第199話 いえぇぇぇいっ その三
大国主を降したことで手に入れたドロップアイテム……アイテム? まあ、俗に言うチート脳的なアレである。
名を【国造ノ盤】。俺が手軽に扱えるようシミュレーションソフトの形に落とし込まれた、国造りの権能である。
説明書の通りにマウスをカチカチやって、土地の開拓や建物の制作を行う。で、最後に反映ボタンをクリックすると、現実の方にもソフト内の結果が反映されるという代物である。
「例えば、ここの小物の項目にあるもの……クッションで良いか。それも選んで反映させると」
「……本当に出てきた」
「しかもこれ、有名ブランドのやつじゃないですか……? タグとかちゃんと付いてるし」
「現実に存在するアイテムは、大体全部登録されてますね」
「それつまり海賊品──」
「それ以上はいけない」
まあ、実際その通りなのでアレなのだが。というわけで、消去消去。今回は説明のために使用したが、このあたりは基本的に封印である。
ただ、ちゃんと削除やロルバ機能も搭載されているので、購入する前のテストとして活用するのは全然アリだとは思う。特に家電関係ね。
「他にもクリエイティブモードみたいなものもあるので、小物とかをオリジナルで造ることもできます」
「あ、それは便利、というか楽しそう」
「実際楽しいですよ? ゲームっぽいアイテムも製作できますし」
「たとえば?」
「アイテムボックスとか、転移ポータルとか、熱くない松明とか、いろいろ調合できる錬金釜とか」
「……それ駄目なやつでは?」
「わりと駄目なやつですね」
ダンジョンのドロップアイテム、それも下層以降で出てくるような代物を量産できるってことだし。というか、コレ間違いなくダンジョン関係のシステムのダウングレード版だし。じゃないと、国造りの権能でマジックアイテムまで製作できる理屈が分からん。
いやまあ、流石にダンジョンのドロップと同等の代物を製作できるほど無法ではないが。品質的にはツーランクぐらい落ちるし、設置した場所から移動不可とか、そもそもソフトの有効範囲が日本国内限定だったりと、いろいろな制限はある。
ただそうした制限を抜きにしても、多分コレが世に出たら世界のバランスは崩れる。……まあ、俺の存在時点で誤差と言えば誤差なのだが。
「で、話を戻しますが。こんな感じの能力なので、マンションぐらいなら建てようと思えば建てれるんですよね。土地さえ用意できれば一瞬で」
なお、既存の土地を強制的に徴収することも可能な模様。あと、人のいる状態で土地を開拓したり建造したりして、リアル石の中にいる状態にすることもできる。絶対にやらんが。
なんかこのソフトの持ち主=王みたいな扱いなんだよな。大国主の中では、俺はすでに日本の王とでも認識しているのかもしれない。それか新たに征服して自分の国造ってまえとでも思っているのか。
いや、どっちにしろやらんけど。俺はあくまで探索者でVTuberだし。基本的に庶民の暮らしを楽しんでるんで。
「……ちなみにそれ、資材とかそういうのは? 自分で用意したりするの?」
「無から生えるに決まってるじゃないですか」
「無から生やしちゃ駄目だと思います」
「質量保存の法則とかとっくに廃れてますし、今更では?」
ダンジョンが出現したせいで、あのへんの言説の大半が悲しいことになってしまってるからな。
いや、正確にはいまも使われてはいるんだっけ? ダンジョン関係のアレコレは例外とする的な感じで。特に質量保存の法則に関しては、『人類が観測できていないリソースを使用しているだけで、実際は崩れていないのではないか』みたいな言説も存在しているそうな。
なお、実際のところは知らん。前にも語ったように、この世界の『神秘』と『物理』はサイクルの関係にある。結果など、人間の足掻き次第でいかようにも変わるのだ。
どのような形で神秘を切り取り、物理に落とし込むか。それによって今後の人類の発展は決まるので、俺としては『頭の良い人がんばえー』としか言えない。
「まあ、一度に使用できるリソースは限りがあるので、無制限に建築ラッシュとかはできないんですけどね」
「あ、そうなの?」
「はい。消費したリソースは時間経過で回復させるか、現実に存在する物質を供物みたいに捧げる必要があります。そんで不思議アイテムはリソースをゴソッと使います」
「なるほど。やっぱりある程度の制限はあるんですね。ちなみに、その上限ってどれぐらいなんですか?」
「不思議アイテムとかナシなら、東京一つをギリ開拓できるぐらい?」
「東京!?」
「で、全回復するまでのクールタイムはキッカリ二十四時間です」
「短っ!?」
なお、既存の建造物を強制的に供物にすることも可能な模様。つまりリソース使用→建造物を分解のサイクルをある程度回せるという。……ぜってぇ表に出せねぇなコレ。
「まあ、本格稼働すると目立ちますし、現状だといろんな法律にも抵触するんで。チマチマ愉快な日用品を生み出すぐらいにしか使えないという」
「いや、それでも破格……」
「マンションとか一瞬でできたら、間違いなく目立ちますもんね……。それに山主さん関係だって絶対に思われますし」
「そーそー」
多分だけどいまの世の中、デカイ異常事態が起きたらまず間違いなく俺が疑われる。そんな風潮ができてきている。
正直、俺が発端となった異常事態など一つ、二つぐらいしかないんだけどね……。失礼な話である。
「そんなわけで、引越し先は地道に探すしかないんですよね……。ツテを使って多少ショートカットするのが関の山というか」
「うーん。せっかくおあつらえ向きなモノがあるのに、使えないのはもったいないよねぇ……」
「……んー?」
おん? なんかウタちゃんが首を捻ってる。どした?
「どうしました? 気になる部分でもありましたか?」
「……いや、ちょっと思ったんですけど」
「はい」
「引越しの主な目的って、わざわざ会うのにスケジュールを調整する手間をなくすため、ですよね?」
「はい」
「で、その不思議なソフトで、転移ポータルも造れるんですよね? どういう性能かまでは知りませんけど」
「……はい」
「……それで解決では?」
「はい」
よし解散。今度パソコン持ってお二人の家にお邪魔させていただきます。……それはそれとして、マンションのフロア買いか一棟買い、建造の方も進めておくか。全部玉木さんにぶん投げる形で。
ーーー
あとがき
てことで、今後は定期的に主人公の家にヒロインたちがポップするようになりました。
で、またもや宣伝と告知。
まず宣伝。コミカライズ一巻、原作小説一巻、二巻をよろしくお願いいたします。新規で買っていただけると私が喜びます。
そんで告知。
なんと本作【推しにささげるダンジョングルメ】が、次にくるライトノベル大賞2024 単行本部門で10位にランクイン致しました。
……ビックリですよね。私もさっき知りました。皆様の応援によりこうした結果を出せたこと、大変嬉しく思います。
今後ともよろしくお願いいたします。
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