現代の母親には一人で背負わされるものが多すぎる。
産むことも、育てることも、そのために稼ぐことも、すべての責任を背負い、いろんなリサーチをし、パズルのようなスケジュールの組み立てやお金の計算をし、なんとか日々を回している母親ばかりに見える(中略)。
尊敬するが「私にもできるはず」とは到底思えないし、やりたいとも思わないので母になっていない。
『産む気もないのに生理かよ!』より
子のいない人生 当事者の葛藤 産みたくない理由つづる本が話題
子どもを「持ちたくない・いなくてもよい」と答えた人は、2024年11月に公表された調査で、35.7%に上ります(日本財団「少子化に関する意識調査」)。
そんな中、子どもを産みたいと思えない理由が赤裸々につづられた本『産む気もないのに生理かよ!』が注目を集めています。
この本に多く寄せられたのが、「言えなかった気持ちを書いてくれた」という女性たちの声。
子どもがいない女性たちのことばに耳を傾けると、生きづらさを感じる人が少なくないことがわかってきました。
(首都圏局ディレクター 立花江里香)
そんな中、子どもを産みたいと思えない理由が赤裸々につづられた本『産む気もないのに生理かよ!』が注目を集めています。
この本に多く寄せられたのが、「言えなかった気持ちを書いてくれた」という女性たちの声。
子どもがいない女性たちのことばに耳を傾けると、生きづらさを感じる人が少なくないことがわかってきました。
(首都圏局ディレクター 立花江里香)
産みたくない気持ちをことばにする葛藤
現代の母親には一人で背負わされるものが多すぎる。
産むことも、育てることも、そのために稼ぐことも、すべての責任を背負い、いろんなリサーチをし、パズルのようなスケジュールの組み立てやお金の計算をし、なんとか日々を回している母親ばかりに見える(中略)。
尊敬するが「私にもできるはず」とは到底思えないし、やりたいとも思わないので母になっていない。
『産む気もないのに生理かよ!』より
産むことも、育てることも、そのために稼ぐことも、すべての責任を背負い、いろんなリサーチをし、パズルのようなスケジュールの組み立てやお金の計算をし、なんとか日々を回している母親ばかりに見える(中略)。
尊敬するが「私にもできるはず」とは到底思えないし、やりたいとも思わないので母になっていない。
『産む気もないのに生理かよ!』より
子どもを産みたいとは思えない理由や、子どもを産むことが当然とされる社会への疑問などをつづったエッセイ集『産む気もないのに生理かよ!』。
2024年12月に発売され、子どもの有無に関わらず、共感の輪が広がっています。
著者は、ライターの月岡ツキさん(32歳)。
2024年12月に発売され、子どもの有無に関わらず、共感の輪が広がっています。
著者は、ライターの月岡ツキさん(32歳)。
4月に都内でおこなわれた、月岡さんが出演するPodcast(音声配信番組)の公開収録と本のサイン会は、80人のファンで満席になりました。
読者
「子どもはどうしようかなと思っているアラサー世代なんですけど、ずっとモヤモヤしていたことが書かれていて、『あっ、これ言いたかった』と、すごくスッと入ってくる文章やことばでした。本当にこうなりたいのか、あまりモデルがいないなというところでつまずいています」
「子どもはどうしようかなと思っているアラサー世代なんですけど、ずっとモヤモヤしていたことが書かれていて、『あっ、これ言いたかった』と、すごくスッと入ってくる文章やことばでした。本当にこうなりたいのか、あまりモデルがいないなというところでつまずいています」
読者
「半年前に子どもを産んだのですが、産む前に考えていたことがことばになっていて、肯定された気持ちになりました。母として生きていくだけの人生になるのはちょっと心配だなと思っていたけど、なかなか口に出せなかったんですよね」
「半年前に子どもを産んだのですが、産む前に考えていたことがことばになっていて、肯定された気持ちになりました。母として生きていくだけの人生になるのはちょっと心配だなと思っていたけど、なかなか口に出せなかったんですよね」
月岡さんは、子どもを産みたいとは思えない女性が書いた本が書店で見当たらず、「それなら自分で書こう」と考えました。
しかし、いざ筆を執ると、不安な気持ちもわいてきたといいます。
しかし、いざ筆を執ると、不安な気持ちもわいてきたといいます。
月岡ツキさん
「こんなことを言っていいのかな?という葛藤はありましたし、発売される前は、バッシングされたらどうしようと、すごく怖い気持ちはありました。でも、本を書いて一番多く寄せられた感想が、『言えなかった気持ちを書いてくれてありがとう』というもので、みんな言わないけれど悩んでいたんだなと。同じような悩みを抱えている人に届いて、自分の気持ちをことばにする助けになっているなら、すごく書いてよかったなと思います」
「こんなことを言っていいのかな?という葛藤はありましたし、発売される前は、バッシングされたらどうしようと、すごく怖い気持ちはありました。でも、本を書いて一番多く寄せられた感想が、『言えなかった気持ちを書いてくれてありがとう』というもので、みんな言わないけれど悩んでいたんだなと。同じような悩みを抱えている人に届いて、自分の気持ちをことばにする助けになっているなら、すごく書いてよかったなと思います」
現在、長野県で暮らしている月岡さん。文筆業に加え、週3日はIT企業で正社員として働いています。
子どもを産むかどうか考えるとき、まず思い浮かぶのは、家事や育児に追われる自分の母親の姿だったといいます。
子どもを産むかどうか考えるとき、まず思い浮かぶのは、家事や育児に追われる自分の母親の姿だったといいます。
母は、実際いろんなことに日々耐えていた。
義両親との同居や、故郷から遠く離れた土地での生活、さまざまな家のしきたりや文化の違い。仕事人間の夫がほとんど家にいない中で四人の子供を育て、毎日朝と夕方の食事とお弁当を作り、パートへ出る。書いているだけでめまいがしそうな毎日を何十年も続けていた(中略)。
自分以外の家族の都合に合わせて自分をすり減らす生活は、子供の私から見てもつらそうだった。
『産む気もないのに生理かよ!』より
義両親との同居や、故郷から遠く離れた土地での生活、さまざまな家のしきたりや文化の違い。仕事人間の夫がほとんど家にいない中で四人の子供を育て、毎日朝と夕方の食事とお弁当を作り、パートへ出る。書いているだけでめまいがしそうな毎日を何十年も続けていた(中略)。
自分以外の家族の都合に合わせて自分をすり減らす生活は、子供の私から見てもつらそうだった。
『産む気もないのに生理かよ!』より
月岡ツキさん
「うちの母親はずっと大変そうだったので、子どもの数も多かったですし、母親が自分だけのために楽しいことをやっている時間が、ほぼなかったんですよね。今の自分がいるっていうのはあるので感謝はしているんですけれど、『そんなに一人で全部抱え込まなきゃいけないのかな、いろんなことを押し付けられてしまうんだな、母親という存在は』というのは、ずっと思っていました」
「うちの母親はずっと大変そうだったので、子どもの数も多かったですし、母親が自分だけのために楽しいことをやっている時間が、ほぼなかったんですよね。今の自分がいるっていうのはあるので感謝はしているんですけれど、『そんなに一人で全部抱え込まなきゃいけないのかな、いろんなことを押し付けられてしまうんだな、母親という存在は』というのは、ずっと思っていました」
月岡さんは4年前に結婚しましたが、子どもを産むことに踏み切れずにいます。
教育資金や老後の不安、気候変動、災害、戦争など、社会の先行きが不透明な中で、子どもの人生を自分の判断でスタートさせてよいのか、決断できないといいます。
また、子育て中の母親に対する社会の風当たりの強さも感じています。
また、子育て中の母親に対する社会の風当たりの強さも感じています。
月岡ツキさん
「子どもが少ないのはよくないことだから子どもを産んでくださいと言われて、いざ子どもを産んで子育てで困りごとを抱えたときに、『自分で産んだのだから、自分の責任で何とかしなさい』と言われる。すごいダブルスタンダードだなと。どうしたらいいんだろうとやっぱり思ってしまう」
「子どもが少ないのはよくないことだから子どもを産んでくださいと言われて、いざ子どもを産んで子育てで困りごとを抱えたときに、『自分で産んだのだから、自分の責任で何とかしなさい』と言われる。すごいダブルスタンダードだなと。どうしたらいいんだろうとやっぱり思ってしまう」
それでも、ときどき「子どもを産んだ方がいいのかもしれない」という気持ちに襲われるといいます。
自分はやるべきことをやっていない未熟な存在で、子供の養育という義務を果たさずに暮らしている自分勝手な人間なのではないか。
授かれないから仕方なく……ではなく、自分で選んでそうしているのは、悪いことなのではないか、と。
「産まない選択の連続」は、浮かんでくる罪悪感を打ち消すことの連続でもある(中略)。
私はこのまま子供を持たずに生きていく自分を、いつか承認できるようになるのだろうか。
『産む気もないのに生理かよ!』より
授かれないから仕方なく……ではなく、自分で選んでそうしているのは、悪いことなのではないか、と。
「産まない選択の連続」は、浮かんでくる罪悪感を打ち消すことの連続でもある(中略)。
私はこのまま子供を持たずに生きていく自分を、いつか承認できるようになるのだろうか。
『産む気もないのに生理かよ!』より
自問自答を続ける一方で、子どもを産まないことに理由を必要とされる社会にも疑問を感じています。
月岡ツキさん
「そもそも、こんなにぐるぐる考えて説明しなきゃいけないのも、なんか変だなと思いますよね。この本を出したら注目されるぐらいですし。子どもは持たない、ほしくない、そこに理由は特にない、ということが、まだ受け入れられていないのではないかと思います」
「そもそも、こんなにぐるぐる考えて説明しなきゃいけないのも、なんか変だなと思いますよね。この本を出したら注目されるぐらいですし。子どもは持たない、ほしくない、そこに理由は特にない、ということが、まだ受け入れられていないのではないかと思います」
“子どもの有無で扱いの違いが…”
子どもがいない人生を歩んでいくことが決まった人の中にも、生きづらさを感じる人は少なくありません。
4月。東京・渋谷で、子どもがいない女性がつながり、お互いの悩みを共有する会が開かれました。
原則として子どもがいない人生が決まった女性たちを対象とした「マダネプロジェクト」です。
これまで、幅広い年代の女性、延べ600人以上が参加してきました。
原則として子どもがいない人生が決まった女性たちを対象とした「マダネプロジェクト」です。
これまで、幅広い年代の女性、延べ600人以上が参加してきました。
参加者
「世の中の映画もドラマも、どんなものも最後には親子の絆で終わるんです。世間の幸せの定義は、家族があり子どもがいて、どんな人生だろうと最終的にはそこがあればいいんだというメッセージのような気がして、本当にきつかったです」
「世の中の映画もドラマも、どんなものも最後には親子の絆で終わるんです。世間の幸せの定義は、家族があり子どもがいて、どんな人生だろうと最終的にはそこがあればいいんだというメッセージのような気がして、本当にきつかったです」
参加者
「父が亡くなったときに、親戚のおじさんから『孫の顔も見られないで亡くなるなんて、なんてかわいそうなんだ』って言われたんですよ。子どもがいない人だって、別にかわいそうじゃないじゃないですか」
「父が亡くなったときに、親戚のおじさんから『孫の顔も見られないで亡くなるなんて、なんてかわいそうなんだ』って言われたんですよ。子どもがいない人だって、別にかわいそうじゃないじゃないですか」
井上さん(仮名・54歳)は30代前半で結婚、昨年まで不妊治療を続けてきました。子どもを授からず、今は子どものいない人生を歩んでいます。
井上さん(仮名)
「過去のことを思い出して、マイナスになっちゃうこともあります。だけどそれより、もっと自分が前を向いて、元気に生きていける。それも普通なんだって思えるようになったんです」
「過去のことを思い出して、マイナスになっちゃうこともあります。だけどそれより、もっと自分が前を向いて、元気に生きていける。それも普通なんだって思えるようになったんです」
しかし、子どものいる家族に接したとき、複雑な感情を抱いてしまうことがあるといいます。
井上さん(仮名)
「職場で育休中、産休中の人が赤ちゃんを連れて見せて回ってきたときに、勝手に自分が落ち込んでしまったり。自分のメンタルが超ダメなときは、自分を守るために席を外したこともあります。そんな自分に罪悪感を持って苦しくなる。『なんでそんなことができないんだろう、自分は』と思ってしまいます」
「職場で育休中、産休中の人が赤ちゃんを連れて見せて回ってきたときに、勝手に自分が落ち込んでしまったり。自分のメンタルが超ダメなときは、自分を守るために席を外したこともあります。そんな自分に罪悪感を持って苦しくなる。『なんでそんなことができないんだろう、自分は』と思ってしまいます」
さらに、子どもがいる人と、いない自分への職場の上司の対応に差があると感じることもありました。
井上さん(仮名)
「たとえば、異動の伝え方が、子どもがいる人には『この時期に異動になっちゃうけど、近いところだから大丈夫だよ』と寄り添って伝えているのに、子どもがいない自分に対しては、『夜の勤務です。1時間半以内で行ける場所です』とあっさりと告げる。全然扱いが違う。子どもがいる・いない関係なく、いろんな人がいると思うので、少し気にしてくれると、心穏やかに、もっと頑張れると思うんですけれど」
「たとえば、異動の伝え方が、子どもがいる人には『この時期に異動になっちゃうけど、近いところだから大丈夫だよ』と寄り添って伝えているのに、子どもがいない自分に対しては、『夜の勤務です。1時間半以内で行ける場所です』とあっさりと告げる。全然扱いが違う。子どもがいる・いない関係なく、いろんな人がいると思うので、少し気にしてくれると、心穏やかに、もっと頑張れると思うんですけれど」
プロジェクトの主宰者・くどうみやこさんは、子どもがいない女性の中には、社会的な背景から疎外感を持つ人も少なくないといいます。
マダネプロジェクト主宰 くどうみやこさん
「いまは社会全体の空気感が『子どもを持つべきだよね、持った方がいいよね』となっています。持つための支援が拡充することによって、子どもがいない自分たちは気にされていない存在なのかなとか、透明人間みたいだなと感じる人もいます。それでなんとなく肩身が狭い、生きづらいという声がよく聞こえてくるようになってきましたね」
「いまは社会全体の空気感が『子どもを持つべきだよね、持った方がいいよね』となっています。持つための支援が拡充することによって、子どもがいない自分たちは気にされていない存在なのかなとか、透明人間みたいだなと感じる人もいます。それでなんとなく肩身が狭い、生きづらいという声がよく聞こえてくるようになってきましたね」
前向きに生きるヒント
子どもがいないことに生きづらさを抱えてしまう人が少なくない中で、前向きに生きるヒントも取材しました。
建築士をしている西本佳代子さん(50代後半)です。
夫の秀夫さんと22年前に結婚。子どもを産みたい気持ちは強かったものの、その前にどうしても叶えたい夢がありました。
夫の秀夫さんと22年前に結婚。子どもを産みたい気持ちは強かったものの、その前にどうしても叶えたい夢がありました。
西本佳代子さん
「独立して設計事務所をやるという決意があったので、そのために一級建築士になりたかった。それをちゃんとできたあとで、子どもは欲しいなと思っていました」
「独立して設計事務所をやるという決意があったので、そのために一級建築士になりたかった。それをちゃんとできたあとで、子どもは欲しいなと思っていました」
気持ちが揺れ動くこともありましたが、自分のやりたいことを大切にしてきたといいます。
西本佳代子さん
「妹は子どもが3人いて『お姉ちゃん、なんですぐ子どもを産まないの?今しかないでしょう?』と言われたんですけど、子どもが生まれたら一級建築士どころじゃなくなって、設計事務所をやること自体も、もしかして無理になってしまうかもしれない。周りの人にとってはどれだけ情熱あるかなんてわからないから、それはもう自分で決めるしかないと思いました」
「妹は子どもが3人いて『お姉ちゃん、なんですぐ子どもを産まないの?今しかないでしょう?』と言われたんですけど、子どもが生まれたら一級建築士どころじゃなくなって、設計事務所をやること自体も、もしかして無理になってしまうかもしれない。周りの人にとってはどれだけ情熱あるかなんてわからないから、それはもう自分で決めるしかないと思いました」
41歳になり、夢だった一級建築士の資格を取得した佳代子さん。
その後、子どものいない人生を受け入れ、「いないからこそできること」に目を向けてきました。
夏休みや春休みなど人出が多い時期を避けて旅行をしたり、長野に古民家を借り、週末に通いながら自分たちでリノベーションを行ったりしています。
その後、子どものいない人生を受け入れ、「いないからこそできること」に目を向けてきました。
夏休みや春休みなど人出が多い時期を避けて旅行をしたり、長野に古民家を借り、週末に通いながら自分たちでリノベーションを行ったりしています。
西本佳代子さん
「本当に、あとは全部楽しもうと思って、子どもがいないから自分はこんな風だと考えるんじゃなくて、子どもがいないから私はこれができる、自分のことだけじゃなくて、人のために動けることが間違いなくあるはずなので、それは自信を持ってやったほうがいいと思うんです」
「本当に、あとは全部楽しもうと思って、子どもがいないから自分はこんな風だと考えるんじゃなくて、子どもがいないから私はこれができる、自分のことだけじゃなくて、人のために動けることが間違いなくあるはずなので、それは自信を持ってやったほうがいいと思うんです」
子どものいない人生を、誰かの役に立ちながら生きようとする人もいます。
後藤さん(仮名・60歳)です。
後藤さん(仮名・60歳)です。
20代で結婚した後藤さん。30代半ばから、両親の強い要望で、不妊治療を始めました。
後藤さん(仮名)
「父親の期待がすごかったです。『将来、面倒を見てくれる人がいないのは大変なことだ、お墓を守る人がいないのは大変なことだ』と言われました」
「父親の期待がすごかったです。『将来、面倒を見てくれる人がいないのは大変なことだ、お墓を守る人がいないのは大変なことだ』と言われました」
不妊治療のストレスから38歳で治療を中断し、両親とは一時的に距離をとることにしました。
しかし、45歳を過ぎたころ、両親も後藤さんの選択を受け入れ、関係も修復していきました。
しかし、45歳を過ぎたころ、両親も後藤さんの選択を受け入れ、関係も修復していきました。
後藤さん(仮名)
「けんかする必要はないし、いかにその場から立ち去るかを考えた方がいいと思います。自分の中で納得いく答えを見つけたら、もうその通りにやっていい」
「けんかする必要はないし、いかにその場から立ち去るかを考えた方がいいと思います。自分の中で納得いく答えを見つけたら、もうその通りにやっていい」
いま、後藤さんが取り組んでいるのは、子どものいない夫婦に向けての情報発信。
内容は、夫婦2人で生きていく上での生活費や将来の介護のことなど。
境遇が同じ人の助けになることにやりがいを感じています。
境遇が同じ人の助けになることにやりがいを感じています。
後藤さん(仮名)
「老後のために今からできること、例えば経済面ではこういうこと、健康面ではこういうことをいろいろ考えておくといいですよと、おせっかいと思われるかもしれませんが、書いています。誰かの役に立ちたいなというのをすごく感じています。今はすごく充実していて、毎日が楽しいです。自分らしく、人生一度きりですし、楽しく生きたほうがいいなと思います」
「老後のために今からできること、例えば経済面ではこういうこと、健康面ではこういうことをいろいろ考えておくといいですよと、おせっかいと思われるかもしれませんが、書いています。誰かの役に立ちたいなというのをすごく感じています。今はすごく充実していて、毎日が楽しいです。自分らしく、人生一度きりですし、楽しく生きたほうがいいなと思います」
“子どもがいない自分を責めないで”
2024年11月に公表された少子化に関する意識調査では、子どもを「持ちたくない・いなくてもよい」と答えた人はおよそ35.7%に上ります。
「子どもを望まない理由」で最も多いのが「経済的な負担が大きいから」。
次いで「自分の自由な時間や生活を優先したいから」「出産・育児に自信がないから」「子どものしつけなどストレスが増えそうだから」などが上がっています。
この結果をどう見ればよいのか、家族社会学が専門の西野理子さんに聞きました。
次いで「自分の自由な時間や生活を優先したいから」「出産・育児に自信がないから」「子どものしつけなどストレスが増えそうだから」などが上がっています。
この結果をどう見ればよいのか、家族社会学が専門の西野理子さんに聞きました。
東洋大学社会学部 西野理子教授
「ネット調査のためか、未婚者の回答がやや多い調査結果であることは前置きしておきますが、若い人にとって、子どもを持ちたいという気持ちが“当たり前ではなくなっている”ことの現れだと思います。『経済的な負担が大きい』というのは2000年ころからずっと言われています。就職氷河期もあり、日本の経済が停滞していて、明るい未来が見えないなかで、子どもが持てないのが実情です。また、子育てはすべて親の責任という自己責任論があまりに強いので、子どもを育て上げる自信が持てない人が多いと感じます。そのような中で月岡さんのように声を上げることは非常に重要で、社会を動かす力になっていくのではないかと期待されます」
「ネット調査のためか、未婚者の回答がやや多い調査結果であることは前置きしておきますが、若い人にとって、子どもを持ちたいという気持ちが“当たり前ではなくなっている”ことの現れだと思います。『経済的な負担が大きい』というのは2000年ころからずっと言われています。就職氷河期もあり、日本の経済が停滞していて、明るい未来が見えないなかで、子どもが持てないのが実情です。また、子育てはすべて親の責任という自己責任論があまりに強いので、子どもを育て上げる自信が持てない人が多いと感じます。そのような中で月岡さんのように声を上げることは非常に重要で、社会を動かす力になっていくのではないかと期待されます」
子どもを望まないという意識だけでなく、実際に子どものいない人の割合も増えています。
2024年6月に公表されたOECDのデータによると、「生涯子どもがいない女性の割合」は、日本が加盟する38か国のなかで最も高く、28.3%に上っています。
2024年6月に公表されたOECDのデータによると、「生涯子どもがいない女性の割合」は、日本が加盟する38か国のなかで最も高く、28.3%に上っています。
この調査は男性のデータはないのですが、割合は女性より大きいと言われています。
この割合の推移を見ると、それまでは11%ほどだったのが、この20年で急増していることがわかります。
この割合の推移を見ると、それまでは11%ほどだったのが、この20年で急増していることがわかります。
東洋大学社会学部 西野理子教授
「子どもがいない人の中には、『少子化の原因だと責められている』と感じてしまう人もいるかもしれませんが、そう思う必要はありません。家族のかたちは、時代や社会が変われば変化するものです。現代は、子どもは自然に任せるものではなく、選択する対象になっています。結婚をしない人や子どもがいない人がこれだけいるのですから、現実の社会もそれに合わせて変わっていく必要があります」
「子どもがいない人の中には、『少子化の原因だと責められている』と感じてしまう人もいるかもしれませんが、そう思う必要はありません。家族のかたちは、時代や社会が変われば変化するものです。現代は、子どもは自然に任せるものではなく、選択する対象になっています。結婚をしない人や子どもがいない人がこれだけいるのですから、現実の社会もそれに合わせて変わっていく必要があります」
取材後記
月岡さんと同い年の私にとって、「子どものいる人生が当たり前」という考えはありませんでした。
しかし、取材を始めると、40代以上の世代や地方に長く住んでいた方からは、「親族や周囲のプレッシャーがまだある」「肩身が狭い」などの声が多く上がりました。なかでも、周りに自分と同じ立場の人が少ないという人ほど、自分の気持ちを周囲に打ち明けられず、苦しんでいると感じました。
また、出産する性である女性のほうが、男性よりも“子ども”の有無について、責任を感じやすい傾向にあることも分かりました(男性は“結婚”に責任を感じやすい傾向)。
時代は変わり続けているなかで、ようやく上げられるようになった声や、押し殺されてきた声があることを知っていただきたいとともに、一人ひとりの生き方が尊重される社会になってほしいと思います。
(5月2日「首都圏情報ネタドリ!」で放送)
しかし、取材を始めると、40代以上の世代や地方に長く住んでいた方からは、「親族や周囲のプレッシャーがまだある」「肩身が狭い」などの声が多く上がりました。なかでも、周りに自分と同じ立場の人が少ないという人ほど、自分の気持ちを周囲に打ち明けられず、苦しんでいると感じました。
また、出産する性である女性のほうが、男性よりも“子ども”の有無について、責任を感じやすい傾向にあることも分かりました(男性は“結婚”に責任を感じやすい傾向)。
時代は変わり続けているなかで、ようやく上げられるようになった声や、押し殺されてきた声があることを知っていただきたいとともに、一人ひとりの生き方が尊重される社会になってほしいと思います。
(5月2日「首都圏情報ネタドリ!」で放送)
首都圏局ディレクター
立花江里香
2016年入局
名古屋局を経て2020年から首都圏局
社会保障や経済などをテーマに番組を制作
立花江里香
2016年入局
名古屋局を経て2020年から首都圏局
社会保障や経済などをテーマに番組を制作
WEB
特集 子のいない人生 当事者の葛藤 産みたくない理由つづる本が話題
子どもを「持ちたくない・いなくてもよい」と答えた人は、2024年11月に公表された調査で、35.7%に上ります(日本財団「少子化に関する意識調査」)。
そんな中、子どもを産みたいと思えない理由が赤裸々につづられた本『産む気もないのに生理かよ!』が注目を集めています。
この本に多く寄せられたのが、「言えなかった気持ちを書いてくれた」という女性たちの声。
子どもがいない女性たちのことばに耳を傾けると、生きづらさを感じる人が少なくないことがわかってきました。
(首都圏局ディレクター 立花江里香)
産みたくない気持ちをことばにする葛藤
子どもを産みたいとは思えない理由や、子どもを産むことが当然とされる社会への疑問などをつづったエッセイ集『産む気もないのに生理かよ!』。
2024年12月に発売され、子どもの有無に関わらず、共感の輪が広がっています。
著者は、ライターの月岡ツキさん(32歳)。
2024年12月に発売され、子どもの有無に関わらず、共感の輪が広がっています。
著者は、ライターの月岡ツキさん(32歳)。
4月に都内でおこなわれた、月岡さんが出演するPodcast(音声配信番組)の公開収録と本のサイン会は、80人のファンで満席になりました。
読者
「子どもはどうしようかなと思っているアラサー世代なんですけど、ずっとモヤモヤしていたことが書かれていて、『あっ、これ言いたかった』と、すごくスッと入ってくる文章やことばでした。本当にこうなりたいのか、あまりモデルがいないなというところでつまずいています」
「子どもはどうしようかなと思っているアラサー世代なんですけど、ずっとモヤモヤしていたことが書かれていて、『あっ、これ言いたかった』と、すごくスッと入ってくる文章やことばでした。本当にこうなりたいのか、あまりモデルがいないなというところでつまずいています」
読者
「半年前に子どもを産んだのですが、産む前に考えていたことがことばになっていて、肯定された気持ちになりました。母として生きていくだけの人生になるのはちょっと心配だなと思っていたけど、なかなか口に出せなかったんですよね」
「半年前に子どもを産んだのですが、産む前に考えていたことがことばになっていて、肯定された気持ちになりました。母として生きていくだけの人生になるのはちょっと心配だなと思っていたけど、なかなか口に出せなかったんですよね」
月岡さんは、子どもを産みたいとは思えない女性が書いた本が書店で見当たらず、「それなら自分で書こう」と考えました。
しかし、いざ筆を執ると、不安な気持ちもわいてきたといいます。
しかし、いざ筆を執ると、不安な気持ちもわいてきたといいます。
月岡ツキさん
「こんなことを言っていいのかな?という葛藤はありましたし、発売される前は、バッシングされたらどうしようと、すごく怖い気持ちはありました。でも、本を書いて一番多く寄せられた感想が、『言えなかった気持ちを書いてくれてありがとう』というもので、みんな言わないけれど悩んでいたんだなと。同じような悩みを抱えている人に届いて、自分の気持ちをことばにする助けになっているなら、すごく書いてよかったなと思います」
「こんなことを言っていいのかな?という葛藤はありましたし、発売される前は、バッシングされたらどうしようと、すごく怖い気持ちはありました。でも、本を書いて一番多く寄せられた感想が、『言えなかった気持ちを書いてくれてありがとう』というもので、みんな言わないけれど悩んでいたんだなと。同じような悩みを抱えている人に届いて、自分の気持ちをことばにする助けになっているなら、すごく書いてよかったなと思います」
現在、長野県で暮らしている月岡さん。文筆業に加え、週3日はIT企業で正社員として働いています。
子どもを産むかどうか考えるとき、まず思い浮かぶのは、家事や育児に追われる自分の母親の姿だったといいます。
子どもを産むかどうか考えるとき、まず思い浮かぶのは、家事や育児に追われる自分の母親の姿だったといいます。
母は、実際いろんなことに日々耐えていた。
義両親との同居や、故郷から遠く離れた土地での生活、さまざまな家のしきたりや文化の違い。仕事人間の夫がほとんど家にいない中で四人の子供を育て、毎日朝と夕方の食事とお弁当を作り、パートへ出る。書いているだけでめまいがしそうな毎日を何十年も続けていた(中略)。
自分以外の家族の都合に合わせて自分をすり減らす生活は、子供の私から見てもつらそうだった。
『産む気もないのに生理かよ!』より
義両親との同居や、故郷から遠く離れた土地での生活、さまざまな家のしきたりや文化の違い。仕事人間の夫がほとんど家にいない中で四人の子供を育て、毎日朝と夕方の食事とお弁当を作り、パートへ出る。書いているだけでめまいがしそうな毎日を何十年も続けていた(中略)。
自分以外の家族の都合に合わせて自分をすり減らす生活は、子供の私から見てもつらそうだった。
『産む気もないのに生理かよ!』より
月岡ツキさん
「うちの母親はずっと大変そうだったので、子どもの数も多かったですし、母親が自分だけのために楽しいことをやっている時間が、ほぼなかったんですよね。今の自分がいるっていうのはあるので感謝はしているんですけれど、『そんなに一人で全部抱え込まなきゃいけないのかな、いろんなことを押し付けられてしまうんだな、母親という存在は』というのは、ずっと思っていました」
「うちの母親はずっと大変そうだったので、子どもの数も多かったですし、母親が自分だけのために楽しいことをやっている時間が、ほぼなかったんですよね。今の自分がいるっていうのはあるので感謝はしているんですけれど、『そんなに一人で全部抱え込まなきゃいけないのかな、いろんなことを押し付けられてしまうんだな、母親という存在は』というのは、ずっと思っていました」
月岡さんは4年前に結婚しましたが、子どもを産むことに踏み切れずにいます。
教育資金や老後の不安、気候変動、災害、戦争など、社会の先行きが不透明な中で、子どもの人生を自分の判断でスタートさせてよいのか、決断できないといいます。
また、子育て中の母親に対する社会の風当たりの強さも感じています。
また、子育て中の母親に対する社会の風当たりの強さも感じています。
月岡ツキさん
「子どもが少ないのはよくないことだから子どもを産んでくださいと言われて、いざ子どもを産んで子育てで困りごとを抱えたときに、『自分で産んだのだから、自分の責任で何とかしなさい』と言われる。すごいダブルスタンダードだなと。どうしたらいいんだろうとやっぱり思ってしまう」
「子どもが少ないのはよくないことだから子どもを産んでくださいと言われて、いざ子どもを産んで子育てで困りごとを抱えたときに、『自分で産んだのだから、自分の責任で何とかしなさい』と言われる。すごいダブルスタンダードだなと。どうしたらいいんだろうとやっぱり思ってしまう」
それでも、ときどき「子どもを産んだ方がいいのかもしれない」という気持ちに襲われるといいます。
自分はやるべきことをやっていない未熟な存在で、子供の養育という義務を果たさずに暮らしている自分勝手な人間なのではないか。
授かれないから仕方なく……ではなく、自分で選んでそうしているのは、悪いことなのではないか、と。
「産まない選択の連続」は、浮かんでくる罪悪感を打ち消すことの連続でもある(中略)。
私はこのまま子供を持たずに生きていく自分を、いつか承認できるようになるのだろうか。
『産む気もないのに生理かよ!』より
授かれないから仕方なく……ではなく、自分で選んでそうしているのは、悪いことなのではないか、と。
「産まない選択の連続」は、浮かんでくる罪悪感を打ち消すことの連続でもある(中略)。
私はこのまま子供を持たずに生きていく自分を、いつか承認できるようになるのだろうか。
『産む気もないのに生理かよ!』より
自問自答を続ける一方で、子どもを産まないことに理由を必要とされる社会にも疑問を感じています。
月岡ツキさん
「そもそも、こんなにぐるぐる考えて説明しなきゃいけないのも、なんか変だなと思いますよね。この本を出したら注目されるぐらいですし。子どもは持たない、ほしくない、そこに理由は特にない、ということが、まだ受け入れられていないのではないかと思います」
「そもそも、こんなにぐるぐる考えて説明しなきゃいけないのも、なんか変だなと思いますよね。この本を出したら注目されるぐらいですし。子どもは持たない、ほしくない、そこに理由は特にない、ということが、まだ受け入れられていないのではないかと思います」
“子どもの有無で扱いの違いが…”
子どもがいない人生を歩んでいくことが決まった人の中にも、生きづらさを感じる人は少なくありません。
4月。東京・渋谷で、子どもがいない女性がつながり、お互いの悩みを共有する会が開かれました。
原則として子どもがいない人生が決まった女性たちを対象とした「マダネプロジェクト」です。
これまで、幅広い年代の女性、延べ600人以上が参加してきました。
原則として子どもがいない人生が決まった女性たちを対象とした「マダネプロジェクト」です。
これまで、幅広い年代の女性、延べ600人以上が参加してきました。
参加者
「世の中の映画もドラマも、どんなものも最後には親子の絆で終わるんです。世間の幸せの定義は、家族があり子どもがいて、どんな人生だろうと最終的にはそこがあればいいんだというメッセージのような気がして、本当にきつかったです」
「世の中の映画もドラマも、どんなものも最後には親子の絆で終わるんです。世間の幸せの定義は、家族があり子どもがいて、どんな人生だろうと最終的にはそこがあればいいんだというメッセージのような気がして、本当にきつかったです」
参加者
「父が亡くなったときに、親戚のおじさんから『孫の顔も見られないで亡くなるなんて、なんてかわいそうなんだ』って言われたんですよ。子どもがいない人だって、別にかわいそうじゃないじゃないですか」
「父が亡くなったときに、親戚のおじさんから『孫の顔も見られないで亡くなるなんて、なんてかわいそうなんだ』って言われたんですよ。子どもがいない人だって、別にかわいそうじゃないじゃないですか」
井上さん(仮名・54歳)は30代前半で結婚、昨年まで不妊治療を続けてきました。子どもを授からず、今は子どものいない人生を歩んでいます。
井上さん(仮名)
「過去のことを思い出して、マイナスになっちゃうこともあります。だけどそれより、もっと自分が前を向いて、元気に生きていける。それも普通なんだって思えるようになったんです」
「過去のことを思い出して、マイナスになっちゃうこともあります。だけどそれより、もっと自分が前を向いて、元気に生きていける。それも普通なんだって思えるようになったんです」
しかし、子どものいる家族に接したとき、複雑な感情を抱いてしまうことがあるといいます。
井上さん(仮名)
「職場で育休中、産休中の人が赤ちゃんを連れて見せて回ってきたときに、勝手に自分が落ち込んでしまったり。自分のメンタルが超ダメなときは、自分を守るために席を外したこともあります。そんな自分に罪悪感を持って苦しくなる。『なんでそんなことができないんだろう、自分は』と思ってしまいます」
「職場で育休中、産休中の人が赤ちゃんを連れて見せて回ってきたときに、勝手に自分が落ち込んでしまったり。自分のメンタルが超ダメなときは、自分を守るために席を外したこともあります。そんな自分に罪悪感を持って苦しくなる。『なんでそんなことができないんだろう、自分は』と思ってしまいます」
さらに、子どもがいる人と、いない自分への職場の上司の対応に差があると感じることもありました。
井上さん(仮名)
「たとえば、異動の伝え方が、子どもがいる人には『この時期に異動になっちゃうけど、近いところだから大丈夫だよ』と寄り添って伝えているのに、子どもがいない自分に対しては、『夜の勤務です。1時間半以内で行ける場所です』とあっさりと告げる。全然扱いが違う。子どもがいる・いない関係なく、いろんな人がいると思うので、少し気にしてくれると、心穏やかに、もっと頑張れると思うんですけれど」
「たとえば、異動の伝え方が、子どもがいる人には『この時期に異動になっちゃうけど、近いところだから大丈夫だよ』と寄り添って伝えているのに、子どもがいない自分に対しては、『夜の勤務です。1時間半以内で行ける場所です』とあっさりと告げる。全然扱いが違う。子どもがいる・いない関係なく、いろんな人がいると思うので、少し気にしてくれると、心穏やかに、もっと頑張れると思うんですけれど」
プロジェクトの主宰者・くどうみやこさんは、子どもがいない女性の中には、社会的な背景から疎外感を持つ人も少なくないといいます。
マダネプロジェクト主宰 くどうみやこさん
「いまは社会全体の空気感が『子どもを持つべきだよね、持った方がいいよね』となっています。持つための支援が拡充することによって、子どもがいない自分たちは気にされていない存在なのかなとか、透明人間みたいだなと感じる人もいます。それでなんとなく肩身が狭い、生きづらいという声がよく聞こえてくるようになってきましたね」
「いまは社会全体の空気感が『子どもを持つべきだよね、持った方がいいよね』となっています。持つための支援が拡充することによって、子どもがいない自分たちは気にされていない存在なのかなとか、透明人間みたいだなと感じる人もいます。それでなんとなく肩身が狭い、生きづらいという声がよく聞こえてくるようになってきましたね」
前向きに生きるヒント
子どもがいないことに生きづらさを抱えてしまう人が少なくない中で、前向きに生きるヒントも取材しました。
建築士をしている西本佳代子さん(50代後半)です。
夫の秀夫さんと22年前に結婚。子どもを産みたい気持ちは強かったものの、その前にどうしても叶えたい夢がありました。
夫の秀夫さんと22年前に結婚。子どもを産みたい気持ちは強かったものの、その前にどうしても叶えたい夢がありました。
西本佳代子さん
「独立して設計事務所をやるという決意があったので、そのために一級建築士になりたかった。それをちゃんとできたあとで、子どもは欲しいなと思っていました」
「独立して設計事務所をやるという決意があったので、そのために一級建築士になりたかった。それをちゃんとできたあとで、子どもは欲しいなと思っていました」
気持ちが揺れ動くこともありましたが、自分のやりたいことを大切にしてきたといいます。
西本佳代子さん
「妹は子どもが3人いて『お姉ちゃん、なんですぐ子どもを産まないの?今しかないでしょう?』と言われたんですけど、子どもが生まれたら一級建築士どころじゃなくなって、設計事務所をやること自体も、もしかして無理になってしまうかもしれない。周りの人にとってはどれだけ情熱あるかなんてわからないから、それはもう自分で決めるしかないと思いました」
「妹は子どもが3人いて『お姉ちゃん、なんですぐ子どもを産まないの?今しかないでしょう?』と言われたんですけど、子どもが生まれたら一級建築士どころじゃなくなって、設計事務所をやること自体も、もしかして無理になってしまうかもしれない。周りの人にとってはどれだけ情熱あるかなんてわからないから、それはもう自分で決めるしかないと思いました」
41歳になり、夢だった一級建築士の資格を取得した佳代子さん。
その後、子どものいない人生を受け入れ、「いないからこそできること」に目を向けてきました。
夏休みや春休みなど人出が多い時期を避けて旅行をしたり、長野に古民家を借り、週末に通いながら自分たちでリノベーションを行ったりしています。
その後、子どものいない人生を受け入れ、「いないからこそできること」に目を向けてきました。
夏休みや春休みなど人出が多い時期を避けて旅行をしたり、長野に古民家を借り、週末に通いながら自分たちでリノベーションを行ったりしています。
西本佳代子さん
「本当に、あとは全部楽しもうと思って、子どもがいないから自分はこんな風だと考えるんじゃなくて、子どもがいないから私はこれができる、自分のことだけじゃなくて、人のために動けることが間違いなくあるはずなので、それは自信を持ってやったほうがいいと思うんです」
「本当に、あとは全部楽しもうと思って、子どもがいないから自分はこんな風だと考えるんじゃなくて、子どもがいないから私はこれができる、自分のことだけじゃなくて、人のために動けることが間違いなくあるはずなので、それは自信を持ってやったほうがいいと思うんです」
子どものいない人生を、誰かの役に立ちながら生きようとする人もいます。
後藤さん(仮名・60歳)です。
後藤さん(仮名・60歳)です。
20代で結婚した後藤さん。30代半ばから、両親の強い要望で、不妊治療を始めました。
後藤さん(仮名)
「父親の期待がすごかったです。『将来、面倒を見てくれる人がいないのは大変なことだ、お墓を守る人がいないのは大変なことだ』と言われました」
「父親の期待がすごかったです。『将来、面倒を見てくれる人がいないのは大変なことだ、お墓を守る人がいないのは大変なことだ』と言われました」
不妊治療のストレスから38歳で治療を中断し、両親とは一時的に距離をとることにしました。
しかし、45歳を過ぎたころ、両親も後藤さんの選択を受け入れ、関係も修復していきました。
しかし、45歳を過ぎたころ、両親も後藤さんの選択を受け入れ、関係も修復していきました。
後藤さん(仮名)
「けんかする必要はないし、いかにその場から立ち去るかを考えた方がいいと思います。自分の中で納得いく答えを見つけたら、もうその通りにやっていい」
「けんかする必要はないし、いかにその場から立ち去るかを考えた方がいいと思います。自分の中で納得いく答えを見つけたら、もうその通りにやっていい」
いま、後藤さんが取り組んでいるのは、子どものいない夫婦に向けての情報発信。
内容は、夫婦2人で生きていく上での生活費や将来の介護のことなど。
境遇が同じ人の助けになることにやりがいを感じています。
境遇が同じ人の助けになることにやりがいを感じています。
後藤さん(仮名)
「老後のために今からできること、例えば経済面ではこういうこと、健康面ではこういうことをいろいろ考えておくといいですよと、おせっかいと思われるかもしれませんが、書いています。誰かの役に立ちたいなというのをすごく感じています。今はすごく充実していて、毎日が楽しいです。自分らしく、人生一度きりですし、楽しく生きたほうがいいなと思います」
「老後のために今からできること、例えば経済面ではこういうこと、健康面ではこういうことをいろいろ考えておくといいですよと、おせっかいと思われるかもしれませんが、書いています。誰かの役に立ちたいなというのをすごく感じています。今はすごく充実していて、毎日が楽しいです。自分らしく、人生一度きりですし、楽しく生きたほうがいいなと思います」
“子どもがいない自分を責めないで”
2024年11月に公表された少子化に関する意識調査では、子どもを「持ちたくない・いなくてもよい」と答えた人はおよそ35.7%に上ります。
「子どもを望まない理由」で最も多いのが「経済的な負担が大きいから」。
次いで「自分の自由な時間や生活を優先したいから」「出産・育児に自信がないから」「子どものしつけなどストレスが増えそうだから」などが上がっています。
この結果をどう見ればよいのか、家族社会学が専門の西野理子さんに聞きました。
次いで「自分の自由な時間や生活を優先したいから」「出産・育児に自信がないから」「子どものしつけなどストレスが増えそうだから」などが上がっています。
この結果をどう見ればよいのか、家族社会学が専門の西野理子さんに聞きました。
東洋大学社会学部 西野理子教授
「ネット調査のためか、未婚者の回答がやや多い調査結果であることは前置きしておきますが、若い人にとって、子どもを持ちたいという気持ちが“当たり前ではなくなっている”ことの現れだと思います。『経済的な負担が大きい』というのは2000年ころからずっと言われています。就職氷河期もあり、日本の経済が停滞していて、明るい未来が見えないなかで、子どもが持てないのが実情です。また、子育てはすべて親の責任という自己責任論があまりに強いので、子どもを育て上げる自信が持てない人が多いと感じます。そのような中で月岡さんのように声を上げることは非常に重要で、社会を動かす力になっていくのではないかと期待されます」
「ネット調査のためか、未婚者の回答がやや多い調査結果であることは前置きしておきますが、若い人にとって、子どもを持ちたいという気持ちが“当たり前ではなくなっている”ことの現れだと思います。『経済的な負担が大きい』というのは2000年ころからずっと言われています。就職氷河期もあり、日本の経済が停滞していて、明るい未来が見えないなかで、子どもが持てないのが実情です。また、子育てはすべて親の責任という自己責任論があまりに強いので、子どもを育て上げる自信が持てない人が多いと感じます。そのような中で月岡さんのように声を上げることは非常に重要で、社会を動かす力になっていくのではないかと期待されます」
子どもを望まないという意識だけでなく、実際に子どものいない人の割合も増えています。
2024年6月に公表されたOECDのデータによると、「生涯子どもがいない女性の割合」は、日本が加盟する38か国のなかで最も高く、28.3%に上っています。
2024年6月に公表されたOECDのデータによると、「生涯子どもがいない女性の割合」は、日本が加盟する38か国のなかで最も高く、28.3%に上っています。
この調査は男性のデータはないのですが、割合は女性より大きいと言われています。
この割合の推移を見ると、それまでは11%ほどだったのが、この20年で急増していることがわかります。
この割合の推移を見ると、それまでは11%ほどだったのが、この20年で急増していることがわかります。
東洋大学社会学部 西野理子教授
「子どもがいない人の中には、『少子化の原因だと責められている』と感じてしまう人もいるかもしれませんが、そう思う必要はありません。家族のかたちは、時代や社会が変われば変化するものです。現代は、子どもは自然に任せるものではなく、選択する対象になっています。結婚をしない人や子どもがいない人がこれだけいるのですから、現実の社会もそれに合わせて変わっていく必要があります」
「子どもがいない人の中には、『少子化の原因だと責められている』と感じてしまう人もいるかもしれませんが、そう思う必要はありません。家族のかたちは、時代や社会が変われば変化するものです。現代は、子どもは自然に任せるものではなく、選択する対象になっています。結婚をしない人や子どもがいない人がこれだけいるのですから、現実の社会もそれに合わせて変わっていく必要があります」
取材後記
月岡さんと同い年の私にとって、「子どものいる人生が当たり前」という考えはありませんでした。
しかし、取材を始めると、40代以上の世代や地方に長く住んでいた方からは、「親族や周囲のプレッシャーがまだある」「肩身が狭い」などの声が多く上がりました。なかでも、周りに自分と同じ立場の人が少ないという人ほど、自分の気持ちを周囲に打ち明けられず、苦しんでいると感じました。
また、出産する性である女性のほうが、男性よりも“子ども”の有無について、責任を感じやすい傾向にあることも分かりました(男性は“結婚”に責任を感じやすい傾向)。
時代は変わり続けているなかで、ようやく上げられるようになった声や、押し殺されてきた声があることを知っていただきたいとともに、一人ひとりの生き方が尊重される社会になってほしいと思います。
(5月2日「首都圏情報ネタドリ!」で放送)
しかし、取材を始めると、40代以上の世代や地方に長く住んでいた方からは、「親族や周囲のプレッシャーがまだある」「肩身が狭い」などの声が多く上がりました。なかでも、周りに自分と同じ立場の人が少ないという人ほど、自分の気持ちを周囲に打ち明けられず、苦しんでいると感じました。
また、出産する性である女性のほうが、男性よりも“子ども”の有無について、責任を感じやすい傾向にあることも分かりました(男性は“結婚”に責任を感じやすい傾向)。
時代は変わり続けているなかで、ようやく上げられるようになった声や、押し殺されてきた声があることを知っていただきたいとともに、一人ひとりの生き方が尊重される社会になってほしいと思います。
(5月2日「首都圏情報ネタドリ!」で放送)
首都圏局ディレクター
立花江里香
2016年入局
名古屋局を経て2020年から首都圏局
社会保障や経済などをテーマに番組を制作
立花江里香
2016年入局
名古屋局を経て2020年から首都圏局
社会保障や経済などをテーマに番組を制作