#くずしろ 先生の『#雨夜の月』を発売済みの最新巻まで拝見しました。主人公咲希が、聴力に障害のあるヒロイン奏音と出会い、様々な人や出来事との関わり合いの中で、『普通』とは何かが問われていく非常に興味深い作品でした。
以下は、ネタバレを含みますので、苦手な方は閲覧をご遠慮下さいませ。
タイトルの「雨夜の月(あまよのつき)」は雨で隠れた月のように、現実に存在するけど目には見えないものを喩えた言葉だそうです。本作を読んでいると、「普通」というものは案外そんなおぼろげなものなのかもしれない、と思わされます。
本作の主要な登場人物たちは、その多くが何らかの障害や病気、あるいは少数属性と接点を持っていることが描かれています。しかしこのことは、ただハンディキャップをキャラ付けに「利用」していることを意味しません。むしろ逆で、明示されていない「誰もが」何らかの事情を抱えている可能性を意味していると思います。
本作は幾つかの障害や病気について見識を深めることができ、それも明らかに本作の魅力の一つなのですが、私が最も感銘を受けたのは、作者のくずしろ先生が明確に「知ろうとすることへ深い信頼」を寄せていらっしゃると感じた点です。
「普通」の生活を送ることが何らかの理由で難しい人々に対して、我々は態度を決めかねることがままあります。慎重さから逆に冷淡すぎる対応をしてしまったり、近づきすぎて今度は距離感を誤ったり。そういう試行錯誤の果てに、いつしか理解そのものを諦めてしまったりする――なんてことも。
そんな中にあって、本作は「それでも、理解を諦めないこと」の価値と尊さを謳っています。押しつけでも、諦めでも、妥協でもなく、「こういう世界だったら良くないですか?」と、きっと誰もが本当は求めたい世界の形を、マンガの形で見せていただいている、と私は思いました。
大人になると――敏い方は子どものうちから――「普通」が案外、難しいことに気がつきます。本作はそんな「普通」と戦った経験のある方に、きっと強く響きます。
今月4月18日には最新巻の9巻が発売されるそうです。少しずつ変わっていく咲希と奏音が、どういう世界を生きるのか、引き続き見守っていきたいと思います。