小生がアメリカの駐在したのは1990年代前半なのですが、赴任時の日本はバブルの絶頂期でした。バブルが何故起こったかの解説は専門家に任せておくとして、じゃあ、当時の日本の製造業がマネーゲームに興じてものづくりをおろそかにしていたか、というとそんなことは決してなく、むしろ今よりも、Made in Japanが世界をリードしていたように思います。米国と日本の製造業の実力差がピークだったのは、あのころではないかなあ、と思うのです。
米国で最初に乗った車はクライスラー、しかも提携先の社長に「俺は飽きたからお前が乗れ」とあてがわれた「ニューヨーカー」という高級車だったのですが、見た目はともかく、細やかなつくり、という点では、圧倒的に日本車の勝ちでした。例えば方向指示器のレバーを操作するとき、日本で乗っていたホンダは、カシャンと、心地よい音と手応えがあるのですが、グライスラーは、ムニュっという気色の悪い手応えなのです。リトラクタブルライトも、ホンダは「ウィーン」と実に心地よい音で開くのですが、クライスラーは「バッタン」。神は細部に宿る、といいますが、シズル感、みたいなのがあきれるほど違うのです。優秀な人材はガッポリ稼げるウォールストリートにいっちゃって、製造業に人材が来なくなっちゃったせいだったのですかねえ。
今回はそんな、米国の製造業が弱り切っていた時代の、バックマン0-6-0スイッチャーが元ネタです。当時、トイザラスで15ドルで売られていたこの模型、あきれるくらい走りがわるくて、ウィーンという何とも心地悪い音を出しながら、ぎくしゃくと走ります。構造が特別なために調整はまず不可能で、当時の小生は「これをお父さんに買ってもらったアメリカの子供達が、ワクワクしながら線路に乗せて、パックのレバーをひねったら、本当にがっかりするだろうなあ」と本気で心配したのでした。
ちなみに、そのころ登場した「ケイトー」(当時のアメリカ人はカトーとはいってなかったです)のHOロコは、その驚異的な走行性能で一躍有名になりました。当時、MRの新製品テストで、「ロコは、ミラクルのように走った」とあるのを読んで、実に誇らしい気分になったものです。
万事がそういう感じだったので、小生、当時は本気で、日本がアメリカを征服しちゃう、と思っていたのでした。だからその後、米国経済がこんなふうに大伸長して、メーカーが、(工場は海外にあるとしても)きっちりしたものづくりをするようになって、模型の世界でも、米国メーカーが精密なディーティルの、音もなく走る模型をつくるようになるとは、夢にも思いませんでした。
すみません、無駄話が長くなりました(とはいえ、無駄話を削っていたら、このブログには何も残らないのですが)。今回ご紹介するロコのプロトタイプは、ご存知のUSRAスイッチャーです。USRAが何か、なんてことはこれを読んでいる貴兄はとっくにご存知でしょうし、詳しい解説がネット上にいくらでもあるので、小生ごときの出る幕ではありません。ただし、声を大にして申し上げたいのは、「USRAの機関車はえらくカッコいい」ということです。機能を突き詰めたものは何だってカッコいい。USRAのロコは、どれも無駄のない、均整のとれたシェイプで、当時の英知が結集されたものなのでしょうね。
工作は、いつもの通り、プラ表現のディ-ティルを削り落して、ロストパーツをいくつか奢ります。ボイラーバンドも、イマイチ掘りの浅いプラを削り落として、タミヤのプラペーパーを巻いています。パイピングには0.3ミリ、0.4ミリ、0.5ミリの真鍮線を使い分けます。斜め上から見下ろした写真の、コンプレッサーとリフティング・インジェクターあたりの精密感は、バックマンのプラロコをいじったにしては、なかなかのものだと思いませんか? もっとも、バックマンのプラロコに、ここまでやるモノ好きはあまりいないでしょうが。
なお、完成写真でバレバレのとおり、この機関車にはバルブギアがありません。開き直ると、そもそも小生に、バルブキアを自作できるくらいの実力があったならば、しょぼいプラのロコなんていじらずに、真鍮スクラッチで立派な模型をバンバン量産していたことでしょう。
なお、どこかのトレインショーで、ジャンクのテンダーをもう1台、タダ当然で入手したので、テンダーはUPとSPの2種類をつくりました。ロコの機番は4601になっていますが、今回恐る恐るネットを調べたら、一応UPのUSRAスイッチャーは、この機番だったようです。ネットがまだ普及してない時代だったので、つくった当時の小生に、拍手っ。そういえば、カルムバックが出していた、鉄道各社別の蒸気機関車ガイドみたいな本を参考にしたような気がします。なお、今回わかったのですが、あきれたことに、SPはこの機関車を購入していません。よって、SPロゴのテンターはナンセンス、ということになります。
このロコ、足回りには全く手をつけていないので、走りはこの上なくお粗末なままです。将来、万一レイアウトが開通しても、役割りはヤードの飾りになっちゃいますね。なお、オリジナルの写真は、ネットからお借りしました。
 
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