前回までのエントリーで書いていたように、現在実家の建替えを行っているのですが、少し前に解体が終わりました。昭和の前期に建てられた家で、壁にヒビが入って一部の外壁は崩れかけ(実際に崩れて補修した部分もあった)、床に隙間が開いてネズミが徘徊しあちこちにフンのあとがあるような状態であったため維持は不可能で解体するしかなかったのですが、生まれ育った家でしたので、多少郷愁的なものはありました。
ただ、今回こうして実際に実家を整理解体する経験をして様々な情報を集めていると、現在社会問題になっている誰も住んでいない空き家が廃墟化する、いわゆる「空き家問題」がどうして起こるのか、そして同時にこの問題を解決するのは相当難しいだろうと感じました。
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空き家問題
昨今のニュースでは「空き家問題」、もしくは「放置空き家問題」「空き家廃墟化問題」という言葉でも耳にしますが、すなわち空き家(主に一軒家)が、それまでの家主の死亡や転居などにより、長期間誰にも管理されない状態(定義では「1年以上住んでいない、または使われていない家」)になり、崩壊の危険性による危険性やそこで起きうる治安悪化においてその建物のみならず、周囲にも悪影響を及ぼすという問題。
■参考
この問題の原因のひとつとして「空き家の所有者不明」が挙げられていますが、たとえ権利者がわかっていたとしても、その空き家が売却、解体などされず、そのまま残ってしまうケースが数多く存在しているようです。
そのため国も「空家等対策の推進に関する特別措置法」を制定し、特定した空き家に対して、助言・指導・勧告・命令、さらには罰金や行政代執行を行うことができるようにしているようです。
しかし、この法律の制定されてあ平成27年から数年経っても、むしろこの問題はニュースになります。
ただ、実際に実家を解体して感じたことは、この問題は「多分解決は相当困難、もしくは不可能ではないか」と強く感じることになりました。
解体費用の問題
そう感じた1番の理由は、「解体費用の問題」。これは実際に空き家問題全体でも最大のものと言い切ってよいでしょう。
今回、私が実家の木造建築2階建てを解体するにあたりかかった費用ですが、だいたい400万円台。当然物件や業者によってその価格は異なりますが、それでもまともな業者で一軒家で百万を下ることはおそらくないでしょう。しかもその価格はさらに上がっており、おそらく当面下がる可能性は低いです。
言うまでもなくこの金額は一般的社会人の年収相当のものであり、簡単に出せる金額ではありません。ましてやそれの所有権が突然自分に来て、何の準備もしていなかった場合は尚更。
この解体費用を手持ちの金以外から捻出するには、その土地建物を売却するか、もしくはその土地に集合住宅や貸物件を建てるなどして事業化するかになります。おそらく20世紀後半の行動経済成長期ではそのような想定をされて家が建てられたケースも多かったのではないでしょうか。
しかし現在、どの物件でもそう出来るとは限りません。むしろ、今だと売却できる物件がその地域により大きく異なり、都市部の好立地では価格も上昇しているものの、地方、または都市部でも条件が悪いと売れないという状態です。近年「負動産」と言われているものです。
ちなみにこれは地方に限らず、「再建築不可物件」という、旗竿地などで建替えができず、売却しようとしてもなかなか買い手がつかない土地がけっこうあるので、都市部の住宅密集地でも起きる問題です。その場合家が近くにあるのに中心が廃墟となっているという、さらに大きな問題にもなります。
このように、解体しようにも経済的にできない、というケースは非常に多いのではないでしょうか。
管理も困難
ただ、空き家を放置すると、自宅やその敷地の存在の可能性だけではなく、周辺にも事故の可能性や虫害、治安悪化といったリスクを伴います。それが「空き家問題」の中核でしょう。なのでせめて家の管理だけでもしようと思っても、その物件が今住んでいるところ、すなわち都会と地方の距離であればなかなか難しいことになりますし、さらにその維持をするのにも金がかかります。
私の場合は住んでいても家の劣化により壁が崩れる、水道管が劣化で水漏れする、ネズミが出るなどでかなり苦労をしましたし、何より庭の草木が落葉樹でしたので、その清掃が費用的にも手間においてもかなりの負担になりました。住んでいてこれですから、遠距離の人で収入からそこにかけられる金も少ない人であれば、現実的にかなり難しいでしょう。
余談ですが、私が解体を急ぐことになった理由は、あまりにも電気系統が古く(弄れない部分はもう昭和初期のまま)、いつ配線の劣化で火災が起きる危険性を感じていたのが大きいです。
家の中のものを処分するのにも一苦労
ならば建物は後回しにしてもせめて家の中や庭を整理してマシな状態にしておきたいとも思いますが、ここでも処分というものに金、それ以上に手間がかかります。
今回、私も解体前に家の残置物を残してとっておくか処分するかの作業をしなければならなかったのですが、親やその前の代から残っているものを全部処分するのはかなりの苦労するもの。もちろん全部の保管もできないので処分するのが大半なのですが、私の知らなかったところに非常に重要なものが混じっていたりするので一度に捨てるわけにはいかず、確認して捨てる必要があったこと、さらにはそれを分別しなければいけないという手間で相当時間と体力を消費することになりました。
さらにはここでもお金の問題がのしかかります。家庭ゴミとして捨てられないものは粗大ゴミで出す必要があります。しかしそれにも金がかかります(うちの区の場合は軽いもので400円から、大きなものになると2000円まで)。
さらにネックとなるのが、家電リサイクル法対象製品となる冷蔵庫、エアコン、洗濯機といったもの。これらは粗大ゴミでは回収してくれないので、業者に頼む必要がありますが、これで数千円(大きさやメーカーなどによって変化)がかかることになります。古い家に置きっぱなしの冷蔵庫や洗濯機などまず中古に出しても売れないでしょうから処分するしかありません(新しめのなら、ジモティーに低価格で出せば引き取ってくれるチャンスはあるかもしれませんが)。
このへんのものの引き取りや売却では、悪徳ではない店でも安く買い叩くというのはよく聞く話ですが、引き取り手にとってみれば即時引き取ってくれるし安くてもお金くれるならありがたい、というWIN-WINなのでしょう。たまに貴重なもののセットがブックオフで売られていて話題になりますが、あれももし所持している人が亡くなっていた場合、残された人が価値がわからないならいちいち選別する手間をかけるより、安くても売ってしまったほうが労力的にいいというケースが多いのでしょうね(だから悪徳業者も混じるとも言えますが)。
解決はかなり困難と思われる
このように、解体する金もない、それに割く時間もとれないとなると、放置するのが最善の策となってしまいます。たとえ固定資産税を毎年支払って損をするとしても、「ない袖は振れない」ので、解体費用が捻出できなければどうしようもありません。解体に関して助成金が出ている自治体もあり、ないよりはマシとしても、全額を賄えるほとではないとすれば、同じことになってしまうでしょう。
家を解体するというのは、普通の人では人生で一度あるかないかで、このあたりのことはニュースでは見ても実体験として知ることはほとんどないでしょう。しかし実際にこのように自分で経験すると、このようにかなり深い問題であることを改めて実感しました。
じゃあどうすれば解決するかというのも素人なりに考えてみたのですが、かなり難しいでしょう。
もし放置物件に対して罰則を設けたところで、やはりない袖は振れないので、どうしようもありません。
それなら自治体で解体するしかありませんが、一件で数百万かかるところで全部を整理するのは財政的にかなり困難でしょう。となると緊急性のある場所を除いては、もう放置されるしかない、というのが現状ではないでしょうか。
再利用を促進しているようなところもありますが、それでもやがては住めないくらいの老朽化となるでしょうし、根本的な解決からはほど遠いです。何より古い物件なので耐震性が非常に大きな課題となるでしょう。
もし本気で国や自治体が金をかけて取り組めばどうにかなるかもしれませんが、やはり現状を素人考えですると八方塞がりに近いです。
将来的には、物件を新築する場合、修繕費の積立のようにその解体費用もストックしないといけないみたいな法律ができるかもしれないと思ってしまいます。
相続前からの計画の必要性
正直、数年前まで自分がこの作業をするとは可能性としてぼんやりとした想定はしていたものの、具体的には考えていませんでした。なので相続で空き家を抱えている人も、たとえ実家があるとわかっていても、具体的に考えていなかったという人はかなり多いでしょう。しかし現実としてこういう問題が起きてしまうのです。
このあたりについても、今実家がある人は、相続全体も含めて将来の計画として今から考えておくべきことなのかもしれません。できれば現所有者としっかり話し合えるうちに。「死んだあとのことを考えるのは不吉だ」と忌避して問題を大きくするのではなく。