盗難で韓国に渡った仏像、長崎・対馬の寺に返還 日韓関係に一時摩擦
2012年に長崎県対馬市の観音寺から盗まれ、韓国へ持ち込まれた仏像が10日、現地で日本側に引き渡された。対馬に戻るのは12日になる予定。日韓関係に一時は摩擦をもたらした問題が、13年を経て決着する。 【図表】対馬の仏像、盗難から返還までの経緯 返還されたのは、県指定有形文化財「観世音菩薩(ぼさつ)坐像(ざぞう)」。盗難の翌年、韓国で窃盗団が拘束されて仏像は回収されたが、韓国・瑞山市の浮石(プソク)寺が「かつて倭寇(わこう)に略奪されたものだ」などと主張。法廷闘争が長く続き、韓国大法院(最高裁)が23年、観音寺の所有権を認めた。その後、日本に戻る前に仏像を浮石寺に一時貸し出す形をとり、現地で100日間の法要が行われていた。 10日も返還を前にした法要があり、渡韓した観音寺の田中節孝前住職(78)ら日本側関係者も参加。仏像は午後0時半(日本時間同)ごろに日本側に引き渡された。 浮石寺の円牛住職は「今後も対馬と円満に交流し、文化遺産の価値を生かすために話し合い、世界的な模範にしていきたい」と述べた。観音寺の田中前住職は「やっとこの日が来たかといううれしい気持ちだ。(浮石寺での)100日法要も有意義だったと思う」と話した。 仏像は、専門の運送業者によって対馬へ運ばれる。県学芸文化課の点検などを受けた後、12日午後から観音寺で法要が開かれ、檀家(だんか)の地元住民らが帰還を祝う。その後は、再び盗難に遭わないように、対馬の博物館で保管されるという。(菅野みゆき、瑞山=貝瀬秋彦)
朝日新聞社
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