米ジョージタウン大学のインド人研究者、拘束施設から釈放 裁判所命令受け
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アメリカでドナルド・トランプ政権が大学の活動家らの取り締まりを進めるなか、今年3月に入管当局に拘束されたジョージタウン大学の研究者バダル・カーン・スリ氏が14日、テキサス州の拘束施設から釈放された。連邦地裁判事がこの日、釈放を命じた。
トランプ政権は、米各地の大学キャンパス内における、イスラエルのパレスチナ・ガザ攻撃への抗議行動をめぐり、関係者らを取り締まっている。
スリ氏は3月17日にヴァージニア州の自宅前で拘束された。スリ氏は学生ビザを保有し、博士研究員として首都ワシントンにある名門ジョージタウン大学に在籍していた。
弁護団は、スリ氏が「パレスチナの権利を支持するとの発言や、家族とガザとのつながり」を理由に、取り締まりの標的にされたと主張している。
米当局はスリ氏について、「(イスラム組織)ハマスのプロパガンダを広めている」、「テロリストとして知られる、あるいはテロリストと疑われる人物とつながりがある」と非難している。
司法省は、政府には裁判手続きが終わるまでスリ氏を拘束する権利があると主張した。
しかし、ヴァージニア州東部地区連邦地方裁判所のパトリシア・トリヴァー・ジャイルズ判事は14日、スリ氏の拘束は言論の自由と適正手続きの権利の侵害にあたると判断した。
米当局、スリ氏の義父とハマスにつながりと
政府は、スリ氏の妻で米市民のマフェゼ・サレハ氏の父親は、ハマスの政治部門の高官で、スリ氏はハマスとつながりがあるとした。
しかし、BBCがアメリカで提携するCBSニュースによると、ジャイルズ判事は、スリ氏がハマスを支持していると発言したことを示す証拠は裁判所には提出されていないと述べたという。
米紙ニューヨーク・タイムズは、スリ氏の義父は昨年7月に殺害されたハマスのイスマイル・ハニヤ政治局長の元顧問だと伝えている。
スリ氏の妻のサレハ氏は裁判で、父親について、20年近くアメリカで勉強しながら暮らしていたと説明。「その後、ガザの首相の政治顧問や外務次官を務めた」とした。
また、2010年にガザの政治部門を離れ、2011年にガザでの平和と紛争解決を働きかける機関を立ち上げたとした。
サレハ氏は、スリ氏を支援する人権団体「アメリカ自由人権協会(ACLU)」のプレスリリースで、「判事の言葉を聞いて涙が出た」と語った。
「父親との再会を毎日切望してきた3人の子供たちと私で、心からのハグをしたいと強く願っている」
そして、「パレスチナで起きていることについて発言するのは、犯罪ではない」とした。
ACLUによると、トランプ政権は現在も、スリ氏を国外退去させようと、別の手続きを進めているという。
アメリカではここ数週間、複数の学生や学者らが、「暴力行為とテロリズム」を擁護しているとして、移民当局の調査を受けている。
ニューヨークにあるコロンビア大学で昨年あった、パレスチナ・ガザでの戦争をめぐる抗議活動をめぐっては、活動に参加したとして、シリア出身の同大の元大学院生マフムード・ハリル氏が3月8日、自宅アパートに戻ったところを拘束された。当局はハリル氏がハマスとつながりがあるとしているが、本人はこれを否定している。ハリル氏は米国永住権(グリーンカード)をもち、米国民と結婚している。
今月9日には、3月にマサチューセッツ州の路上で入管当局に拘束された米タフツ大学の学生ルメイサ・オズトゥルク氏が、ルイジアナ州の移民収容施設から釈放された。
オズトゥルク氏は「ハマスを支持する活動に関与」したとして拘束されていた。