東大前駅切りつけ“教育熱心 度過ぎると子どもが犯罪”供述
7日、東京メトロ南北線の東大前駅で43歳の容疑者が乗客の大学生に包丁で切りつけ逮捕された事件で、容疑者が「東大前で事件を起こし、教育熱心が度を過ぎると、子どもが犯罪をおかすと世間の親に示したかった」などと動機を供述する一方、「生活が経済的に立ちゆかず事件を起こした」という趣旨の供述もしていることが、捜査関係者への取材でわかりました。
警視庁は事件に至るさらに詳しいいきさつなどを調べています。
長野県生坂村の自称、自営業戸田佳孝容疑者(43)は7日、東京・文京区の東京メトロ南北線東大前駅のホームで、電車に乗り込もうとした20歳の大学生に突然、包丁で切りつけてけがをさせたとして警視庁に逮捕され、9日、殺人未遂と銃刀法違反の疑いで検察庁に送られました。
警視庁によりますと容疑者は逮捕当日黙秘していましたが、その後、容疑を認め、「教育熱心な親のせいで中学時代に不登校になって苦労した。世間の親たちに、度が過ぎると子どもがグレて、犯罪をおかすようになることを示したかった」などと、供述しているということです。
さらに、「生活が経済的に立ちゆかなくなったことも事件を起こす理由になった」という趣旨の供述もしていることが捜査関係者への取材で新たにわかりました。
自宅周辺の住民などによりますと容疑者は4年前に東京から長野県に移住し、1人暮らしをしていたということです。
事件当日の7日、電車で東京に来たとみられていて、警視庁は事件に至るさらに詳しいいきさつなどを調べています。
【容疑者の供述詳細】
捜査関係者によりますと、戸田容疑者は逮捕当日黙秘していましたが、8日午後の取り調べで事件についての供述を始めたということです。
「私がやったことに間違いありません」と容疑を認めた上で、事件を起こした動機について「教育熱心な親のせいで中学時代に不登校になり苦労した。子どもを東大に入れようとする世間の親たちに、度が過ぎると子どもがグレて私のように犯罪をおかすようになることを示したかった」と供述しているということです。
東大前駅で事件を起こした理由については「名前に『東大』と付いていて世間の人たちが教育虐待を連想しやすいと思った」と供述しているということです。
被害者は東大に通う学生でしたが、「たまたま近くにいたので狙いました」と話し、「世間に自分の考えを示すことができれば、相手が死んでも死ななくてもどちらでもよかった」などと供述しているということです。
事件についての反省などは、これまで述べていないということです。
【容疑者を知る人は】
容疑者の自宅があるのは、長野県の山間部にある人口およそ1600人の生坂村です。
村によりますと、4年前の令和3年12月に容疑者から空き家について問い合わせがあり、現在住んでいる民家を紹介したということです。
この民家は周囲を森林に囲まれた一軒家で、玄関前には大量の段ボールなどが積み上がり雑然としていました。
近所に住む60代の女性は、「引っ越してきたのは4年ほど前だと思います。IT関連の仕事を自宅でしていると聞きました。馬を飼いたいとこっちに引っ越して来たみたいです」と話していました。
また、容疑者の人となりについては、「顔を合わせればあいさつをするような普通の近所の人という印象で事件を聞いてとても驚きました。近所とのトラブルも全然なかったです。ふだんはニコニコしているし容疑者の沈んだ顔をあまり見たことはなかったです」と話していました。
また、容疑者はこの女性と同じ地元の猟友会に入っていたということで、猟友会の集まりにも顔を出していました。
女性は「猟友会の集まりにも顔を出していて、変わった様子はありませんでした。悩みがあるという話をされたこともありませんでした」と話していました。
【東京大学に通う学生は】
逮捕された容疑者が調べに対し、「教育熱心な親のせいで不登校になった。事件を起こすことで世間の親に、度が過ぎると子どもが犯罪をおかすようになることを示したかった」などと供述していることについて、東京大学に通う学生に聞きました。
男子学生は、「容疑者のような家庭があることは理解できるが、自身の体験から生じた主張を、関係ない人を巻き込んで暴力という形で主張している部分が間違っていて、別の方法があったのではないか」と話していました。
別の男子学生は、「受験戦争が激化していて、保護者や先生から過度なプレッシャーがかかっている現状が実際にあり、自分は偶然その期待に応えられただけで、うまくいかないケースもあると思う。ただ、容疑者が起こしたことは、被害者が生まれてしまう結果となり、到底許されるものではない」と話していました。