第200話 同棲したらやること

──三人の家に転移ポータルを設置し、事実上の同棲生活が始まった。それすなわち、頻繁に顔を合わせるようになるということで。


「──クリスマス企画、ですか……」

「うん。やれたら良いなぁって」


 対面での話し合いがしやすくなったのを良いことに、ただいま天目先輩と会議中。夜中でも気軽にアレコレ話し合えるのって、やっぱり便利だよね。……なお、ウタちゃんさんは自室で配信しているため、この場にはいない。


「と言っても、あんまり大掛かりなものじゃなくてね? ただ皆で集まって、ワイワイ騒ぎながら配信できたらなって」

「あ、そんな感じなんすね」

「うん。ここ最近はスタッフさんたちも忙しかったし、あんまり負担掛けるような企画はね……」

「あー……」


 それを言われたら……まあ、うん。原因の大部分は俺だし、納得するしかないわ。

 てか、この口ぶりからして企画自体が詰められてねぇな。普通、この手のイベント企画は一、二カ月ぐらい前から動き出すもんだし。それなのにいま天目先輩の口から『やりたい』って出てる時点で……。

 ただ、これに関しては仕方ない。なにせいまから一、二カ月前といったら、俺とテレビ局がバチッた挙句テロやらなんやらでエラいことになってた時期である。

 トラブル発生から事後処理まで、徹頭徹尾忙しかったあの時期に、クリスマスのイベントに向けて準備する余裕なんかあるわけもなく。


「流石にいまから準備したところで、大きい企画は間に合わないし、ようやく落ち着いてきたスタッフさんたちに無理言うのもアレでしょ? でも、やっぱりクリスマスはクリスマスだし……」

「まあ、年末の一大イベントですしねぇ。何かしらはやって起きたいですよね」

「うん。予定は訊いてみなきゃだし、全員参加は難しいかもだけど……。それでも、何人かで集まって楽しみたいなぁって」


 うん。天目先輩の意見は尤もだ。配信者として、デンジラスという企業目線で考えても、クリスマスという一大イベントに何もしないというのはナンセンス。

 この手のイベントではリスナーの財布も緩くなり、スーパーチャットやメンバーシップ登録などが飛び交う稼ぎ時。

 利益方面を抜きにしても、こうしたイベントに合わせた企画というのは、日頃から応援してくれているファンの人々に対して、感謝と成果の還元を示す晴れ舞台だ。

 にも関わらず、忙しすぎて事務所として何もしません、できませんというのは、視聴者を筆頭とした外部の人間にマイナス感情を抱かせかねない。……事情が事情なので、理由を説明すれば案外納得されそうではあるが。

 あとはアレか。一年の〆、年末間近でケチがつくのはって理由もある。特にデンジラスにとってのこの一年は、波乱万丈であると同時に飛躍の年だ。……そのどちらも俺が原因ではあるが、それはそれ。

 事実として、この一年でデンジラスのライバー全員のチャンネル登録者は爆増した。それこそ、業界トップであるライブラと張り合えるほどに。

 もちろん、その数字の大部分は張りぼて。世界が俺の動向を観測するために、同じ事務所のメンバーにもチェックを入れただけにすぎない。

 それでも確かに表向きは大きく数字が動いていることに変わりはないし、ゆっくりではあるが確実に中身もついてきている。

 なのでまあ、クリスマス関連の企画をやらないってのは、やはりよろしくないよなと。『クリスマス当日、またはイブにドンピシャでコラボ企画を』となると、全員の予定もあるし、いまからでは難しいかもだが。代わりに、近い日程で集まるぐらいはしておきたいところ。


「俺は構いませんが、何か具体的に『こう!』って案はあるんですか?」

「そこはまだかなー。あ、でもねでもね。3Dでやりたいなとは思ってるよ。ほら、クリスマス前に山主君たちの3Dお披露目でしょ? だからお披露目してから、初の3D大型コラボとか素敵じゃない?」

「あー。悪くないと思います」

「でしょ?」


 ふむ。とりあえず、大まかな方針は決定。そして3D配信となると、やっぱりある程度は動きがある内容の方が良いよな。


「無難なのはライブ、てかカラオケとかでしょうか?」

「そうだね。ただ、いまからスタジオとか予約できるかな?」

「音楽スタジオなら自前のあります」

「あ、そっか。……でも、広さとか大丈夫? 山主君のスタジオは見たことないからアレだけど、多分結構な人数になるよ? 全員参加だと仮定して、その上でスタッフさんたちとなると……」

「なら、料理スタジオの方にしましょう。あそこなら広さは十分ですし。音楽スタジオの方にカラオケ機材もあったはずですし、それを移動させればいけるかと」

「……防音とか不安じゃない?」

「あそこもスタジオですし、防音はしっかりしてますよ。そうじゃなくても、遮音の効果を持ったアイテムを使えば余裕です」

「相変わらずだけど、山主君って本当に便利キャラだよね……」


 いえいえ、それほどでも。


「じゃあ、カラオケってことで良いですか?」

「そうだね。あとは軽く摘めるものを用意して、カラオケパーティーみたいな?」

「つまりダンジョン食材の出番ですね」

「つまり、ではないかなぁ……」


 いやいやいや。せっかく料理スタジオで騒ぐんですから、ご飯もネタになるようなものじゃないと。


「でもほら、ダンジョン食材だと山主君が忙しくなっちゃうでしょ? それは駄目だよ」

「俺は別に」

「だーめ。こういうのは平等に、だよ。一人だけ負担が掛かるなら、適当にファーストフードを持ち寄った方がずっと良いもん」

「うーん……」


 俺は大して構いやしないのだけど。まあ、発案者が否と言うなら従うか。


「……あ、ならこういうのはどうです?」

「うん?」

「材料をドンっと出しといて、参加者が各々で好きに作る的な。ただ、一人最低一品はノルマみたいな」

「……カラオケは?」

「並行してやるんですよ。誰かが歌ってる時に、誰かが料理作ってる感じで」

「……情報量が凄いことにならない?」

「騒がしくて楽しそうじゃないですか」

「それは……面白そうなのは否定しない、かな?」


 好感触そうでなによりです。








ーーー

あとがき


ついに200話いったぜ。意外と続くもんですな


そんで明日はカドコミ、ニコニコ漫画でコミカライズ版の更新ですよー。


あとコミカライズ一巻、原作小説一、二巻もよろしくお願いいたします。買ってね!

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