英語圏のゲーマーは、どうやって日本のインディーゲームを見つけて遊ぶのか?
英語圏のゲーマーが、どのようにして日本のゲームを手に取るのか。おそらく、多くの日本の開発者は知らないのではないでしょうか。
そこで、今回はNeon Noroshiの英語圏アシスタントEggに、一般的なゲーマーが日本のインディーゲームを探す方法を説明してもらいました。
結構長いですが、ぜひご覧ください。
この記事を見ているということは、あなたはインディーゲーム好きなんですね。うーん、素晴らしい!
やっぱり、インディーゲームは成長中の業界だし、私が好きな日本のインディーゲームなんかアートのテイストが……と、もっと話したいところですが記事の要点に行きたいと思います。
これを読んでいるのは、おそらく開発者か、インディーゲームプレイヤーだと思います。この2種類の方がこの記事から得られるものは以下の通りです。
ゲーム開発者
日本語、もしくは英語以外の言語ネイティブでインディーゲームを作っている開発者の方へ。この記事は、英語圏のプレイヤーがインターネットを通じて、あなたのゲームを見つけるまでの道のり示すことを目的としています。この記事は日本のゲームに焦点を当てていますが、知識は他の言語にも応用できる部分が多いでしょう。
インディーゲームプレイヤー
ニッチなインディーゲームを遊ぶのが大好きなプレイヤーの皆さん、筆者での私もそうです!
RPGツクールのゲームが大好きで仕方ありません。この記事はあなたが海外の素晴らしいインディーゲームを探す手掛かりになればいいな、と思っています。
それでは、英語圏のゲーマーたちが日本のインディーゲームを発見するさまざまな方法を紹介します。このリストは最もメジャーで人口が多い層から、ニッチなものまで順番に並べられています。
各セクションのパーセンテージは、大まかな見積もりとして、英語圏の何パーセントがこのカテゴリーに属しているかを示しています。
1.メインストリームのプレイヤー(80%)
いわゆる一般の人々がゲームを探す方法です。なかには通常インディーゲームを遊ばない人々も含まれているでしょう。
大手ニュースサイト
IGNやKotakuなど、超大手のニュースサイトから情報を入手します。大手ニュースサイトのレビューを読む流れは衰退しつつありますが、ゲームの購入を考えるとき、いまだに多くの人が大手ニュースサイトをフォローしています。
残念ながら、大手ニュースサイトが英語に翻訳されていないインディーゲームをレビューすることは非常に稀です。例えば、英語のIGNは『軌跡』シリーズや『ファイナルファンタジー』のような日本の有名ゲームばかりを扱い、日本のインディーゲームはあまりレビューしません。
ほとんどの場合、大手ニュースサイトがレビューするインディーゲームは英語対応で、すでに人気を獲得しているゲームに限られます。
そのため、あなたのゲームが大手ニュースサイトに載るためは、大きな資本力があるか、以前に大きな成功を収めたゲームに関わっているなどがなければ、現実的ではありません。
2.カジュアルプレイヤー(19%)
定期的にゲームを遊びますが、新しいゲームを積極的に探すほど真剣ではない人々の探し方です。
大手配信者から
MarkiplierやCDawgVAのような多くの視聴者がいる配信者のことです。
配信者には多くのタイプがあります。まず、インターネットで話題となっているゲームを取り上げるのが好きな人。最近の大きな例としては、2024年に起きたスイカゲームのトレンドがあります。
単に面白いからゲームを取り上げるのが好きな配信者もいます。例えば、これはMarkiplierの『Pico Park 2』に関するビデオです。トレンドを追いかけているとも言えますが、私はこの動画は単に楽しむために作られたと思います。
大手配信者は、多くの人々にリーチし、それによってトレンドが始まったり、より大きな流れになったりする可能性があります。
いずれにせよ、カジュアルプレイヤーの多くはトレンドになったゲームを手に取ります。これは主に、大手の配信者が遊んでいることが品質の証と見なされるからです。
「あの人が楽しく遊んでいるゲームは良いに違いない」
というわけですね。トレンドを狙って作ることは非常に難しく、究極的にはトレンドになることを戦略の柱にするべきではありません。しかし、カジュアルプレイヤーに届けたいなら、いくつかのポイントがあります。
配信者に訴えるゲームを製作する。例えば、配信者を思わず怒らせるレイジベイトゲームなど、配信者から面白い反応を引き出すゲームです。
動画を見るだけでゲームプレイを理解できる、非常にシンプルに見えるゲームを作ること。BalatroとNubby's Number Factoryはこの哲学の西洋の例です。
あなたのゲームがこれらのカテゴリーのどちらにも合わない場合は、無理に当てはめる必要はありません。それはあなたのゲームがそもそもこの層に被らない可能性が高いことを意味するだけです。単に誰もが満足できるゲームなんてありませんから、とくに悪いことではありません。
3.好奇心旺盛なプレイヤー(0.8%)
趣味としてゲームを好み、馴染みのある領域内で新しいゲームや新しい体験を求める人々はメインストリーム、カジュアルとは異なる方法でゲームを探しています。彼らはあまり多くのゲームを調べませんが、ストライクゾーンに入っていれば新しいゲームに興味を持ちます。
ニッチな配信者
これらはManlyBadassHeroやTenma、多くのVTuberが当てはまります。ニッチな配信者は、前セクションの大手配信者のように広範な注目を集めていません。代わりに、彼らの主な焦点はジャンルや特定のスタイルのゲームに専念し、それらを楽しむことです。ManlyBadassHeroの場合、彼は主にインディーホラーゲームをプレイしますが、英語のみです。これは彼がNARAKU(煉獄)をカバーしたビデオです。
ニッチな配信者は、大手配信者より視聴者との関係が良好であることが多いです。全体的に、ニッチな配信者によって取り上げられたゲームは、ビデオの視聴回数に比べて遊ばれる割合が多めになります。また、ニッチな配信者は個人勢が多いので、協力して話を進めやすいでしょう。
Steam Discovery
多くのゲーマーは新しいゲームをSteamで発見します。Steamの以下のような機能が使われます。
ライブラリ(持っているゲーム)に基づいてDiscovery Queueでゲームが推薦されます。
すでに好きなゲームに似たゲームを探すため、「More Like This」セクションを使用します。
さらに、特定ジャンルのゲームを見つけるためストアタグでSteamを検索することもあります。
最後に、Steamストアのメインページの「New & Trending」などのタブからとれたての新作を探すこともあります。
当然ながら、Steamでゲームをリリースしなければこれらの機能は使えません。が、ゲームを出しさえすれば自動的に組み込まれるので、比較的使いやすいと言えるでしょう。
ただ、この方法はストアページの品質に大きく依存している欠点があります。プレイヤーはSteamページだけを見てゲームを探すので、外部ソースからのおすすめがありません。ストアページが十分に魅力的でなければ、ここに載っても効果が低いでしょう。
ゲームを探したいプレイヤーのため、好きなゲームを見つけやすくするテクニックも書いておきます。嫌いなゲームに「無視」を選ぶと、効果的にSteamストアの表示からそのジャンルのゲームを消し去れます。これを何度も利用すると、Steamは似たようなゲームをあなたにお勧めしなくなります。
ゲームアグリゲーター
ゲームアグリゲーターは、正確にはコンテンツを作成しない特別な種類のコンテンツクリエイターです。
あまり個性を発揮せずゲームのリリースについて投稿する配信者もこれにあたります。彼らは多くの新しいゲームの情報をまとめています。
例えば著名なゲームアグリゲーターAlpha Beta Gamerは、単に新しくて面白そうなゲームを紹介し、視聴者に判断は任せます。これは彼らが最近カバーしたBroken Lore: Don't Watchのビデオです。
ゲームアグリゲーターは「中立的」に感じられるため、一般的に支持を得ていることが多いです。単に良いゲームを探しているゲーマーに、ゲームアグリゲーターは面倒なしに良いゲームを見せてくれます。
ほとんどの場合、ゲームアグリゲーターには最大級のリーチ力はありません(主に彼らは本質的にあまり魅力がないため)。しかし、彼らのオーディエンスはアグリゲーターの好きなジャンルに共感していることが多く、効果的にターゲットにリーチできます。
例えば、「癒しゲームチャンネル」のようなアグリゲーター(架空の存在です)なら、癒し系ゲームをちょっと紹介するだけで大きな効果を得られるかもしれないですね。
(ちなみに、私たちNeon Noroshiもゲームアグリゲーションを行っています。そう、Neon NoroshiのTwitterアカウントです!)
大規模コミュニティ
特定のジャンルについて議論するコミュニティも、このレベルのプレイヤーにとっては情報源です。例えば、ビジュアルノベルについてプレイヤーが議論するRedditコミュニティr/visualnovels(※R18コンテンツを含む可能性があります)などです。
これらのコミュニティは、あなたが特定のジャンルでゲームを作っていることをプレイヤーに知らせるのに良い場所です。しかし、コミュニティに入ることは時に危険を伴います。あなたはそのコミュニティの歴史と文化に不慣れだと、告知の仕方を間違えばコミュニティに混乱をもたらしたり、コミュニティの怒りを招くかもしれないからです。
ここはゲームの議論が多くの介入なしに有機的に繁栄する場所です。プレイヤーなら、あなたが好きなジャンルのコミュニティを見つけることで、多くの素晴らしいゲームを見つけられるでしょう。
セクション4:探検家(0.2%)
積極的に日本のインディーゲームを探し求める探検家はどのようにゲームを探しているのでしょうか。理由はともあれ、彼らは何らかの形で日本文化を愛し、意図的に日本のゲームを探します。
これらのプレイヤーは、日本語を理解していなくても、日本語のゲームをプレイするほどの意欲があります。
DLSite
あなたが日本人ならこのウェブサイトに詳しいはずです。もしそうでないか、人生をリフレッシュする栄養を探しているなら、DLSite(警告:R18コンテンツを含む可能性があります)は見るべき日本のゲーム、漫画、ASMRの配信ストアです。
Steamに少し似ていますが、完全に日本文化圏のコンテンツだらけです。もし、日本的なゲームが好きならDLSiteは訪れるべきです。
日本の方の中には、DLSiteを頻繁に訪れる英語話者がいることに驚くかもしれません。しかし、日本のインディーゲームをとても愛しているプレイヤーたちはDLSiteを利用します。この手のプレイヤーはDeepLのような翻訳ツールを使用しながらでもゲームを遊ぶコアなプレイヤーたちです。
DLSiteの主な魅力は、
・間違いなく日本的なゲームが手に入る
・Steamではそれほど売れないゲームが人気を博していることがある
・Steamでは見られないジャンルのゲーム特集がある
などです。
プレイヤーがDLSiteで探しているのは、心が込められたゲームです。必ずしも洗練されている必要はなく「第一印象が良いゲーム」が優先されます(名バーなどによる第一印象は、日本語を話せない人々がゲームを判別する最初の方法だからです)。
ゲームを母国意外に届かせたいなら、以下のような箇所でデザインやアートに気を付け、普遍的な魅力を意識してください。
ロゴデザインを勉強してください。洗練されたロゴだけでゲームのロゴをクリックする人は驚くほど多くなります。ゲームのロゴとキーアートは、第一印象に大きく影響します。
人気のあるゲームのキーアートを精査してください。ロゴだけでなく、キーアートも良い第一印象を与えるのに重要です。
可能であれば英語翻訳を提供してください、機械翻訳でも構いません。ゲームプレイが楽しければ、無料であなたのゲームを校正したり翻訳を手伝ったりする人が多くいるので、連絡を取ってみてください。
もっとかわいいアニメ系女子が出てくるRPGツクールのゲームを作ってください。いや、すいません、これは単に私の趣味でした。この発言は無視していいです。
ゲーム開発者の推薦
奇妙なことに、ゲーム開発者もゲームの発見に役割を果たしています。このレベルのプレイヤーは、彼らが愛するゲームの開発者をTwitterや他のSNSでフォローします。
あなたが他のゲームをリツイートすると、英語圏でもチェックする人がいることをご存知でしたか?
結局のところ、開発者は彼ら自身が好きなゲームをリツイートするので、プレイヤーもそれが興味深いと思うのです。
あなたの仲間のゲーム開発者をリツイートしましょう!
一緒に団結し、軍隊になりましょう!
ゲーム翻訳から検索
vndb(警告:R18コンテンツを含む可能性があります)のようなウェブサイトを頻繁に訪れ、非公式の翻訳であっても、日本語から翻訳されたゲームを特に検索する人がいます。
私自身も過去にこの方法でゲームを検索したことがあります。とても少数ですが、このような人々も存在します。
正直なところ、開発者としてできることは、英語翻訳を提供する以外にはあまりありません。
データベース
コアなゲーマーたちは、ゲームのデータベースを閲覧し、編集して情報を蓄積しています。先ほど述べたvndbや、nepchan(警告:R18コンテンツを含む可能性があります)のようなサイトを指します。
これらのウェブサイトは、主に日本のゲームに焦点を当てた、それぞれのジャンルのゲームのコミュニティ運営のカタログとです。
プレイヤーによって管理されているので、ゲーム開発者側ができることはほとんどありません。良いゲームを作ると、ここに載る可能性があるでしょう。
5.日本語を話せる(??%)
英語圏でニッチなインディーゲームを探す界隈で、日本語を話せる人はごく少数です。あまりにも少ないので、詳細に説明する必要はないと思います。彼らは日本語を読めるのでゲーム発見方法がそもそも異なりますが、ここで簡単に説明します。
彼らは開発者のクローズドなソーシャルメディア、ブログなども追っています
彼らはboothをブラウズします(私もします)
結論
ここまで読んでくれてありがとうございます。これで私が知る、海外から日本のインディーゲームを探す方法の紹介は終わりです。
日本に限らず、母国語ではないゲームを探すとき、同じステップを踏むことでより多くの情報が見つけられるでしょう。
この記事を通じて、私たちが好きなゲームや、私たちがゲームを探している場所に少し光が当たることを願っています。
最後になりますが、この記事がより多くのインディーゲームを探したり、自分のゲームをより多くのプレイヤーに届ける助けになればこれ以上嬉しいことはありません。
いかがでしたでしょうか。
多くのインディーゲームにとって、メジャー層をとりに行くのは難しいことですが、ゲーム内容が良いなら、触れる人口が増えるほど海外ヒットの可能性も上がるのは自明です。
追加コストがわずかなら、海外のインディーゲームプレイヤーの目に引っ掛かるように工夫するのもいいかもしれませんね。



コメント
1この記事、とても興味深く拝見しました。
私は普段、YouTubeでゲーム配信をしているのですが、非日本語の海外インディーゲームを遊ぶことも多く、そうした配信には非日本語話者の視聴者が遊んでいる様子を見に来てくださることがあります。
また逆に、日本語のインディーゲームをプレイしていても、海外の視聴者が興味を持って訪れてくれることがあり、言語を越えた関心の共有に驚かされることが多いです。
私自身、外国語にはあまり自信がないため、視聴者とのコミュニケーションには音声認識によるテキストをリアルタイム翻訳し、字幕として表示することでやり取りしています。
それでも拙い翻訳越しに「このゲーム、面白い!」という気持ちはある程度伝わるようで、改めてゲームの持つ力を感じます。
同時に、作品が発見されるための文脈づくりや、翻訳・レビューの重要性にも気づかされました。
P.S. DLSiteへの厚い信頼感には、ちょっと笑ってしまいました。