「母校の校歌を、もう一度聴きたい」――。卒業生のこんな思いで、2005年に閉校した鴨川市の旧天津中学校の校歌が20年ぶりによみがえった。統合先の安房東中学校には楽譜も音源も残っていなかったが、地域も巻き込んだ“捜索”で当時の中学生がノートに書き写していた楽譜を発見。それを安房東中の関係者がピアノ演奏してCDに録音した。CDを手にした卒業生は「懐かしいピアノの伴奏が聴けて感激。皆さんに感謝します」と話している。
天津中は1947年に開校し、7025人の卒業生を輩出。2005年に小湊中と統合して安房東中となった。
1970年度卒業で、天津中の第24回生にあたる庄司秀一さん(69)は、6月に第24回生の同窓会を10年ぶりに開催することになり、「みんなで歌った懐かしい校歌を久しぶりに聴きたい」と2月、安房東中に音源がないか問い合わせた。
音源を手にする庄司さん
たまたま他の世代の卒業生からも同様の問い合わせを受けていた学校関係者は、楽譜や音源がないか校内を調べたが見当たらなかった。このため、天津中の教諭を務め、校歌を作詞した故岡野清信さん(天津神明宮65代宮司)の家族に手掛かりがないか問い合わせた。
すると、卒業生で、現在は市内で音楽教室を主宰する長谷川千恵さん(68)が、中学時代に手書きで譜面を書き写したノートを保管していることが判明。毎週、全校朝会で校歌を斉唱する際、長谷川さんがピアノ伴奏するのに使っていたという。
中学生の時に校歌を写譜した長谷川さん=いずれも鴨川
「当時は今ほど簡単にコピーもできず、手書きで写譜した。捨てるに捨てられず、大事にしまっていた。思い出の楽譜です」と長谷川さん。
その楽譜を、岡野さんの孫の妻・岡野千花子さん(49)が専用ソフトで清書し、学校に提供。安房東中で音楽を指導する講師が、ピアノで演奏し、CDに録音した。
録音後になって、市教育委員会に楽譜が保管されていたことが分かったが、CDを受け取った庄司さんは「すぐに動いてくださった安房東中の先生をはじめ、音源の作成に関わった方々にお礼が言いたい」と感謝する。
同窓会の当日に配る同窓生名簿に、今回は校歌の歌詞を掲載した。「同窓会場ではBGMにして、最後にはみんなで歌いたいですね」。庄司さんは目を細めた。
(安藤沙織)
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