ウェルネスとーく
医療・健康・介護のコラム
[南果歩さん](上)読み聞かせの活動は息子との思い出が原点…コロナ禍に目覚めた「原稿用紙」
絵のない「絵本」
「一生ぶんのだっこ」(講談社 税込み1650円)
――ご自身の絵本は、どういうきっかけで作られたのですか。
もう息子に読み聞かせをしなくていい年齢になったなって、ちょっと手が離れた時に、たぶん、小学校の高学年とか、そのくらいだったと思うのですけど、思いついた物語を原稿用紙に書いていました。
どうして書いたんでしょうね。その時の衝動はちょっと記憶にないんですけれど、「一生ぶんのだっこ」っていうフレーズが浮かびましたね。「子どもが大きくなるまでに、その成長過程で何を残してあげられるのか」っていうことを子育て中に考えていました。その中で、やっぱり自分を、ギュッと抱きしめてもらった記憶や、自分の支えになるような言葉――。そういうものは大人になっても、必要なんだろうなと私は思っていたので、何かそういうものを書き記していたように思います。
――「一生ぶんのだっこ」が出版された経緯を教えてください。
読み聞かせを続ける中でコロナ禍になり、活動はリモートで実施することになりました。不特定多数の方が聞けるようにはなったのですが、本を読む際に出版社から使用許可をいただくことが必要で、これがなかなか難しい状況でした。
その時、引き出しの中に眠っていた原稿用紙のことを思い出しました。絵はなかったので、「絵のない絵本です」と言って朗読することにしたんです。ソーシャルディスタンスが日常の中に入り込んできた、「この時を待っていたのかな」と思いました。
「戻る場所」があれば冒険できる
――どんな反応がありましたか。
その時は、国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)の小児病棟の皆さんに向けての読み聞かせでしたが、病院の子どもたち以外にも聞いてもらえるようにしました。私は病院には入れないので、その近くから配信しました。様々な病気を抱えている子どもたちですから、直接(対面)だったらできなかったかもしれない。そういう意味ではリモートという形態が大いに生かされたなと思いました。
なかなか、外で遊んだりできない子どもたちにとっては、とても楽しい時間だったようでした。付き添っている親御さんには、現実を忘れる時間になったとおっしゃっていただきました。
――朗読を聞いて涙を流された方もいらしたそうですね。作品では、母親に抱っこを迫る子の姿が描かれています。母親が「基地」のような存在として描かれているという印象を抱きました。
本当にそうだと思います。帰る場所があると冒険ができる。つらいことがあっても「戻る場所」があれば、そこで温かい気持ちを取り戻せる。子どもでも大人でもそうだと思うのですが、拠点があれば、次はもっと先まで冒険ができる。その繰り返しじゃないかと思います。絵本を読んであげる大人も癒やしたいなという気持ちがすごくあったので、最後は、子どもの方から抱っこをするようにして、締めくくりました。
――イラストはダンクウェルさんというアーティストがお描きになっています。
ダンクウェルさんの絵は、アクティブで躍動的なので、私からお願いしました。やりとりをする中で、主人公のくま君の表情は目だけで訴えたいと考え、口元は描かないようにしてもらいました。
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