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自分の器の育て方―ゲームプランナーの成長を邪魔するもの

新人さんようこそ

 4月である。多くのゲーム会社にも新人が入社してきたことだろう。
 その中で、ゲームプランナー(以下プランナー)職種は、(「基本的に」というエクスキューズはつけるが)主だって要求されるスキルが、プログラマやデザイナー等の様な、成果物がわかりやすく可視されたものではない。
 
 ゲーム開発において、プランナーは、課せられたタスクに対してビジョンを持ち、その実現のため現場を動かすことができなければならないが、それがいきなりできる人は少ない。思い通りにならないことだらけだろう。

 運が悪ければ、いきなり炎上プロジェクトにアサインされ、どうしていいかわからない状態に陥ってしまうかもしれない。
 だが、絶望してはいけないし、その必要もない。新人のころのムーブ(立ち回り)は後々大きく影響してくる。
 このことを頭に入れておいた方がよい。

 心の器とスキル、あるいは自意識のお話。

「恥ずかしい」

  自分語りをさせてもらおう。多少のフェイクは入れさせていただく。

 大学を卒業後、ゲーム会社への就職を志して果たせなかった僕は、就職浪人の末一年後に中小ゲーム会社のプランナーに、アルバイトとして採用された。
 プログラムができるわけでもなく、絵が描けるわけでもなく、サウンドが作れるわけでもない。そんなプランナーが現場で即戦力たり得るはずがなく、会社としては「斬新な企画」(まだPSやSSの過渡期で、前例の無い企画一つでミリオンヒットの作品が続々生まれていた時代だった)、または「実務を担える能力」を備えられるようになってくれればという期待から僕を採ってくれたはずだ。

 だが僕は、斬新な企画も出せなければ、実務を担える知識もおぼつかず、仕事で使うソフトを使いこなすというレベルにも遠かった。最初は誰でもそうかもしれない。だが僕は、その状態を数年維持してしまい、プランナーとしてのスキルはこれといって長所が見えないまま、新人としての年数を過ごしてしまったのだった。

 そして時を経て、僕はとあるRPGのプロジェクトを大炎上させてしまい(もちろんディレクターではなかったが、戦犯の一人であることは間違いない)その火消のためにアサインされた外注のディレクターとプランナーと仕事をすることで、初めて自分を「恥ずかしい」と思ったのだった。

 もう正社員となり数年が経過し、新人とは言えない立場。
 なのに、クライアントの意図を汲み取った提案一つできない。仕様書もロクに作れない。打合わせも仕切れない。ミスや穴を指摘されると逆ギレする。そのくせ業務知識だけは増えているから、ワケ知り顔で知った風な口をきいて、自分を大きく見せようとする。

 僕はずっと、能力を低くみられることを恐れ、責められるのを恐れ、前に出ることを恐れていた。

他責思考のムーブ

 実はアルバイトとして入社後、ほどなくしてアサインされた初プロジェクトも、炎上した。

 ディレクターである先輩プランナーは、常に責められていた。クライアントから責められ、社長から責められ、チームから責められ、そこへ僕にも指示を出さないといけない。やっと実装されたゲームはロクに遊べる形になっておらず、また責められる。気が付けば予定ではもうマスターアップしているはずの一年が経過していた。

 その状況と常に叱責されるディレクターを見ていた僕は、「あんな風に責められたくない」、「能力が低いと思われたくない」と考えるようになった。そしてそれを目的としたムーブをするようになってしまった。「自分が悪いんじゃない、これはディレクターのせいだ、新人の俺は悪くない」。

 つまり、他責思考である。

 こうなると成長は止まる。他人からミスを指摘されても逆ギレする。すべての指示をディレクターに要求する。「現状の問題はこれで、その原因はこれで、こうしたらゲームとして良くなるんじゃないか」という分析と提案と現場を動かす行動ではなく、「ディレクターであるあんたがすべての指示を出せ、自分は従うだけだ」という丸投げ姿勢だから成長するわけがない。

 こうして、僕は自分から提案するということをあまりやらなくなった。
 スキル以上に最もまずかったのは、自意識(自分を他人にどう見せるかという意識)のみで損得を図り、他人からの耳の痛い指摘やレビュー、アドバイスを受け入れる、「心の器」を拡大する機会をロストしたことである。

 結局、ディレクターはプロジェクト途中で退職し、別の、僕より後で入社した中途採用のプランナーがディレクターとなり、見事にゲームを立て直し、予定より八か月遅れて無事にマスターアップを迎えた。

 新ディレクターの指示の元で僕は働き、初めて仕事が面白いと思えたのだが、それはどこまでいっても新ディレクターがお膳立てしてくれた範囲内でのことである。

 勿論、初めて開発したタイトルということもあって思い入れは今でもあるのだが、この時の僕は「自分で仕事をした気になっていた」のである。自らビジョンを考えて現場を動かしたわけではなく、与えられた狭い幅の中でささやかな成果しか出していないにも拘わらず。

底辺のプランナーという自覚

 前述の、炎上したRPGプロジェクトの火消しにやってきた外部のディレクターとプランナー。
 ディレクターはもちろんだが、もう一人のプランナーの方も、自分とはレベルが段違いだった。

 作成するドキュメントや仕様書がコンパクトかつ的確。その中で自分のやりたいことをディレクターとすり合わせてスタッフに提案し、打合わせをしてタスクを産む。
 データ作成の段取りを組み、データを作成してゲームに実装する。
 イベント等も、お話を自分で考えてスクリプトを組んで実装する(これがまたセンス抜群で面白いのだ)。

 彼はディレクターに自分のやりたいことをどんどん提案しては現場を動かし、様々な意見を捌いてはカタチにして、細部は自分の手も動かしてゲームに反映していった。自分からどんどん手を挙げ、前に出ていた。

 それに対して自分はどうだろう。

 新ディレクターからの指示と助言でどうにかバトル部分の仕様策定と実装のハンドリング、関連データ作成をやり通し、プロジェクトも一年半後、やっと無事に終わった。

 だが、直後に共に仕事をして膨大な負荷をかけていたバトル担当のプログラマ―が退職、他にも諸々あって「自分は、プランナーとして底辺の極みだ」ということを痛感させられたのである。

新人時代がチャンス

 コスパといい、タイパという。ワークライフバランスも叫ばれて久しい。
 
だが、ゲーム開発という仕事の最前線で戦うのであれば、新人のころから地べたを這いずり回る覚悟でいた方が結局は楽だ。新人のころは何かやらかしても、怒られはするだろうが、周囲は「まあ新人だしね」で許容してくれるからである。

 貪欲に仕事に取り組み、恥をかき、「この野郎」という気持ちを足場にしてもがいて地道に武器を育て、自分の「心の器」を広げる訓練をしよう。

 新人時代は、その絶好のチャンスなのだ。

 いくら言葉や肩書で飾ろうと、自分を自分より大きく見せることはできない。
 コスパもタイパもワークライフバランスも、三年後から気に留めればよい。
 新人ゲームプランナーさんへ、エールをこめて。

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自分の器の育て方―ゲームプランナーの成長を邪魔するもの|泰之(やすゆき)
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