幻に終わった中スポ「鳥山ワールド」企画。夢の続きは竜戦士たちに…
「Dr.スランプ」「ドラゴンボール」などの作品で知られる人気漫画家、鳥山明さんの突然の訃報は、世界中に大きな驚きと深い悲しみを与えました。
9日に「ラオウ」ことオリックスの杉本裕太郎外野手が「ドラゴンボール」にちなんだ登場曲で3安打すれば、ドラゴンズのディカーソン外野手も10日の広島戦(マツダ)で、来日初アーチとなる〝追悼弾〟。「ドラゴンボールを見ていると、自分も強くなれる気がした。とても悲しい」と、寂しげな表情を浮かべていたものです。
鳥山明さんの代表作「ドラゴンボール」のファンを公言しているディカーソン
私たち昭和の真ん中世代は「Dr.スランプ」。クラスやサークルには「アラレちゃん」のニックネームで呼ばれる明るく元気な、人気者のメガネ女子が必ずと言っていいほどいたものです。今の現役選手たちは「ドラゴンボール」の主人公、孫悟空(そん・ごくう)らと一緒に大きくなった世代なのでしょう。
私自身、鳥山さんとは面識も接点ありませんが、実は中日スポーツ時代に一度、アプローチを試みたことがありました。あれは新監督に与田剛さんを迎えた2018年のオフ、いや森繁和監督時代だったでしょうか。
低迷が続くドラゴンズ。そして、年々進む若者の活字離れ。中日スポーツ、ドラゴンズに活力を与えてくれるものは何か?…。当時、みんなで考え、出した答えが「鳥山先生に元気の出る絵を描いてもらおう」というものでした。
生まれも育ちも愛知県出身で「ドラゴンズファン」を公言していた鳥山さん。そして、「ドラゴンズ」と「ドラゴンボール」の縁。一年のスタートとなる元旦号を、夢のある『鳥山ワールド』で飾れればと…。
残念ながら鳥山さんのスケジュールの都合もあり、企画は幻に終わりましたが、あの時もし引き受けていただいていたなら、どんなヒーローを描かれていたのでしょうか?…。
でも考えてみれば現実世界のヒーローとは誰かが作り出すものではなく、時代の要求に応じ、現れるものなのかもしれません。そもそもプロ野球選手はみんな、子どもたちや野球ファンにとっての「ヒーロー」なのですから。
「ドラゴンボール」は血の滲むような修行を積み、苦難に打ち勝ち成長する悟空の姿が子どもたちを夢中にさせました。そんな救世主の出現を、日本中のD党がいま、待ち望んでいるはずです。きっと、天国の鳥山さんも―。
館林 誠(たてばやし・まこと)
兵庫県出身。スポーツ記者として主にプロ野球を担当。1991年から2000年まで中日スポーツでドラ番。プロ野球デスク、中日スポーツ報道部長を歴任し、現在は中日ドラゴンズ公式ファンクラブ事務局長。
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