70代女性が神経切断で重い障害 約半年で8件の医療事故 医師と市に賠償命令
半年ほどで8件の医療事故が相次いだ兵庫県赤穂市の市民病院。手術で神経を切断され重度の障害が残った女性らが医師と市を訴えた裁判で、神戸地裁姫路支部はあわせて約8900万円の支払いを命じました。
14日午後、神戸地裁で開かれた、“医療事故”を巡る民事裁判。およそ1億4000万円の損害賠償を求め提訴されたのが、脳神経外科医師の松井宏樹被告(47)。短期間で複数の“医療事故”に関わった人物です。
事故の舞台となったのは、兵庫県の「赤穂市民病院」。松井被告が勤務を始めた2019年7月から翌年2月までの7か月間で8件の医療事故が発生、2人の患者が死亡する事態が起きました。
そのうちの1件が今回の民事裁判です。
「腰椎」の手術を受けた当時74歳の女性。脊髄の神経を切断され足などに重い障害を負ったとして、松井被告と赤穂市を提訴したのです。
一連の裁判では現場で起きた“耳を疑うような事態”が次々と明らかになりました。
2019年11月、自宅で転倒し頭部を強打した女性。かかりつけの病院を受診したところ満床で対応が難しかったため「赤穂市民病院」へ搬送されることに…。そこで診察をした医師が、松井被告でした。
後日、腰の痛みを訴え再度受診した女性に対し松井被告は、背骨の中にある神経の通り道が狭くなる「腰部脊柱管狭窄症」と診断。
松井被告(訴状より)
「手術は早くしたほうがいい。早くしないと人工透析になる可能性があります」
重度のため腰の骨の一部を取り除く手術を、“早急に行う必要がある”と説明したといいます。
2020年1月に行われた手術で、執刀医となった松井被告。手術前、同様の手術を「以前勤務していた病院で200例見たからできる」と指導医に説明していたといいます。
ところが、女性に全身麻酔がかかったタイミングで発した言葉は――
松井被告(訴状より)
「自信がない…」
実は「200例を見た」と語っていた手術は、すべてが助手としての参加で、この手術の執刀を行うのは初めてでした。松井被告が適切な止血処理を行わず、患部が見えないまま骨の切除を進め、ドリルで脊髄の神経を傷つけてしまったのです。
自分の足で歩けていた女性は、手術後、下半身に重度のマヒが残り強い痛みが襲うようになり、自力での歩行が困難となりました。