第63話 釈明配信? その一

「──はいどうもこんばんは。デンジラスのスーパー猟師、山主ボタンです。今日は久しぶりのメインチャンネルのほうで配信させていただきます。端的に言えば釈明配信ですね」


:待ってた

:ついにか!

:死ね神の敵!

:とうとうダンジョンの真相が明かされるのか

:本当に神様っているんですか!?

:地獄に落ちろ!

:歴史に残る配信がついに……


 配信開始ボタンを押し、待機画面を切り替えて、まずは挨拶。そして加速するコメント欄。

 常人なら目で追うことすら難しいそれ。その凄まじさは、皮肉なことにそこそこの頻度で確認できる罵詈雑言が物語っている。

 何人もいるはずのモデレーターさんたちが、フル稼働してなお取りこぼす。処理が追いついていない。忙殺とはまさにこのこと。

 それもそのはず。なにせ現段階ですら、同時視聴者数が見たことない数字になっているのだ。文字通りの世界規模。

 国も、時間も、イデオロギーすら飛び越えて、世界中の人間たちがこの配信を注目しているという証明。


「さてさてさて。皆さんよくお揃いで、というべきでしょうか? これだけ人が集まっているってことは、初見の人たちもきっと多いことでしょう。──あの動画は、それだけ皆さんの興味を引いたということですね」


 慇懃無礼に訊ねれば、またもやコメント欄が加速する。……いや、もう元が早すぎて加速の有無さえ些事というやつか。

 ともかく、パッと見で把握した限りだと、肯定のコメントが六割。罵声が三割。ネタを含めたよく分からんのが一割といったところ。

 思いのほか悪質なコメントが目立つが、今回ばかりは仕方ないと受け入れよう。実際問題、それだけのことはやっている。

 先日投稿した不動明王との邂逅動画。それにまつわるアレコレは、法的にアウトなことこそやっていないが、宗教がガッツリ絡む問題でもあるので、放送倫理的には大分グレーなのだから。

 事実、あの動画によって一神教圏は大揺れしたし、それ以外の各宗教も阿鼻叫喚の地獄絵図だった。

 如何にダンジョンという『摩訶不思議』が存在していたとしても、神の実在証明は人類にとって重すぎたようだ。……まあ、分かった上でやったのだが。


「それでは前置きはここまでにして、釈明配信を始めるといたしましょうか。ウダウダ語ったところで、不満が溜まるだけでしょうし? ……あ、先に断っておきますけど、今回ちょっとキャラ変えて進行するので悪しからず。ある程度は真面目っぽくしなきゃならんのですよ」


 普段のユルっとした感じじゃなくて、若干パリッとした感じでいく予定なんで、そこはご了承くださいね。

 いやほら、せっかくの大舞台だしさ。初見さんが多いし、内容が内容だし、多少なりともシリアスを演じないと、それはそれで燃えそうだから。

 なので偉そうとか、不機嫌そうとか、そういう文句は受け付けません。たんに真面目っぶってるだけです。……これはこれで燃えそうだな?


「あー、ちなみに今回の配信ですが、普通に長々語るよりも、質問からの回答形式でいこうと思います。理由はそっちのほうが分かりやすいからですね。俺は別に学者先生ってわけでもないですし。慣れた形で進行させてもらいます」


:マカロン形式か

:ふざけんな真面目にやれ!

:まあ、分かりやすさは大事よ

:適当すんじゃねぇよ

:早く進めてくれ

:緊張してきた……

[メッセージが削除されました]

:ちゃんと公共放送でやれや

:お願いします!


「なお、質問については、こちらが把握しているものの中から、説明したほうが良さそうなものを独自にピックアップしております。そのため、俺の判断で追加するべきと思ったコメントなどを除き、質問コーナーなどは設けません。ご了承ください」


 よほど鋭い指摘でもない限り、事前にピックアップした内容以外は受け取らない。これは絶対。なにせキリがないだろうから。

 そうした諸注意をいくつか語ったわけだが……とりあえず、賛同多数という感じか。理性的なリスナーが多くて助かる。あくまでコメントを把握できた範囲だが。

 だが、回答が恣意的になるのではという内容を筆頭に、否定的なコメントも散見される。……情報ソースが現状俺のみな時点で、恣意的もなにもないだろうに。

 モデレーターさんたちも全力稼働しているとはいえ、やはり焼け石に水か。いっそのこと、スパム系以外はライブ中に対応しなくてもいいかもしれんな。

 ここまでコメントの流れが速いと、配信内の空気などもはや関係ないし。とりあえず、身内含めて連絡取れるモデレーターさんには、ちょちょいと連絡だけ飛ばしておくか。


「それでは、まず一つ目。『神様っているの?』ですね。これはまあ、大変多くの方が気になっていることなのではないでしょうか。実際、例の動画では、ダンジョンの正体以上に、この辺りを皆さん気にしてましたしね」


 ある意味で今回のメイン。人類史における分岐点。回答次第では、世界が崩壊しかねない最重要事項。

 世界三大宗教と呼ばれるものの内、二つが一神教に分類される。その教えの中では、神とは唯一至高の存在であり、神に並ぶ存在はいないとされている。

 各宗教をちゃんぽんしている日本人にとっては想像しにくいことではあるが、外国における宗教は日々の生活に密接に絡んでおり、彼らが人として生きる根幹に関わっている。

 つまり、彼らにとって宗教とは常識であり、生活だ。上に投げれば下に落ちるように。夜眠れば朝起きるように。ただそういうものであり、だからこそ絶対とされている。

 そんな中、唐突に現れたのが俺の動画。そこに映っていたのは、映像越しでなお本能的に理解させる『格』を放つ、異教の神格。

 だからこそ世界は、特に一神教圏の住人は揺らいだ。彼らの教えでは決してあってはならない、しかしそうとしか思えない『神』を目にしてしまったことで、彼らを彼らたらしめる、いや『人』たらしめるアイデンティティが揺らいでしまった。

 ネットでは第三次世界大戦(宗教ver)一歩手前なんて騒がれているが、それは決して過剰な表現ではない。

 信じる寄る辺を失った時、人は正気でいられない。理性ある『人』から、理性なき『獣』に落ちる。そして獣は人を襲う。

 だからこその分水嶺。ここから先、この配信で世界が歩む未来が決まる。……なんとも愉快なことである。まさかVTuberが世界の命運を左右するとは。

 分不相応も甚だしい。事実として、多くの者がそう思っていることだろう。何故やったという叫びも何度も聞いた。

 それでも俺は止まらなかった。騒ぎになると承知の上で、世界に対してある種の喧嘩を吹っかけた。……理由? そんなものはシンプルだ。


「──まず結論から。そんなものは知りませんよ。あの動画に映っていた存在、そしてアレと同等の存在が、はたして俗に言う神様なのか。それを決めるのは俺じゃない。皆さんが好きに決めればいい」


──世界は必ず、ダンジョンについて識ることになる。故に遅かれ早かれの問題でしかなく、ならば俺が好きなVTuberに絡めてしまえと思った。それだけのこと。




ーーー

あとがき

今日から個人的事情で忙しくなるので、先に書いてササッと更新。前みたいに午後六時に投稿してもよかったんですが……早く読めたほうが皆さんいいでしょう?


そして話は変わりますが、新作を投稿しました。……まあ、たんに気晴らしで書いてた作品を、死蔵するのもアレってことで投稿しただけなんですが。

つまり一種のネタ供養。人気が出れば続けるし、人気が出なかったor私が書くのを飽きたら没になる儚い作品。


てことで、宣伝です。


【不法侵入系ストーカー VS ストーカーをシルキーってことにして徹底無視する男】


私の新しいラブコメ作品、よろしければお読みください。今のところクソ短いので、暇つぶし感覚で読めると思います。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る