第69話 楽しいお出かけ その三
「──ここですかね」
「ここですね」
ということで、やってきましたカードショップ。場所は秋葉原駅、電気街口から歩いてすぐの有名カードショップ。
大型ビルの一角に構えられたその店は、普通のカードショップよりも遥かに足を運びやすく、敷居が低い。
事実として、カードゲーマーだけでなく、観光客と思わしき人々も足を運んでいるほど。……そのため小声でやり取りしなきゃならないのはご愛嬌というやつか。
ま、それはさておき。その店の入口付近に、デンッと鎮座する自販機が二つ。売っているのは飲み物ではなく、超有名カードゲームが二種。俗に言う『自販機オリパ』である。
「二つか。どっちにします?」
「個人的にはどちらでも。両方集めてはいるので」
「じゃあ、いま何かと話題のこっちで。今日はコレに種類を絞りましょうか。目につく全部に手を出してもアレなので」
「そうですね」
同意されたので、ターゲットとなるタイトルを絞ることに。ターゲットは【ジャケット・モンスター】、通称ジャケカ。
最近無駄に高騰しており、新弾含めて全体的に品薄な、子供用カードゲームの癖に子供が買えないトレカタイトルである。
「えーと、あるのは四つ。五百円のお宝オリパ。千円の一撃必殺オリパ。二千円の闇オリパ。三千円の女の子オリパですか」
「テンプレ的なラインナップですね。どちらをやりますか?」
「そりゃもちろん女の子オリパでしょう。一番高いのを狙うのが乙ってもんですし」
「なるほど。では私もそれに倣いましょうか」
「お目当ては?」
「この中ですと、個人的には『リカのイタズラ』のSRが。まだ持ってないんですよねぇ」
「あー。この弾も人気でしたからねぇ」
藤宮さん曰く、公式の抽選を筆頭に外れまくったせいで、そもそもBOXの数を揃えることができなかったそうな。
で、入手できた数少ないBOXも、出てきたのは外れSRカード。トップレアに位置するリカのいたずらSR、及びSARは手に入らなかったらしい。
ちなみにこのリカのいたずらSRだが、販売価格はなんとびっくり約三万円。SARに至っては八万オーバーというオバケカードである。……キッズ用のカードゲームの値段じゃねぇんだわ。
「夜桜さんはどうですか?」
「俺はぶっちゃけ当たりならどれも嬉しいですが……あえて選ぶなら『ホシノSR』ですかねぇ」
「あー」
ちなみに販売価格は二万ちょいだったような。こっちも馬鹿だよマジで。
「でも、どうしましょうか? 流石に全部枯らすとなると時間が掛かりすぎますし……」
「なら、こういうのはどうですか? 一列狙いで交互に買って、恨みっこなしというのは。もちろん、夜桜さんがよろしければですが」
ここに来てまさかの提案だった。個人的には全然問題ないし、そういうのは大好きではある。
だがしかし、軍資金的には圧倒的に藤宮さんが不利。俺にとっては塵が如き金額でも、一般的には一パックで三千円というのは中々だ。
三回やればそれだけ一万近い金が飛ぶ。そこらのサラリーマンより遥かに稼いでいる藤宮さんであっても、万単位の金額はしっかりとした出費だろう。
ましてや、それが半々の確率で無駄になるかもしれないとなれば……。
「良いんですか? これで外れたら、そちらのほうがダメージがデカイですよ?」
「ふっ。承知の上です。そもそもオリパはハイリスク・ハイリターン。……でも、だからこそ面白い」
「なるほど。そう言われてしまえば、これ以上は無作法というもの」
「ええ。──では、デスマッチといきましょう!」
やっぱりこの人最高だ。浪漫の何たるかが分かっている。
お互いに睨み合う。それでいて浮かんでいるのは獰猛な笑み。そりゃそうだ。こんな勝負、笑わないほうがどうかしている。
ハイリスク・ハイリターン。これほど浪漫溢れる単語はない。ましてや勝負となれば、最高にヒリつくというものだ。
「では提案した私が先行させていただきます!」
「分かりました。ならお好きな列を選んでください」
「ありがとうございます。……ドロー! カードをセット!」
三千円を投入した藤宮さんが、気合いの言葉とともにボタンを押す。……第三者視点だとかなりアホっぽいことをしているが、やはりこういうのはノリが大事なので仕方ない。
ま、ともかく。これにてターゲットとなる列は決まった。あとはお互いに三千円を投入していくだけ。
「記念すべき一発目ですね」
「ええ」
カコンという軽い音とともに出てきたのは、手のひらサイズの白い紙箱。典型的な自販機オリパのケース。
「……売り切れ、にはなってないですか」
「まあ、中々そう上手くはいきませんよ」
残念そうに呟く藤宮さんに対し、俺も肩を竦めて言葉を返す。
自販機オリパは、結構な確率で列の最奥に当たりカードが入っている。理由としては、早い段階で当たりが出るのを防ぐためだと思われる。
自販機オリパの中はブラックボックス。何処に当たりカードが潜んでいるかを、客側が知ることは基本できない。
だが現在の俺たちのように、連投した場合は話が別だ。自販機はボタンの場所と中の棚が連動している。つまりそれぞれの棚が独立しているため、原則的に当たりカードは一つの棚につき一枚となる。
なので棚の半ばに当たりカードが潜んでいた場合、連投されたら早い段階で当たりカードがゲットされ、それ以降のカードが購入されなくなってしまう。
もちろん、当たりカードを抜かれたあと、他の客が知らずに購入するであろうし、金銭的な問題はそこまでない。しかし、そこに在庫管理など理由が加わると話が変わってくる。
そうした諸々の背景が加わると、最奥に当たりカードを設置したほうがいろいろと楽という結論になるため、自販機オリパでは売り切れ=当たりという構図が共通認識として存在しているのだ。
「ですが真ん中にある可能性もゼロではないですし、中当たりとかもあります」
「そうですね」
「……南無三!」
意を決して藤宮さんがパックを開ける。中から出てきたのは、透明なスリーブに入ったカードの束。目算だと五枚入りか。
「……もうこの時点で分かったんですが」
「いやほら、中身は確認しないとですよ?」
「……ダブルレア、ダブルレア、そして……サウスのSR! あぁぁっ!!」
「サウスのSR、と」
ネットでサッと調べる。販売価格で約八百円。買取価格となると……まあ、うん。
はいコレがオリパの闇です。三千円が一瞬でワンコインちょいぐらいの屑カードの束に。忘れてはならないのが、三千円あればちょっと贅沢なディナーを楽しめるということ。
いや本当に一般人が手を出すもんじゃないわ。大ハズレでコレじゃなくて、デフォってのがマジで笑えない。……でも他人が苦しんでいるのは笑えちゃう。
「では、私のターンですね」
「っ、ふぅ……。どうぞ」
「ドロー!」
三千円投入。ボタンポチィ!
「売り切れなし! 中身確認! ……イルガーSR!」
同じく販売価格八百ちょい! 知ってた……!!
ーーーー
あとがき
最近ハーメルンの二次創作を読み漁ってるせいか、筆が重いのなんの。
ところで私、とある商業施設の確率機に手を出したんですよ。秋葉まで行くの面倒なので、具合が良ければそこを狩場にしようかなって、検証気分でね?
ボーダーが一万、二万ぐらいなら、アリかなぁと思ってやったんですよ。で、検証したら……四万以上ぶっ込んでも取れなかった。orz
最初から一、二万は溶かすつもりでやってたから、引き際も誤りましてね。いや、流石に、あれ……? なんて感じで連コインしてたら、何時のにかサイフがスッカラカンに……。九月は引きこもりが決定しました。
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