【Q&A】コメ価格 高止まりの背景は?今後は?専門家に聞く
コメの値上がりが止まりません。全国のスーパーでの平均価格は去年の2倍を超える高値となっています。
なぜ高止まりが続いているのか、ことし収穫されるコメの価格はどうなるのか、専門家に話を聞きました。
(経済部記者 野中夕加)
なぜ高止まりが続いているのか、ことし収穫されるコメの価格はどうなるのか、専門家に話を聞きました。
(経済部記者 野中夕加)
話を聞いたのは、東京大学大学院農学生命科学研究科の安藤光義教授。農業政策が専門です。
Q. コメの価格が高い状況が続いているのはなぜでしょうか。
政府が放出した備蓄米については、安い価格で供給されています。
ただ、スーパーなどにコメを販売する卸売業者は、備蓄米以外のコメを去年の秋から高い価格で買い取っているため、簡単に価格を下げることはできないということだと思います。
仕入れ値よりも安い価格で売ったら商売も成り立ちませんし、そのような行動に出るほどコメの市況が悪化している、軟化しているところまできていないということだと思います。
ただ、スーパーなどにコメを販売する卸売業者は、備蓄米以外のコメを去年の秋から高い価格で買い取っているため、簡単に価格を下げることはできないということだと思います。
仕入れ値よりも安い価格で売ったら商売も成り立ちませんし、そのような行動に出るほどコメの市況が悪化している、軟化しているところまできていないということだと思います。
Q. 政府は3月から備蓄米の放出を始めたほか、夏まで毎月放出することも表明していますが、この対応をどうみますか。
コメの値決めにあたっては、概算金(各地の農協が農家に支払う前払い金)がどうなるのかが一番重要です。例年8月終わりごろから各農協が示しますが、農協以外のほかの集荷業者も、農家のもとに、概算金プラス500円とか1000円とかで買いに来るわけです。
最初の概算金が高めでスタートすれば、そこから値段が決まってきますので、なかなか価格は下がる見込みはないことになってしまいます。
今は備蓄米でマーケットを冷やそうとしていますが、もう少し早く、去年、各地の農協が概算金を示したくらいの段階で出していれば、多少は価格が変わったかもしれません。
ただ、備蓄米を出してマーケットが過剰に反応し、価格が暴落してしまったら生産者は困りますから、あくまでも結果論でしかなく、そこは判断が大変難しかったと思います。
コメなどの食料品は、少し足りないと価格が大きく上がり、少し余りめだと価格がぐっと下がるのが大きな特徴なので、一定の価格を形成するのは大変な側面があります。
最初の概算金が高めでスタートすれば、そこから値段が決まってきますので、なかなか価格は下がる見込みはないことになってしまいます。
今は備蓄米でマーケットを冷やそうとしていますが、もう少し早く、去年、各地の農協が概算金を示したくらいの段階で出していれば、多少は価格が変わったかもしれません。
ただ、備蓄米を出してマーケットが過剰に反応し、価格が暴落してしまったら生産者は困りますから、あくまでも結果論でしかなく、そこは判断が大変難しかったと思います。
コメなどの食料品は、少し足りないと価格が大きく上がり、少し余りめだと価格がぐっと下がるのが大きな特徴なので、一定の価格を形成するのは大変な側面があります。
全国のスーパーでのコメの平均価格は、4月20日までの1週間では、5キロあたり税込みで4220円。前の週より3円値上がりし、16週連続の上昇となりました。
スーパーでは高値続く 仕入れ先は?
それでは、スーパーなどにコメを販売する卸売業者の段階での価格はどうなっているのか。NHKは、「全米販」=「全国米穀販売事業共済協同組合」に加盟する全国の業者のうち13社に取材しました。
備蓄米の放出が始まってからのコメの仕入れ価格について、13社すべてが「下がっていない」、または「ほとんど変化はない」と答えました。さらに、4月に入ってから、取引先のスーパーなどに値上げを要請したという会社が5社ありました。
卸売会社からは「備蓄米は市場に出てきてはいるが、価格を下げられるほどの量ではない」といった声や、「流通したとしても全体から見れば少量なので、コメの価格に大きな影響はないと思う。よくても価格は上がらない程度ではないか」という意見が聞かれました。
卸売会社からは「備蓄米は市場に出てきてはいるが、価格を下げられるほどの量ではない」といった声や、「流通したとしても全体から見れば少量なので、コメの価格に大きな影響はないと思う。よくても価格は上がらない程度ではないか」という意見が聞かれました。
ことしのコメは…
Q. ことしは、コメの作付けを増やそうという産地が多くなっていますが、こうした動きは価格にどう影響するのでしょうか。
ことし、令和7年産の生産量がかなり増えそうだということになると、コメの市場は軟化していくと思いますが、まだその見通しが立っていません。過去の例では、米価が上がると翌年は生産が過剰になって価格は下落していますが、今回はどうなるのかわかりません。
農家全体の高齢化がかなり進んで、コメ作りをやめる人も増えている中で、特に東日本の米どころで、どこまで生産が復活するかにかかっています。
また、大規模な農家の方々は、コメだけでなく麦や大豆も作っていますが、すべてをコメにしてしまうと、作業が間に合わなくなるため、コメの生産を増やすのには限界があります。
この1年は今後の米価がどうなるかということと同時に、日本の農業の行く末を占う年になると思います。
農家全体の高齢化がかなり進んで、コメ作りをやめる人も増えている中で、特に東日本の米どころで、どこまで生産が復活するかにかかっています。
また、大規模な農家の方々は、コメだけでなく麦や大豆も作っていますが、すべてをコメにしてしまうと、作業が間に合わなくなるため、コメの生産を増やすのには限界があります。
この1年は今後の米価がどうなるかということと同時に、日本の農業の行く末を占う年になると思います。
Q. 去年からの一連のコメをめぐる混乱とも言える状況から、私たちは何を考える必要があるのでしょうか。
食料は簡単に調達できるものではないので、備蓄も含めて安定的に生産できるような状況をつくっておかないといけないということを認識したのだと思います。
そのような点では、食料安全保障に対する意識は、皆さん高まったのではないでしょうか。
また、備蓄というのはお金がかかります。蔵に入れておくと、質が少しずつ劣化していきますし、売る時は安い価格で処分するような感じですので、そうすると、いざという時に備え、どこまでコストをかけられるか、国として、そこがまさに問われることになったなと思います。
そのような点では、食料安全保障に対する意識は、皆さん高まったのではないでしょうか。
また、備蓄というのはお金がかかります。蔵に入れておくと、質が少しずつ劣化していきますし、売る時は安い価格で処分するような感じですので、そうすると、いざという時に備え、どこまでコストをかけられるか、国として、そこがまさに問われることになったなと思います。
(4月28日「ニュース7」などで放送)
経済部記者
野中夕加
2010年入局
松江局 広島局 首都圏局を経て現所属
野中夕加
2010年入局
松江局 広島局 首都圏局を経て現所属
ビジネス
特集 【Q&A】コメ価格 高止まりの背景は?今後は?専門家に聞く
コメの値上がりが止まりません。全国のスーパーでの平均価格は去年の2倍を超える高値となっています。
なぜ高止まりが続いているのか、ことし収穫されるコメの価格はどうなるのか、専門家に話を聞きました。
(経済部記者 野中夕加)
話を聞いたのは、東京大学大学院農学生命科学研究科の安藤光義教授。農業政策が専門です。
Q. コメの価格が高い状況が続いているのはなぜでしょうか。
政府が放出した備蓄米については、安い価格で供給されています。
ただ、スーパーなどにコメを販売する卸売業者は、備蓄米以外のコメを去年の秋から高い価格で買い取っているため、簡単に価格を下げることはできないということだと思います。
仕入れ値よりも安い価格で売ったら商売も成り立ちませんし、そのような行動に出るほどコメの市況が悪化している、軟化しているところまできていないということだと思います。
ただ、スーパーなどにコメを販売する卸売業者は、備蓄米以外のコメを去年の秋から高い価格で買い取っているため、簡単に価格を下げることはできないということだと思います。
仕入れ値よりも安い価格で売ったら商売も成り立ちませんし、そのような行動に出るほどコメの市況が悪化している、軟化しているところまできていないということだと思います。
Q. 政府は3月から備蓄米の放出を始めたほか、夏まで毎月放出することも表明していますが、この対応をどうみますか。
コメの値決めにあたっては、概算金(各地の農協が農家に支払う前払い金)がどうなるのかが一番重要です。例年8月終わりごろから各農協が示しますが、農協以外のほかの集荷業者も、農家のもとに、概算金プラス500円とか1000円とかで買いに来るわけです。
最初の概算金が高めでスタートすれば、そこから値段が決まってきますので、なかなか価格は下がる見込みはないことになってしまいます。
今は備蓄米でマーケットを冷やそうとしていますが、もう少し早く、去年、各地の農協が概算金を示したくらいの段階で出していれば、多少は価格が変わったかもしれません。
ただ、備蓄米を出してマーケットが過剰に反応し、価格が暴落してしまったら生産者は困りますから、あくまでも結果論でしかなく、そこは判断が大変難しかったと思います。
コメなどの食料品は、少し足りないと価格が大きく上がり、少し余りめだと価格がぐっと下がるのが大きな特徴なので、一定の価格を形成するのは大変な側面があります。
最初の概算金が高めでスタートすれば、そこから値段が決まってきますので、なかなか価格は下がる見込みはないことになってしまいます。
今は備蓄米でマーケットを冷やそうとしていますが、もう少し早く、去年、各地の農協が概算金を示したくらいの段階で出していれば、多少は価格が変わったかもしれません。
ただ、備蓄米を出してマーケットが過剰に反応し、価格が暴落してしまったら生産者は困りますから、あくまでも結果論でしかなく、そこは判断が大変難しかったと思います。
コメなどの食料品は、少し足りないと価格が大きく上がり、少し余りめだと価格がぐっと下がるのが大きな特徴なので、一定の価格を形成するのは大変な側面があります。
全国のスーパーでのコメの平均価格は、4月20日までの1週間では、5キロあたり税込みで4220円。前の週より3円値上がりし、16週連続の上昇となりました。
スーパーでは高値続く 仕入れ先は?
それでは、スーパーなどにコメを販売する卸売業者の段階での価格はどうなっているのか。NHKは、「全米販」=「全国米穀販売事業共済協同組合」に加盟する全国の業者のうち13社に取材しました。
備蓄米の放出が始まってからのコメの仕入れ価格について、13社すべてが「下がっていない」、または「ほとんど変化はない」と答えました。さらに、4月に入ってから、取引先のスーパーなどに値上げを要請したという会社が5社ありました。
卸売会社からは「備蓄米は市場に出てきてはいるが、価格を下げられるほどの量ではない」といった声や、「流通したとしても全体から見れば少量なので、コメの価格に大きな影響はないと思う。よくても価格は上がらない程度ではないか」という意見が聞かれました。
卸売会社からは「備蓄米は市場に出てきてはいるが、価格を下げられるほどの量ではない」といった声や、「流通したとしても全体から見れば少量なので、コメの価格に大きな影響はないと思う。よくても価格は上がらない程度ではないか」という意見が聞かれました。
ことしのコメは…
Q. ことしは、コメの作付けを増やそうという産地が多くなっていますが、こうした動きは価格にどう影響するのでしょうか。
ことし、令和7年産の生産量がかなり増えそうだということになると、コメの市場は軟化していくと思いますが、まだその見通しが立っていません。過去の例では、米価が上がると翌年は生産が過剰になって価格は下落していますが、今回はどうなるのかわかりません。
農家全体の高齢化がかなり進んで、コメ作りをやめる人も増えている中で、特に東日本の米どころで、どこまで生産が復活するかにかかっています。
また、大規模な農家の方々は、コメだけでなく麦や大豆も作っていますが、すべてをコメにしてしまうと、作業が間に合わなくなるため、コメの生産を増やすのには限界があります。
この1年は今後の米価がどうなるかということと同時に、日本の農業の行く末を占う年になると思います。
農家全体の高齢化がかなり進んで、コメ作りをやめる人も増えている中で、特に東日本の米どころで、どこまで生産が復活するかにかかっています。
また、大規模な農家の方々は、コメだけでなく麦や大豆も作っていますが、すべてをコメにしてしまうと、作業が間に合わなくなるため、コメの生産を増やすのには限界があります。
この1年は今後の米価がどうなるかということと同時に、日本の農業の行く末を占う年になると思います。
Q. 去年からの一連のコメをめぐる混乱とも言える状況から、私たちは何を考える必要があるのでしょうか。
食料は簡単に調達できるものではないので、備蓄も含めて安定的に生産できるような状況をつくっておかないといけないということを認識したのだと思います。
そのような点では、食料安全保障に対する意識は、皆さん高まったのではないでしょうか。
また、備蓄というのはお金がかかります。蔵に入れておくと、質が少しずつ劣化していきますし、売る時は安い価格で処分するような感じですので、そうすると、いざという時に備え、どこまでコストをかけられるか、国として、そこがまさに問われることになったなと思います。
そのような点では、食料安全保障に対する意識は、皆さん高まったのではないでしょうか。
また、備蓄というのはお金がかかります。蔵に入れておくと、質が少しずつ劣化していきますし、売る時は安い価格で処分するような感じですので、そうすると、いざという時に備え、どこまでコストをかけられるか、国として、そこがまさに問われることになったなと思います。
(4月28日「ニュース7」などで放送)
経済部記者
野中夕加
2010年入局
松江局 広島局 首都圏局を経て現所属
野中夕加
2010年入局
松江局 広島局 首都圏局を経て現所属