スカイレール廃止1年 代替路線バスの利用微増 上り坂の復路のみ定期券など細かなサービス好評 広島市安芸区
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JR瀬野駅前(広島市安芸区)と高台の団地「みどり坂」を結んだ交通システム「スカイレール」の運行終了から1年となった。代替として電気自動車(EV)の路線バスが走る。当初懸念された利用客の減少は見られず、運行会社はきめ細かいサービスで需要の掘り起こしに努めている。 【画像】スカイレールの解体作業 かすかな接近音とともに、電気自動車バスが停留所に滑り込む。バス停は計16カ所。駅が終点の「みどり中央駅」と中間の「みどり中街駅」のみだったスカイレールに比べて、団地内の隅々まで路線網を広げた。 「朝は15分ほど家で過ごせる時間が増えた。疲れて帰る時に坂道を上らなくてすむ」と話すのは、自宅近くの団地北部のバス停から乗車し、呉市の職場に電車通勤する会社員女性(48)。通勤通学客が集中する午前7時台には続けて2台のバスが出発することもある。 スカイレールは1998年に開業し、昨年4月30日に運行を終えた。代替バスは廃止の1カ月前となる2024年3月30日から運行を開始した。 バス事業を運営するスカイレールサービス(安芸区)によると、25年3月末までの1年間の利用者は39万6022人。1日当たりの利用者は1082人だった。廃止前には一時、観光客や鉄道ファンが増えたものの22年度の1088人と同程度。1カ月間はスカイレールとバスの両方が運行していたことも勘案すると実質微増となる。村松明彦社長は「想定通りの滑り出し」とみる。 路線バスには新サービスも導入。瀬野駅までの下り坂は徒歩で、上り坂の復路のみバスを利用できる定期券「おかえりパス」を売り出した。全線利用できる定期券の半額とあって、通学定期の月平均利用者402人のうち、5割強の221人がを利用する。中学2年の長男(14)を持つパート店員女性(39)は「往復の定期券だと『高いな』と思っていた。家計が助かる」と喜ぶ。 ICカードで降車し、60分以内に再乗車した場合の運賃を無料にする乗り継ぎ割引も新設した。団地内のスーパーでの買い物利用などを想定する。村松社長は「97年に分譲を始めた団地の人口は約7千人。今後は確実に高齢化が進み、車を手放す人も増える。バスが身近にある生活が根付いていけば」と将来を見据える。
中国新聞社
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