第185話 ブチギレ結納配信。お祝いに神様のこと〇ってみた その二

「生大刀」

「天叢雲!!」


──衝突は一瞬。されど被害は甚大。互いに振り抜いた神刀が交差した瞬間、コンクリートが捲り上がり、周囲の建造物に罅が奔る。


「なかなかだな」

「そうか、よ!!」

「だが、些か力任せがすぎる」

「……チッ!」


 鍔迫り合いの最中、フッと手応えがなくなる。あまりに自然に行われた脱力! そして僅かに身体が泳いだ隙に差し込まれる、稲妻のような一刺し!!

 咄嗟に重心をズラしてスウェー。そのまま蜻蛉を切って後退しつつ、斬撃を飛ばして牽制。……いや、不要か。追撃の気配がない。


「ククッ。いまのを避けるか。知ってはいたが、獣のような身のこなしよな」

「うっせぇ」


 クソがよ。余裕そうにしやがって。これだから神って奴は出鱈目だ。たった一合。たった一瞬。剣を打ち合わせただけで分かる。──圧倒的な格上。


「そう不貞腐れるな。むしろ褒めている。争いの少ないいまの時代には、あまりに不釣り合いな戦場刀法。よくぞここまで練り上げたものよ」

「別に練り上げたつもりなんかないが? ただ戦闘中に具合の良いように振ってたら、こんな風になってただけだ」

「謙遜だな。我から見ても、賞賛されて然るべき腕前をしておるよ。少しは周りの意見に耳を傾けるべきだぞ?」


:いやおかしくない!?

:なにいまの!?

:余波だけで丁巨己テレビ半壊してんだが!?

:一回の剣戟で発生して良い被害じゃないが!?

:これホンマに現実か……?

:マジで映画だろこんなの……

:神様もヤバくない……? いまの突きで遠くのビルが折れたんだけど

:こんなの怪獣大決戦やん……

:一瞬で怪獣映画レベルの被害出てて草も生えない

:当たり前のように斬撃を飛ばすな

:これマジで丁巨己テレビ国賊やろ……

:こっわ


 ハッ。この程度、大したことじゃねぇだろうに。あっちもこっちも持ち上げすぎだ。

 まだまだウォーミングアップ。小手調べにすらなってねぇんだ。これでアレコレ言われたところで、はしゃぐなとしか言いようがねぇ。


「てか、本当に見えてんのなコレ。カメラに俺の身体能力を反映させたとは言ってたが、配信だとどう見えてんだ?」

「文字通り、愛し子の見えている景色、聞こえている音がそのまま画面に映っておるよ。ただ主観も反映されてるがな」

「というと?」

「客観的な速度では、我らの動きは人の子らには捉えられん。故に愛し子の主観で処理したものを、映像として届けるようになっておる」

「あー、俺の動体視力とかに合わせてるのね」


 なるほど、道理でリスナーたちも反応できるわけだ。俺の集中力に合わせて、映像が等速だったりスーパースローみたいになってるってことか。

 まさに映画。いや、この場合は一人称のFPSゲーか? ……ただコレ、ライブ配信中だといろいろ齟齬が出そうなもんだがな。つまるところ、現実時間と俺の体感時間を切り替えてるわけだろ?

 まあ、どうせ神々特有のデタラメパワーでなんとかしてるんだろうが。それはそれとして、気になるから後で配信の方を見返しとくか。


「故に、遠慮はいらんぞ? 愛し子の見ている景色を、存分に見せつけてやるが良い」

「別に遠慮はしてねぇよ……。たんにアンタが強いだけだろ。国造りの神の癖に、戦神もかくやって戦いぶりじゃねぇか」

「当然だ。国造りとは、まずその地を平定してから始めるものよ。ならば、相応の武威がなければ話にならぬであろう?」

「そりゃそうだ」


 言われて思い出したが、大国主にはそういう逸話があったな。反抗する神々を倒して、国造りを行ったと。つまりコイツは、武神や戦神の類いでもあると。

 道理で強いわけだ。こと技術に限って言えば、俺なんかとは比べものにならない差があるな。……まあ、分霊だろうが神は神。スペックもスキルも、俺より遥かに上なのはむしろ当然。

 いままでだってそうだった。神に挑む時は、俺は常にチャレンジャー。その上で、すべての戦いに勝利してきた。

 実力差なんて関係ねぇ。必要なのは闘志と勝負勘。棺桶に片足を突っ込んで、そのままぶち抜くという絶対の意思……!!


「ふふっ。戦意が漲っておる。……くるか?」

「──フッ!!」

「見事な踏み込みだ! その思い切りの良さは好ましいぞ!!」

「うるせぇ!!」


 大国主は遥かに格上。故に、チマチマ斬撃なんか飛ばしたところで無意味。アイツにとってそよ風程度。涼しい顔で流される。

 だから近づく。刃でもって直接ぶった斬る。そのためには、臆してなんかいられない。

 ひとまず斬れ。とにかく斬れ。斬れ、斬れ、斬れ、斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ!!


「うるぅらぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「ハハハッ。実に我ら好みの益荒男ぶりよ!!」


:ひぇ……

:うわっ、凄っ……

:これホンマに現実か!?

:ジェンガみたいな勢いでビルが倒れてってんだが!?

:やべぇってこれやべぇって!!

:大惨事やん……

:山主さんこんな声出すんか

:こっわ

:人の形をした災害やろこんなの

:あのいつも飄々としてた山主が……

:どっちもバケモン

:あっちゃ駄目だろこんなの……


 神刀が振るわれるたびに、余波によって世界が軋む。剣速によって大気が畝り、竜巻となって瓦礫を宙へと巻き上げる。弾ける刃が火花を起こし、塊となって業火に至る。

 時間にして十秒足らず。されど交えた刃の数は果てしなく。そしてその一撃一撃が、大地を絶つだけの力が込められた剛剣なれば!


「良い。実に良い! 剣士と呼ぶにはあまりに猛々しい、まさに闘争のためだけに磨き上げられた戦士の剣だ! やはり愛し子の中には獣がおるな!」

「行儀がなってなくて悪かったな!」

「ハッ! 戦場に行儀もなにもあるまいよ!」

「違いねぇ!」


 再び激突。だが、それだけではさっきまでの焼き直し。故に一計。生大刀と天叢雲がぶつかるその瞬間、手のひらを開いて柄を離す!


「っ、得物を捨てるか!?」

「獣なんでな!」

「チィッ!?」


 ここで初めて大国主が眉を顰める。嫌になるぐらい斬りあってたのに、いきなり俺の剣がすっぽ抜けたんだから当然だ。

 腕を伝うはずの衝撃がこなかったのだから、そりゃ違和感を覚えるだろうさ。ましてや、俺が放ってきたすべてが打ち合い上等の剛剣なんだからな!

 もちろん、動きがブレたのは一瞬にも満たない刹那の間。だが、このレベルの戦いではまあまあデカイ!!


「組打ちか!」

「その通り!」


 剣を捨てて狙うはグラップル! 腕を掴んで重心を崩し、そのまま一気に首を獲りにいく!!


「させぬ!」

「むっ!?」

「侮るなよ! 組打ちは戦場の作法ぞ!?」


 一瞬で組打ちを外されたか! 仕掛けにいった腕も逆に絡め取られた! そんで流れるようにこっちの関節を決めてきやがった!!

 さすがは数多の神を降した征服神! 戦場で鳴らした武威に偽りなしか!!


「侮ってんのはテメェだろうが!!」

「なんと!?」


 だが死線を越えてきた数なら、こっちだって負けてねぇ!!

 関節を決めたところでどうした!? そのまま投げれると思ってんのか!? その程度で怯むものかよ!!

 地面を砕く勢いで軸足に力を込める。関節が砕けるのも構わず重心を維持。ブチブチと筋繊維の千切れる音が響くが関係ねぇな!

 片腕は完全に壊された。もはやかろうじて皮で繋がっているレベルだが、それが一体なんだってんだ!

 おかげでデケェ隙ができたぞ! 防御の姿勢に入っているが、それだと一手間に合わねぇよ! そのガラ空きの胴体、ぶち抜かせてもらうぞ!!


「ウォラァァ!!」

「グッ!?」


 ナイスシュート!! ホームランばりにカッ飛んだな!? 競技が違う? だからどうした!!

 重要なのは結果だろうが! 大国主が吹っ飛んで、かろうじて一部が残っていた、丁巨己テレビの残骸に突っ込んだ! それがすべてさ!!


「ふぅぅ。上から目線で見下してるからそうなんだよ。ザマァみさらせ」


:いや山主さん腕が!?

:右腕なくなってますけど!?

:痛い痛い痛い痛い!!

:めっちゃ血出てますけどぉ!?

:いいから早く治して!!

:その出血はやべぇって!

:これBANされない……?

:痛くないのそれ!?

:死ぬぞ山主!

:早くポーション使えって!

:中指立ててる場合じゃねぇから!


 あん? うるさいなぁ。自分から壊しにいったんだし、いまさら片腕いかれたぐらいでなんだってんだ。大してダメージにもなってねぇよ。……まあ、流血でBANも嫌だし治すけどさ。

 にしても、あの野郎も手癖が悪い。蹴りが入る直前、咄嗟に壊れた腕を掴みやがった。ただでさえ、皮でぶら下がってるだけの有様だったんだ。その状態で、掴んだ大国主が吹っ飛べばどうなるかって話である。

 おかげで、完全に右腕がもってかれた。ポーション使えば治るし、てかもう治したし。戦闘に支障が出るわけではないが……。


「第一ラウンドは痛み分けかねぇ……」


 ちくせう。蹴り飛ばして勝ち誇ってやるつもりだったのによ。このザマだとそうもいかねぇじゃねぇか。

 これだから神ってのは嫌なんだ。一筋縄じゃいきやしねぇ。もうちょいこっちの思惑通りに動いてくれても良いだろうに。









ーーー

あとがき


予定では神様バトルは上・中・下の三分構造。なお予定は未定でもあります。


ちなみに大国主と主人公の戦力差ですが


・身体能力 大体同じか少し上

・戦闘技術 圧倒的に上


となっております。基本的に主人公より神様の方が強い。

まあ主人公、神様視点だと生まれたばかりの赤ちゃんですし。存在の格としても、生きてた時間としても。

分霊としてスペック落とそうが、そもそも個としての『厚み』が違うのでさもありなんというやつです。

だから試練は試練足りえるし、それをクリアしてなお定期的に挑んでくる主人公は神様的に好印象なんですね。


アレです。新卒に「将来的には、簿記三級取ってくれると助かるかなぁ」って伝えたら、プライベートで二級とか一級とか取ってこようとしてくる新人と同じです。

そんでしっかり取ってくるし、それどころか公認会計士試験や税理士試験まで追加で受けてこようとしてくる奴。しかもまた合格してくる。

それを上司がどう見るかって話ですよ。


※なお、この例えはちょくちょく修正しています。

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