「最終生成物に類似性があろうがなかろうが、とにかく無断で学習された可能性がある者は全員被害者」という、いわゆる「無断学習罪」のスキームで戦おうとしたという点である。

 

 無断学習罪の発明により、「被害者」とされる人間の数は爆発的に増えたが、同時に反AIは「全員が漠然と『自分は被害者だ』と思っているが、具体的に、誰が、どのような被害を受けたのか、誰も説明できない」という状態に陥った。しかも、無断学習罪は「反AIがいずれ立法されるはずと主張している架空の法」に過ぎず、現実には存在しないため、これを用いて誰かを訴える事もできない。できる事と言えばTwitterのコメント欄を荒らす事ぐらいである。

 

 声優が被害者と争点を絞る事によって勝ち筋を引き出したのに対し、イラスト系の反AIは被害者と争点を野放図に拡大させた事で方向性を見失ってしまった。両者の明暗は分かれる一方である。