あの日特撮マニアが見た「大怪獣のあとしまつ」という夢…漫画『怪獣を解剖する』
僕が連載している映画レビュー漫画「邦キチ!映子さん」の中に特撮部という特撮だけを扱う奇妙な部活が出てくるんですね。
なのでもう結構長いこと日本の特撮シーンの流れというものを追ってるんですが、
少なくともここ10年間の間で最も特撮界を唸らせ、影響を与えたコンテンツといえばやはり「シン•ゴジラ」なのは疑いようがないと思います。
「怪獣作品」という本来は子供向けに作られた物を現代の国家・政治・社会・災害・科学技術など色んなリアリティを取り込んで再構築させてみるという試みは非常にエポックメイキングだったと思います。
震災を想起させる災害感は日本人なら誰でもハッとしますし、それでまたキャラクターは漫画のように立っていて、映像的にもド派手でこういうテーマを扱う作品が陥りがちな「地味な社会派」には全くなってない。
その後もシンゴジラの影響を受けた様々な作品が作られているんですが、一部特撮ファンが忘れられない映画があります。
それが「大怪獣のあとしまつ」(2022)です。
この映画ね、予告を見た多くの人は「おっ!?」と期待したと思うんです。本当に。
巨大な怪獣が死んだ後に国家がそれをどうするか右往左往するという、まさにシンゴジラ以降っぽい「リアル怪獣処理シミュレーション」がテーマの作品だったんです。ありそうでなかった斬新なテーマに結構多くのファンが期待してたと思うんですが、しかし公開されてみると内容は「リアル怪獣処理シミュレーションコメディ」だったんですね。
基本がコメディ路線だったんです。
内容は邦キチでも紹介してるので興味ある方は見てもらえるといいのですが、とにかく全般的にふざけ成分が強くて本気の特撮ファン的には消化不良の映画だったんですね。ブチ切れてる人も結構いました。
逆に映画の作り手側からすると「何でそこまでブチ切れるん??」「意外と本気の人達からそんなに期待されてたとは・・・」と驚きだったとは思いますが。とにかく、内容の好みはさておきそれぐらい特撮ファン的には大きな衝撃を与えるテーマだったという事です。
そしてですね、最近読んだ漫画であの日我々が「大怪獣のあとしまつ」の予告で期待した「リアル怪獣シミュレーションもの」という幻影のど真ん中をやってる作品がありまして、それがサイトウマド先生の「怪獣を解剖する」(上・下)です。
(1話試し読み)
こちら献本でいただいたんですが、読んでみて何故僕に送られてきたのかわかりました。そろそろ僕もnoteで本格的に漫画の書評って言うか感想みたいなの書いてみよっかな~?と思ってたので、この作品をきっかけにスタートしたいと思います。
かつて日本に大災害を巻き起こし、とある島で死んだ巨大怪獣の解剖をするためにやってきた女性研究者と作業員達が怪獣の未知の生体を調査しながら度々起こる地震や二次的に発生する怪獣の謎などをリアル路線で追求していいくという骨太漫画(もちろんコメディではありません)なんです。
まず特撮ファンにおすすめする部分があるとすればメインキャラクターの名前が「本多昭」「芹沢真嗣」「樋口修介」「雨宮靖子」・・・どうです、「なるほどね」感があると思います。「なるほど、この辺のラインって事ね」感が。
わからない人には全く意味不明だと思いますが。
あと舞台の島は「大豆島(おおどしま)」です。
内容ですが本当にシンゴジラ以降感があり、それでいて労働、環境問題、被災地問題、都市と地方の問題、女性問題等更に現代っぽいリアルなテーマが多重的に加えられかつ今風に言うと「チ。」のような人類の知的探求のロマンのような要素も入ってます。
個人的にすごいなと思ったのは、それでいてアクションシーンや大災害シーン、主人公にちゃんと先が気になる恋愛要素も入っていて「王道エンターテイメント」にまで持って行ってるところですね。
個人的な特撮作品のイメージで言うと平成ガメラっぽいテイストもありがながら、手触りで言うと近いのはゴジラ S.Pでしょうかね。
これはもうね、映画になるんじゃないかと思います。
下手するともう動いてるかもしれません。
邦キチを長年描いてるので「映画にしやすそう」感を非常に感じます。
まぁ、あくまで「感」を感じるだけで僕には何も出来ないんですけどね。「しそうだな~!」っていうだけで終わりです。
実写だと予算がかかりすぎるかもしれないので、アニメ映画の方が濃厚ですね。上下巻というのもちょうど2時間ちょいで収まりそう。
というわけで、タイトルに入ってる「怪獣」で気になった方全員におすすめです!



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