熊本市電追突事故1カ月 安全対策道半ば、「客離れ」も 原因調査、負傷者補償進む
熊本市電同士の追突で、15人がけがを負った事故から25日で1カ月となる。市交通局は「現状でできる限り」の安全対策を急ぐ一方、相次ぐトラブルを背景に市電では客離れの傾向も見られる。安全運行への信頼回復は見通せないまま、家族連れや観光客らの利用が増える大型連休を迎える。
24日午前8時半過ぎ、中央区の熊本城・市役所前電停では通勤や通学、旅行客を乗せた電車が数分ごとに行き交っていた。
事故は3月25日朝、この電停で発生。電停内に進入した車両が停車中の車両に追突した。追突した車両は内規で定めた速度を超過していたほか、近くのレールには油状のものが付着していたという。
事故原因は国の運輸安全委員会と九州運輸局が調査している。運輸局は4月中旬に車両やレール、運行状況を現地や関係者の聞き取りで確認した。油状のものは市交通局が県警に提供。科学捜査研究所で成分を分析している。結果の判明には時間を要する見込みだ。
市交通局は内規違反を受け、運転士の速度感覚を再教育するなど対策に乗り出した。ドライブレコーダーの映像で運転士に規定の速度や前方車両との距離を守れているかを確認してもらっているほか、路上から運行状況をチェックする試みも始めた。
また、事故が起きた電停周辺では速度を落として運行している。朝夕のラッシュ時には、乗客の乗降時間を短くする目的で電停に2台の車両が停車することもあったが取りやめた。
ただ、事故原因の調査が続く中で、運転士の処遇改善や車両の老朽化対策といった課題の解消は進んでいない。運行管理課は「現状でできる対策をしている。運転士の教育やケアを含め、より安全に配慮していきたい」と説明する。
市電を巡っては、昨年だけでドア開け走行や脱線など16件の運行トラブルが発生。これらに加えて発生した人身事故の影響は小さくない。
交通局が今年1~2月に実施したアンケートでは、トラブルによって利用回数が減ったと答えた利用者が全体の12・4%に上った。ミャンマーからの特定技能実習生テーススアウンさん(24)=中央区=は「遠出する時は市電を使う。事故の原因が分かっていないのは不安」。通勤で利用する中央区の30代女性は「最近便数が減り、時間通りに来ないことも多い。人手が足りずギリギリで運営していることが一因なのだろうか」と案じる。
負傷者のうち、乗客14人に対して市は今月初旬までに全員に謝罪した。数人は治療を終えた状態で、補償に向けた話し合いが進む。大西一史市長は「人身事故という極めて重大な事態により信頼を裏切り、責任を痛感している。二度と起こらないようにする」と強調。自身を含めた関係者の処分を検討する。
日本大の綱島均特任教授(鉄道工学)は「ヒューマンエラーなど事故原因が多岐にわたり、職員への教育に本気で取り組んできたのか疑問が残る。市長は責任を持って予算や時間を割き、安全を担保してほしい」と指摘する。(馬場正広、鹿島彩夏)
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