コメ最高値更新のウラで財務省が密かに進める「農政改悪」 専門家が警鐘「もし不作が起きたら…」「海外からの輸入にも頼れない」
「誰も大局を見ない」
そんな思いをある農水省OBに伝えた。するとこんなことを言った。 「昔は各地方に食糧事務所などがあって、農水省の職員が常駐していました。熊本県なら700人はいたのです。本省の職員は彼らを通じて正確な情報を得ていましたが、この30年で地方の職員は7割弱減らされ、今は現場に足を運ぶ人もいなくなりました。さらに統計職員も8割以上減らされました。現場を見ず、正確な収穫量も分からないのだから、米不足が起こるのは当然なのです。そのうえ人間力もなくなりましたね。本省で若い職員と話をしても、先を読む力がないというか、この国の未来を語る人がいなくなりました。国家を動かす仕事をしているのに誰も大局を見ない。第2次安倍政権の頃に、政治主導で官僚の人事が都合良く変えられたせいで優秀な職員が去ったのは大きいですね。それがこの国の管理能力低下に表れているのだと思う」 OB氏は「日出ずる国は、ついに日没する国になるんですね」と、小さな声でつぶやいた。
奥野修司(おくのしゅうじ) ノンフィクション作家。1948年生まれ。『ナツコ 沖縄密貿易の女王』で講談社ノンフィクション賞と大宅ノンフィクション賞を受賞。『ねじれた絆』『皇太子誕生』『心にナイフをしのばせて』『魂でもいいから、そばにいて 3・11後の霊体験を聞く』など著作多数。 「週刊新潮」2025年5月1・8日号 掲載
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