農林水産省は全国のスーパーおよそ1000店でのコメの販売価格をまとめ毎週公表しています。
コメ 18週ぶり値下がり スーパーでは販売数量増え“在庫不足”
全国のスーパーで今月4日までの1週間に販売されたコメの平均価格は5キロあたり消費税込みで4214円と前の週から19円値下がりしました。コメの平均価格が値下がりするのは、去年12月以来、18週ぶりです。
一方で、スーパーで売れたコメの量は、直近では去年を上回る傾向が続いていて、価格高騰が続く中、消費者の購買行動に変化が表れているようです。
コメ価格18週ぶり値下がりも去年の2倍
先月28日から今月4日までの1週間に販売されたコメの平均価格は5キロあたり消費税込みで4214円でした。前の週と比べると19円下落し、去年12月以来、18週ぶりの値下がりとなりました。ただ、去年の同じ時期と比べると依然としておよそ2倍の高値となっています。
一方、今月4日までの1週間の店頭でのコメの販売量は、前の年の同じ時期より14%あまり増えました。コメの販売量は、ことし3月は前の年を下回る状態が続いていましたが、先月以降は、前の年を上回って推移しています。
農林水産省は「販売されたコメの内訳を見てみると、備蓄米を含むブレンド米の割合が増えてきている。割安な備蓄米の流通が徐々に進むことで、平均価格を押し下げるとともに販売量の押し上げにもつながっているのではないか」と話しています。
【大阪】在庫不足で購入制限も
大阪・阿倍野区のスーパーでは在庫が不足がちなことを受けて、買い物客に対し「1家族、1袋まで」と購入制限を呼びかけるところも出ています。
コメの卸売業者に発注をしても、発注した量の半分程度しか仕入れることができなかったり、一部の産地のコメについてはまったく入荷されなかったりして、見通しが立たない状況だということです。
特に販売価格が5キロ4500円ほどのコメの確保が難しく、商品棚が空になることを避けるため、5500円ほどの高値のコメも仕入れざるを得ないとしています。
12日朝も、従業員が仕入れたばかりのコメを並べていましたが、商品棚は、空きスペースが目立っていました。
買い物に来た60代の男性は「近くに住んでいる母がスーパーになくて困るということで、お米を届けたことはあります。あまり売ってないところが多いですね」と話していました。
60代の女性は「パスタなどコメ以外のメニューを取り入れて、コメの消費を抑えています」と話していました。
スーパーを運営する「アオイサポート」の内田寿仁社長は「出来るだけ早く店頭に並べて、たくさんのお客様に買ってもらえるよう工夫しているが、入荷量が少ないので、なかなか手の施しようがない。備蓄米の効果も感じていません」と話していました。
【大阪】給食の“ご飯” 回数減らす学校も
コメの価格高騰が続いていることを受け、大阪・交野市は、夏休み明けの2学期から市内の小中学校の給食で「ご飯」を提供する回数を、週3回から2回に減らすことにしています。
交野市の12の小中学校の給食では現在、主食として、月曜日と水曜日、それに金曜日の週3回は「ご飯」を、残りの2日は「パン」を提供しています。市内の倉治小学校では給食の時間、きょうの献立の「わかめご飯」を児童たちが次々に口に運び、中にはおかわりをする児童もいました。
市によりますと、子どもたちの間ではパンよりご飯の方が人気だということですが、給食に使用するコメの1キロあたりの購入価格は、去年の1学期分は345円でしたが、ことしの1学期分は502円と、1.4倍あまりに値上がりしています。夏休み明けの2学期分はさらに価格が高騰し、1キロあたり764円になる見通しだということです。
市は今年度、コメを1キロあたり547円で購入する想定でしたが、予算が不足するおそれがあることから、2学期は「ご飯」を提供する回数を週3回から2回に減らすことを決めました。その分、コッペパンなどパンの提供回数を増やすということです。
市は、今後もコメの価格高騰が続けば、3学期は「ご飯」の提供回数を週1回に減らすことも検討するとしています。交野市の山本景市長は「子どもたちに影響が出るのは申し訳ないですが、量を減らすか、回数を減らすかの二者択一の非常に苦しい状況です。1日も早くコメの価格が落ち着いてほしいです」と話していました。
【東京】販売量去年の2割増 まとめ買いする客も
都内のスーパーでは、コメの販売量が去年の同じ時期を上回る状況が続き、なかにはまとめ買いする客もいるということです。
東京・足立区のスーパーではコメの値上がりが続くなかでも、販売量は去年の同じ時期を2割程度、上回る状況が続いています。
このスーパーでは2週間に1回程度コメの特売を行っていますが、1人で3袋から4袋をまとめ買いするする客が増えているということで、今後の品薄への警戒感が消費者の間で高まっているとみています。
また、2キロ入りのコメの販売量も去年の同じ時期の3倍近くに伸びていて、店では1回あたりの支払い額を少しでも抑えようという意識が強まっているとみています。
訪れた80代の女性は「これまで5キロのコメを購入していましたが、おととい初めて2キロを買いました。年金が入るまで財布がさみしいので、一時しのぎです」と話していました。
一方、安いコメを求めて4か所のスーパーを回ったという70代の女性は「どこかに4000円を切る価格のコメがあればと思って探していましたが、ありませんでした。別の店にカリフォルニア米が3500円くらいで売っていたので、1度食べてみます」と話していました。
ベニースーパーの赤津友弥本部長は「5キロのコメが4000円を超えるようになってから、お客様の買い方が変わってきた。今後、産地でコメがなくなることも危惧されるなか店頭に好みの銘柄があった場合は少し多めに抑えておこうという消費者心理が働いているようにみえる」と話していました。
大手スーパー “在庫不足” 傾向広がる
大手スーパーの間では、コメの価格が上昇するなかでも消費者の需要は強く、在庫が不足する傾向が広がっています。
日本生活協同組合連合会によりますと、全国各地の生協が運営する店舗では、4月末から5月上旬にかけて去年の同じ時期に比べてコメの販売量が増加したということです。
日本生協連は「例年なら販売が伸び悩む大型連休中もことしは増加した。品種にかかわらずコメがあれば売れる状況だ」と話しています。
またイオンは、コメの売れ行きが好調なため一部の店舗で在庫が少なくなり、大型連休前に購入制限を設けたケースもあったということです。
イオンは「コメの価格が高止まりする中でも、消費者の需要は強い。価格が高いからといって販売が減少する傾向は見られない」として、割安なアメリカ産のコメをブレンドした商品の販売を始めています。
さらに中国や四国地方を中心に展開するフジは、コメが品薄となる店舗が増えているとした上で「入荷数量が需要に追いつかず、店頭に十分な量を並べられないので、売り場を縮小することも視野に入れている」と話しています。
また首都圏や近畿地方に展開する大手スーパーでは、販売価格が高くなっても、コメの売れ行きは変わらないとした上で「備蓄米の流通が始まったあとも取り引き価格は下がる気配がなく、今後2か月から3か月先は価格を下げるのが難しい状況だ」と話していました。
大手の卸売業者からの販売減で店頭は品薄感
大手の卸売業者がスーパーなどの小売業者に販売したコメの量は、去年の秋以降、前の年を下回る状況が続いています。
農林水産省は、年間5万トン以上のコメを扱う大手の卸売業者を対象に、小売業者や外食業者などに毎月、コメをどれだけ販売したかを調査し、公表しています。それによりますと、大手卸売業者がスーパーなどの小売業者に販売したコメの量は、去年の秋以降、前の年の同じ月を下回る状況が続いていて、ことしに入ってからは、前の年に比べた減少幅が、1月は5%あまり、2月は10%あまり、3月は13%あまりと拡大する傾向にあります。
農林水産省によると、集荷業者や卸売業者が抱えるコメの在庫量は、去年の新米が出回ってからも、前の年より30万トンから50万トンほど少ない状況が続いています。
関係者の間では、こうした在庫の少なさを背景に卸売業者から小売業者への販売量が減少し、さらには店頭での品薄感につながっているのではないかという見方が出ています。
【札幌】めん類など販売強化も
札幌市内のスーパーではコメの品薄状態が続く中、めん類などコメに代わる食品の販売を強化するところも出ています。
札幌市北区のスーパーでは、5キロあたりのコメの価格が税込みで4000円を超えていて、去年の同じ時期のおよそ2倍と価格の高止まりが続いています。
こうしたなかこのスーパーには、今月2日、初めて備蓄米が入荷し、5キロあたり3700円あまりで販売し、売れ行きは好調だということです。ただ備蓄米の来月以降の入荷の予定は立っておらず、コメ全体では希望する量の6割から7割程度しか調達できない状況です。
こうしたことからこのスーパーでは、コメを並べていたスペースにカップラーメンなどのめん類やホットケーキ用の粉など、コメ以外の食品を並べるようにし、これらの食品の売り上げが去年の同じ時期に比べておよそ1.5倍に増えているということです。
80代の来店客は「備蓄米が出回れば値段が安くなると思っていたが状況は変わっていない。備蓄米放出の効果がどこで止まっているのか不思議だ」と話していました。
「クーリッチ拓北店」を経営する会社の高西邦明社長は「備蓄米の放出でコメ不足が解消されている実感はなく、価格の高止まりは続くのではないか。コメ全体の流通量を増やさないとどうにもならないので、政府によるコメの買い戻しを見合わせるなど対策を取ってほしい」と話していました。
【茨城】米の作付け面積増やす農家も
コメの価格高騰を受けて米どころの茨城県では、主食用米の作付け面積を増やして田植えをする動きが本格化しています。
コメの価格高騰を受けて、茨城県ではことし、主食用米の作付け面積の見込みが去年より2100ヘクタール増えて6万2000ヘクタールと、増加面積は全国で3番目に大きくなっています。
このうち、つくば市の農家の中山和哉さんは、耕作放棄地を新たに活用したり、輸出用のコメを転換したりして、主食用米の作付け面積を去年のおよそ1.5倍に増やします。
12日は去年、輸出用米を育てていた水田で、13センチほどに育った主食用米の苗を植える作業が行われていました。
また、中山さんはことし、「コシヒカリ」より収量が見込める品種「にじのきらめき」の作付けを増やしていて、より多くのコメを出荷できるようにしています。
田植えは来月下旬まで続き、ことし9月から稲刈りが始まる予定だということです。
中山さんは「コシヒカリは高温に弱く収量が落ちてしまうので、高温に強い品種のものを増やせば経営の安定にもつながる。いま国内でコメが足りないということなので、主食用米をたくさん作って、みなさんに届けたいという気持ちで頑張っている」と話していました。
専門家「普段どおりの買い方を」
《コメの販売量が4月以降、前の年を上回る状況が続いていることについて》
「コメの価格が高くなっていくのであれば今のうちに買っておこうという意識や、不安感から買う量を増やしているところがあると思う。備蓄米を待っていたが、1か月以上たってお米の在庫がなくなり、どうしても買わざるを得ないので、高くても買うということが今あると思う」
《コメの価格が高止まりしている理由について》
「業者間のほか、小売店での消費者の不安感によって価格が高くなっている部分がある。どれくらい足りないか正確な量が分からないなかでの不安感がどうしても価格高止まりの要因になっている。これから買いだめや、不必要に多く買ってしまうようなことがあると、結果として店頭価格が大きく跳ね上がってしまうことにもつながる」
《コメの高値に消費者としてどう対応すべきか》
「外食にしろ、小売りにしろ、新米が出るまでの間の最低限の在庫は確保している事業者が多いのが今の状況だ。店頭からコメが完全に消えてしまうような状況にはなりにくく、備蓄米の流通も今後進んでくる。だから家庭での在庫がなくなりそうなときに定期的に買うという普段どおりの買い方をしていただくのが、いま消費者にできる一番重要なことではないか」
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