アクセンチュアによるゆめみの買収で思うこと
先週5/8、当社にとっては驚きのニュースが飛び込んできた。ゆめみ、アクセンチュアによる買収に合意のニュースだ。株式会社ゆめみは、国内でも有数のデザインとエンジニアリングを垂直に統合している会社で、当社(アイスリーデザイン)も、ざっくり言えば同じ業態で、案件もたまにバッティングをしている企業だけに、色んな意味でベンチマークをさせてもらっていた素晴らしい企業だ。
結論から先にいくと今回のディールでは譲渡価格は約37億円で49.8%を取得なので、アクセンチュアはだいぶお買い得なディールを決めたなというのが私の感想です。今回のM&Aを通して思うことを綴ってみた。
Ceresの決算発表からみる株式会社ゆめみ
ゆめみという会社のことを知らない人もいると思うので簡単に説明をすると、売上高48億6000万円、営業利益4億4600万円、純資産19億9000万円(2024年12月期)の規模の上場会社Ceresの子会社になる。
セレス社のIR資料にゆめみの株式譲渡補足説明資料が出ているので、そこから参照すると。以下の業績の推移である。
ゆめみは元々独立系のモバイル関連の開発の会社でモバイル向けのソシャゲ等を展開していた。それが、私の理解が正しければ2017年に赤字に陥った際に財務上の問題から2018年にセレスが約5.5億で第三者割り当てを引き受けて連結子会社化にったと理解をしている。
その頃、あっ、ゆめみって上場会社の子会社として吸収されてのか?と思ったのを覚えている。その後、モバイルに限らずDX支援、内製化支援の文脈で技術力の高い会社として見事に復活をしている。
デザインとエンジニアリングの融合
ゆめみ社の特徴として「デザインとエンジニアリング」という言葉が今回の取引に関連して色んなところで説明がされているが、そもそもデザインとエンジニアリングの融合って何だろうというのを説明してみたい。
デザイン思考の手法に精通してデザインから開発まで一気通貫でやれるという会社で100名規模以上の会社で、オフショア主体ではない会社は実は少ない。手前味噌な話になるが、市場での営業活動、個別案件での最終コンペでの比較対象先となると、恐らく当社も含めて以下の3社位ではないかと考えている。
UI/UXデザインの会社といえばグッドパッチ社が有名であるが開発、正確にはシステム開発という観点で考えれば、グットパッチは制作側で、システム開発までカバーできている訳ではない。
面白いのは、いずれの会社も受託からスタートをしているというよりも何らかの自社のサービス、プロダクトからスタートをしていて、かつモバイルアプリ開発に強みを持っているという点にある。
では、よくある問いで、デザイナーとエンジニアがいれば、デザインエンジニアリングが実現できるのか?という解は実はこの背景と関係している。
デザインエンジニアリングの会社のデザイナーは、概ね以下のポイントが通常のウェブ、グラフィックのデザイン会社とは違う。
OOUIの手法に精通し、オブジェクトとプロパティーの概念がある
Adobeよりもfigmaに精通している
デザイン思考、UXデザインの手法に精通している
デザインシステムに精通している
開発工程にインボルブされている
端的にいうと右脳思考よりも左脳思考が強いデザイナーが多い。ここがウェブ制作が強い会社をシステム開発会社が吸収をしても中々プロトコルが合わないという根っこのポイントになる。
次にエンジニア側も通常の開発会社とは何が違うか?について纏めてみると概ね以下のポイントがある。
システムの変更が重視されるためCI/CD、DevOps文化を重視している
ウォーターフォール以外にアジャイル開発のプロセスに精通している
フロント開発、モバイルアプリ開発に精通をしている
モダンスタック言語・フレームワークに精通している
フロントだけでなくバックエンドも柔軟性を考慮したクラウドネイティブなアーキテクチャーに精通している
端的には、受託・請負型のシステム開発スタイルというよりもプロダクト開発のシステム開発の技術と考え方をベースにしているのが大手SIerと大きく異なる点になる。
つまり、デザイナーとエンジニアが社内にいればデザインエンジニアリングができるかというと実現できる訳ではない。実際のはそれぞれの職種の適正、利用ツール、プロジェクトの手法いずれもが整備されていないと、デザインとエンジニアリングの融合ができないので、この手の会社が多くない理由になっている。
何故アクセンチュアは、ゆみめを子会社化できたのか?
ここから先は推測での発言なので何の根拠もない(インサイダー情報ではありません)が、私から見えている光景は次のように見えている。
セレス側
2025年第一四半期の決算発表によると、ビットバンク社の持分法投資損失4.7億円を計上し、当期純利益はマイナスとなっている
ゆめみの持分売却で税引き後27.5億と7年間で5倍以上のキャッシュリターンを実現できる
兼ねてから本業とのシナジー効果については微妙ではあった
今後の投資ポートフォリオ戦略を考えると、端的にはセレスを主語にするともっと資本効率がいいビジネスに投資を回したかった
結果、虎の子のゆめみ持分を換金化することによって第一四半期の赤字を逆転させて、かつ投資マネーの調達ができる
一方で連結売上の20%弱を失うので、より今後の資本効率を追求する姿勢を株式譲渡の背景説明でも明らかにした
ゆめみ側
2017年での赤字転落時にセレスに5.5億の増資を引き受けてもらったことにより、自由な経営スタイルを実践できて会社を成長させてもらった恩義はある
一方で事業をより拡大させるためには営業戦略が重要と考えた場合に、営業シナジーの高い企業との資本関係は選択肢として考えていた
またさらに優秀な人材を吸収していくためには上流工程の強化を通して単価向上施策が必要だが、セレスのビジネスモデルとは相反していた
端的には、恩義はありつつも自社の価値を十分に理解してくれていない株主より、より自社の価値を理解してくれてかつ営業上も伸ばしてくれる新しいパパがいればウェルカムだったと思われる
アクセンチュア側
人員の獲得戦略を考えた場合に38億の出資で400人の組織を子会社化できるとすれば、ゆみみのノウハウとポジション等を別に考えた場合にでも、端的に安い買い物案件に遭遇した
事業会社での内製化が進む中、ゆみみのポジションならびに戦略はアクセンチュアの事業戦略に合致をしていた
また端的に38億という出資金額はアクセンチュアからすれば金額的には誤差で仮にPMIで人員が離脱したとしてもリスクは低い
これらを総合してみると、どちらから声をかけたのかは分からないが、セレスを主語にするとIR説明上は投資回収ができたという説明になっているが、私の観点からすれば持っている資産価値をだいぶ低く見積もったなと。アクセンチュアを主語にすれば非常にいい買い物ができたという取引に見えている。
またポイントでいくと、デザインとエンジニアリングが融合している企業の多くがオーナー系の会社で事業を拡張できていることから今回みたいに買収の対象企業として市場に出てくることが殆どないところ、上の背景だったからだったのかどうかは分からないが売却対象として市場に出たということだ。
何故、ゆみみの価値はもっと高いのか?
理由はシンプルである。現在IT業界に起きていることは何かと言えば、生成AIによるパラダイムシフトだ。この業界で起きるのはIT業界で長らく続いた人月工数という単価が、比較不可能という時代がやってくる。現在のレベルでは、まだ十分ではないが時期、AIがプログミング工程の大半をカバーできる時代がやってくる。
問題はそれだけじゃない、システム開発というプロセスにおいてプログミング実装工程は全体の2-3割程度しかない、実際には当社でもそうだが、要件定義工程、テスト工程他と、この全ての工程で生成AIはフル活用され始めている。
これにより従来のSEの価値の根幹は、ビジネス側のふわっとした要求を、整理して、具体化して、システム開発ができるようにシステム側の言葉に変換するのが重要な役割だったが、これもAIによってだいぶ合理化できるようになった。
顧客とのMTGの抽象的な依頼事項もChat GPT等に投げればAIがポイントの整理と想定されるシステム構成、考慮しなければならないリスク等を示唆してくれる。SEはこれをベースに抜け漏れている点、修正すべき点を補正すれば初期段階の要求整理はほぼできる時代なってきている。
つまり何が言いたいかというと、これからのシステム開発会社の重要な競争要因の一つは、技術環境の変化に敏感なエンジニアをどれだけ集められるか?またそういったカルチャーができているのか?が肝なってくる。
当社でも"デザインとテクノロジーの力で日本を再度競争力のある国にする"というミッションのもと、"カルチャー定義の中で"Be modern Be standard - 先端を捉え、新たな標準を創る"というのを重要な行動価値基準においているが、これが今後のITサービス企業においては重要な価値になってくる。
この文脈でいくと、ゆめみはカルチャー形成、市場からの評価、ポジショニング等から考えても、ポテンシャル高く素晴らしい会社だと思っている。この観点で言えば、今回の取引価格はDCFと人員獲得単価という観点からはフェアバリューかもしれないが、上に記載したような無形資産が考慮されていない分、だいぶ低い評価価格だったんじゃないかと思っている。
アクセンチュアとゆめみの資本提携の死角は?
もちろんいずれのステークホルダーも熟慮があっての事だと思うので、敢えて今回の資本提携に死角がないのか?という観点でも考察をしてみたい。
最大に懸念されるのは人材の流出だろう。ゆみめの最大の価値はテール組織をベースとした独特のカルチャー形成と組織の運営スタイルだ。
このサイトではゆめみ社の社内の組織構成、行動指針等が膨大なページとともに整理されている。これがゆめみ社の強みの源泉の一つと理解をしているが、この組織運営スタイルならびに経営方針が今回のM&Aによってどうなるかだ。
もちろんM&Aの協議の中ではこの辺りも議論はされているはずで、継続的に尊重されると思われる。その一方で、先月にアナウンスされている全員出社必須のアナウンスも、今回のアクセンチュアとの資本提携を考慮してのことだと推測される。
次に考えられるのは案件の振り分けの難しさだろう。当社もそうであるが、ゆめみも下請けに入るよりもどちらかというと顧客と直契約でビジネススタイルになっている。アクセンチュアとの業務提携で一番期待されるのが営業効果であるが、コンサル案件は別として、システム開発エリアにおいてはある種のバッティングもしくはカニバリズムが発生すると想像できる。
最初は、それでも圧倒的な営業力のあるアクセンチュアなので問題はないと思うが時代が進むと組織運営論からいけば、これは別法人よりもグループ再編を行なった方がより資本効率がいいんじゃないか?という議論にもなるんじゃないかと勝手ながら想像をしている。
この場合に、ゆめみがこれまで培ってきた組織文化、人員が継続してそこにい続けるメリットがあるのか?というのがどうなるかが外から見ていると気になるところだ。
ゆめみの社員の皆さん!!、もしその際は当社を転職候補に入れてくださいねね、私宛に直接のDMください(笑)
さいごに
改めてになるが、ゆめみがアクセンチュアにM&Aというニュースは私にとっても驚きではあったが、以前はIMJがアクセンチュアに吸収されているようにシステム開発業界、ウェブ業界、広告業界と含めて合従連衡が進んでいる。先月はNTTデータが、私の本巣の野村総合研究所を買収か?というニュースが飛んでいたが、富士ソフトの件にせよ、業界の再編が確実に進んでいる。
改めて当社は?という意味でいくと、どうだろうか?
ゆめみと当社の違いは、上にも記載した通りで、ゆめみ社は元々上の経緯があり株式の半数以上を上場会社が保持をしていたという経緯が大きく違う。正確には当社もゆめみの2017年の赤字転落と同じように昨年は痛い目にあって、想定外に想定外の連続で、あわややばい位の瀕死状態だった(これについては別途紹介記事を書くとするが)。
そこから現在は業績を回復をさせてきて、新たな成長ステージに移行しつつある。デザインとエンジニアリングの融合というのはプレゼンテーションエリアだけの話だけでなくて、柔軟性と拡張性をもったシステム開発が必要になり、この国がデジタルの力で競争力を復活させるという意味では重要な取り組みだと考えている。
かつ、これにAIの流れが追い風となっている。社内では私も含めてAIオールイン状態で、生成AIフル活用の業務スタイルに移行をしている。正確には既に取り組んでいる企業は同じ意見だと思うが、生成AIの進化が半端ないので、鬼のような試行錯誤をしながら日々、仕事の仕方をバージョンアップをし続けている。
ゆめみの社長も生成AI時代に業界をリードしていきますと宣言をしているが、そういった意味では当社も負けていないという自負がある。
今回のアクセンチュアによるゆめみ社の買収が、ゆめみにとって吉とでるか凶とでるかは我々の知る由ではないが、今回の取引価格と内容をみて、よしゆめみ以上に当社がなって、当社が日本のデジタル化を牽引する企業にするぞ!と思わせてくれた刺激的なニュースだったことには間違いない。


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