突然“滞在資格取り消し”米にいる留学生にも不法移民対策余波

アメリカのトランプ政権は、最優先課題の1つとして位置づけている不法移民対策に力を入れていて、法的な手続きを経ずに入国してきた人たちの摘発を強化しています。
しかし、その余波は、いま、学生ビザを取得してアメリカに滞在している各国からの留学生にも及んでいます。
理由も分からずに「滞在資格が取り消された」とか「15日以内に国外に退去するように」などと記載された通知を受け取った留学生が次々と確認されています。

「まさか…」滞在資格 一時取り消しの日本人留学生は

アメリカのトランプ政権のもと、滞在資格を一時、取り消された日本人の留学生に話を聞くことができました。

西部ユタ州にある大学院の博士課程で画像認識やAI=人工知能について研究している恩田賢さん(41)です。

6年前からアメリカに留学していますが、先月上旬、突然、大学からメールを受け取りました。

そこには「国土安全保障省から滞在資格の登録が取り消されています」と記載されていました。

大学に問い合わせると、留学生を管理する政府のデータベースから恩田さんの記録が抹消され、15日以内にアメリカ国外に退去しなくてはいけない可能性があると告げられたといいます。

当時の心境について、恩田さんは「本当にただ驚いて、これからどうしようかと思いました。日本に帰らなければいけないときに備えて、荷物もまとめ始めました」と振り返ります。

そして、すぐに弁護士に相談したところ、過去に法令違反をしている場合、それを理由に滞在資格が取り消される可能性があると説明されたということです。

しかし、恩田さんは、車のスピード違反や、友人やその家族と釣りに出かけたときに、全員で釣った魚の数がうっかり制限を超えてしまっていたことしか思い当たりませんでした。

恩田さんは「もしかしたら釣りで出廷要請を受けたことが理由かなと思いました。しかし、起訴されず、まったく犯罪歴がない状態のはずなので、『まさか』と思いました」と話しています。

恩田さんの弁護士は、有罪とはなっていない、軽微な法令違反で留学生の滞在資格が取り消されたことは、これまではなかったとしています。

そのうえで「極めて異例で、これまでの大統領や政権がとった措置をはるかに超えている。留学生の登録システムにキーワードを入れて、機械的に犯罪に関係していると判断した留学生の滞在資格を取り消したのではないかとみている」と分析しています。

納得できない恩田さんは、滞在資格を取り消されたほかの留学生とともに集団訴訟を起こし、その直後、滞在資格が回復されたということです。

恩田さんは「通常の生活が戻ってきました。不安でいっぱいだったので、本当に安心しました」と話しています。

滞在資格取り消しの留学生 全米で4700人超

アメリカ移民弁護士協会によりますと、滞在資格を取り消された留学生は全米で4700人を超えていて、先月のはじめ頃から相談が寄せられるようになったということです。

首都ワシントンにある日本大使館にも複数の報告が寄せられていて、大使館では日本人の留学生に対して自分の状況を確認するよう注意を呼びかけています。

滞在資格の回復を求めて裁判所に訴えを起こすケースも相次ぐなど、留学生の間で不安や混乱が広がっています。

米当局 今後の方針は

アメリカで滞在資格を取り消された留学生による訴訟が相次ぐなか、国土安全保障省の傘下にある移民関税執行局は、新たな方針を策定するまでは取り消した滞在資格を元に戻すと表明しました。

「新たな方針」がどのようなものになるのかは、不透明な状況です。

ただ、先月29日、同じく国土安全保障省の傘下にある移民局はSNSに「アメリカを訪れている者はその立場を自覚し、適切な行動をとる必要がある。移民局は、オンライン上でアメリカやアメリカの生活様式に脅威を及ぼす情報を監視している」と投稿しています。

留学生のSNS上での発信の内容を理由にビザや滞在資格が取り消されるのではないかとも受け止められる投稿に、波紋が広がっています。

20人以上の留学生の訴訟を担当する弁護士は「政権側は今後も国外退去させたい学生については滞在資格を取り消す可能性があると述べていて気がかりだ。裁判所の判事たちが、いまは私たちの最後のとりでだ」と懸念を強めています。

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