第197話 いえぇぇえいっ その一

「──家を買いましょう」


 今日はオフである。密かにスケジュールを合わせていたため、ウタちゃんさんも天目先輩もオフであった。

 で、無駄に広い俺の部屋に集まって寛いでいたわけだが……何でいっつも家に集まるんだろうね? ウタちゃんさんだけの時からそうだったけど、基本的にお家デートってやつしかしないんだよな、俺ら。どっか行ったりしないのよ。

 やっぱりVTuberやってるだけあって、二人ともインドア寄りの気質なのだろうか? それとも何か狙いでもあるのか? ……まさか俺に気を遣ってる? そういうの興味なさそうだし、無理に誘わないように的な。

 いや、違う。話がズレた。若干ありえそうなので、これはこれで後で話し合うつもりではあるが、いまはこっちの議題である。


「……家?」

「はい。天目先輩とお付き合いする前から、ウタちゃんさんと話し合ってたんですよ。いちいち予定合わせて会いに来るのもアレですし、ちゃちゃっと同棲しませんかって」

「つまり、私のせいで予定がぐちゃぐちゃになった的な……?」

「いえ。そういうのはないんで、安心してください。あくまで俺から提案してた段階なんで」


 そんな気まずそうな顔しなくても大丈夫ですよ? まあ、確かに先輩とのお付き合いは予想外ではありましたけど……。それでもウタちゃんさんが認めたことですし、何かしら不都合があったとしても、それは全員で消化するべき事柄ではないかなと。


「まあ、そんなわけで。全員の時短も兼ねて家を買いましょうって話です」

「時短……」

「双葉。慣れて。山主さんはこういう人」

「まあ、こういうタイプだよね……」


 なんか謎の連帯感が発生している。俺、そんな変なこと言ったか? 同棲の理由って、究極的に言ってしまえば時短に収束すると思うんだけど。


「あ、先に言っておきますが、無理強いするつもりはありませんよ? あくまで提案です。特に天目先輩は、まだお付き合いを始めたばかりですし」

「ああ、うん。確かに急にでビックリはしてるけど……嫌、ではないよ?」

「はいはい! 私も全然嫌じゃないです! ……まだちょっぴり恥ずかしいですけど」

「左様で」

「反応が軽いなぁ……」


 良し。とりあえずオーケーは出た。それじゃあ、本格的に話を詰めていくことにしよう。


「まず、要望とかはありますか? あるならじゃんじゃん言ってください。予算とかは気にせず結構です。全部俺が出しますし」

「そこは皆で出すのが正しい気もするけど……」

「山主さんだしなぁ……」

「そこは気にしないでください。懐に余裕があるから出すってだけなんで」


 いくらになるかは知らんけど、どうせ大した金額じゃないし。むしろ有り余ってるから積極的に使わないとってレベルだし。


「で、何かありますか?」

「んー、まずは山主君の考えを聞きたいかなぁ」

「うん。やっぱり最優先はお金を出す人の意見かなって、私も思います」

「俺の考えですか……」


 んー、そう言われてもなぁ。特にこれといった要望とかはないのよね。ぶっちゃけ住めれば良い派だし。……あ、でもアレか。まずは前提条件の擦り合わせからか。


「そもそも、戸建てとマンションかで悩んでるんですよね。マンションにしても、分譲か丸々買うのかでも違ってきますし」

「後半が壮大すぎる……」

「というか、なんで同棲するのに一棟買いが出てくるんです……?」

「いろいろ考えて?」

「そのいろいろを訊いてるんですけど」

「ちょっと長くなりますよ?」


 あ、大丈夫? まあ、そりゃそうか。これから住む家についての話し合いだし。では、ゴホンと一度咳払いしまして。


「まず、俺たちは全員VTuber。つまり配信者です。今後も活動を続ける以上、その部分を考慮して選ばなきゃいけません」

「うん。そうだね」

「実際、引越しの時とかは防音とか気を遣いますね」

「はい。で、配信者として特に注意すべきは、言うまでもありませんが同棲バレです。これは女性ライバーのお二人の方が、よくご理解しているかと」

「……うん、まあね」

「恋人バレとか凄い燃えますしね……」


 本当にね。特にウタちゃんさんの台詞が重い。アイドル売りの最前線であるライブラに所属しているだけあって、いろんな感情がこもっている。

 実際、過去にはいろいろあったからなぁ……。別にライブラがどうこうってわけじゃなくて、VTuber業界全体の話として。

 男の影がチラついたことで、炎上する女性ライバーが多いこと多いこと。有名な人もそれで燃えたり、場合によっては引退する羽目になったりしているので……まあ、うん。ユニコーンって本当にクソ。

 ライバーというか、芸能人とかにも言えることだけどさ。画面の向こう側にいる人間の色恋に対して、いちいち吹き上がるんじゃねぇよって思う。スタートラインにすら立ってねぇ連中が騒ぐな。お前らにその権利はない。

 まあ、ファンの前で恋人の存在を匂わせるのは俺もどうかと思うけど。うっかりにしろ故意にしろ、その点については非難されるのも仕方ないとは考える。

 プライベートをわざわざ覗いて、アレコレ口出しされたら怒って良い。むしろ怒るべきだ。だが配信は仕事。仕事の最中にセンシティブなプライベートを覗かせるのは、プロ意識に欠けていると言われても仕方ない。

 ネットで有名なミームである、客とて着ぐるみの中には普通の人間、なんならオッサンが入ってることは承知しているのだ。ただ舞台の上で着ぐるみを脱いだらいけないのである。


「それを避けるためにも、一つ一つのメリットとデメリットを擦り合わせていきましょう。その上で、改めて個人の要望を取り入れていければなと」


 これはプロとしての義務だ。ファンの夢を壊さないためにも、俺たちはしっかりと話し合わなければならない。恋人云々の甘い話はそのあとである。








ーーー

あとがき


キリが良いので短め。なお、私には物件関係の知識がない。つまり次の話がキツイ。

特にマンション関係。分譲はまだなんとかなるけど、一棟買いがアカン。調べはしてるけど全然分からん。

東京の高級マンションとか、一棟買いってできるんかね? できるにしても費用とか、どれぐらい掛かるかとか、誰か詳しい人おりゃん?

実際にやったよっていう富豪ニキネキ、または不動産関係者。あ、フロア買いとかでも可です。




それはそうと、コミカライズの第一巻、まだ買ってないって人は買ってね。なんかいまAmazonの在庫切れてるっぽいけど! まだ他の通販サイトには残ってるから、そっちで買ってね! もちろん電子でもオーケーです!

原作小説の方もおなしゃす! コミカライズからこっちまで来てくれると本当に嬉しい!


……ところで、これもしかして好調だったりする?

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