ファンタジー世界側に現れた客人たちと勇者
日の出荘の皆さんとひと時別れ、家族と一緒に一緒にお屋敷に戻り、朝ご飯をいただくことに。
今朝はクロックバードのオムレツとマッドホッグのソーセージ、香ばしい焼き立てパン。
飲み物は僕以外オレンジジュースっぽいもの。僕はいつものかひーを。
ファンタジー側の様子も気になりますが、まずは神社のお手伝いへ向かうことにした。
何かあれば監視カメラからアラートが上がるように設定してあるので。
それに神社から日の出荘まで徒歩数分ですし。
通いなれた神社への道を列が広がらないように気を付けつつ移動。
ちょっと人数が多いので10人くらいのグループとなって大人1人が必ず入るようにしていますが。
集団登下校とでも言えばよいか。
最近学校に通っていないのですが、そろそろ神社の手伝いを切り上げて学業の方を再開しないと…。
ツクヨミ神社は一日の入場者数を絞っているのでカタハマ山頂神社のオープン直後のような大混雑は起こっていない。
ただ、見学者は別なので神社の外は時間帯によって身動きも難しいような状態となりますが。
ライスリッチフィールド近郊に住んでいる方々にも神社の存在が知れ渡り、外からのお客さんも増えているらしい。
遠くから見えらえる方には今の抽選入場システムは酷なのだが、遠いからと言って優遇するわけにもいかず。
来場者がもっと落ち着けば予約なしでも拝観できるようにしたいのですが、抽選機の予約状況を見ると2か月先までは空きが無い状態なのでちょっと無理だろう。
たった今はそれより後の抽選を行っているのだがさすがに半年後ともなるとちょっと気おくれする人もいるようで。
ちなみに抽選機は完全無人で稼働中。
ここに人的リソースを割くとなると大変なことになりそうだったので真っ先に無人化。
操作方法はパネルに触れ、最大5人までのチケットが同時に取れるよう設定を。
前にも話したが個人の魔力紋…指紋のようなもので個人を特定し、譲渡転売は一切できないしくみとなっている。
そんな感じでいつものように最初の参拝客の受け入れの準備をしていると日の出荘の監視カメラからアラートが上がった。
とりあえず僕だけ席を外し、日の出荘へと向かうことに。
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「お待たせしました」
『いま きた』と返事が。
いつぞやのきつねみみとおしっぽさまを生やしたビキニアーマーの少女が答える。
そして赤や黄色と言ったサイケカラーの仮面のようなものをかぶった正体不明の方々が数名。
偉い人というのは誰なんだろうか。それとも今日は様子見で関係者が来ているだけなのか。
まだ翻訳システムが完全に機能していないので何とも言えない。
どこまで翻訳されるかは不明だが、一応所属と地位を名乗っておこう。
「ライスリッチフィールド在住、召喚されし預言書の勇者、今はサブローと名乗っています」
住所はここで良いんだよな。ギルドカードの本籍は一応ライスリッチフィールドになってたし。
僕が名乗った途端、突然ざわめきだした仮面の方々。
一度に複数人が話すと翻訳システムが混乱し、テキストも表示されなくなる。
まぁ、学習は継続して行われているようなので一方的にしゃべってもらうのもありなんですが。
「次元の壁」に投影された言語学習率は3割ほどに伸びている。
もうちょっと会話が必要かもしれない。
ちなみにビキニアーマーの少女は完全に蚊帳の外にされ、仮面の人たちだけで集まって何やら深刻そうな話を。
「彼らは何を話し合っているのですか?」
『わからない』とビキニアーマーの少女から返事があった。
この場合のわからないが僕の質問の意図が汲み取れないのか、それとも仮面の人たちの会話の内容が意味不明なのか、どちらにも取れるのでさてどうしたものか。
『あのこたちは?』
ビキニアーマーの少女から質問が。
あの子達というのは姫さま達の事だろう。
「今は仕事中で、夕方には顔を出せると思いますが」
『ゆうがた…ひがおちるまえにはかみのもりをでなくてはならない』
夕方は通じたっぽいな。かみのもり?神の森かな?
この鬱蒼と生い茂る森の名前っぽいのはなんとなく分かった。
確かに神々が住まうような神々しい雰囲気はありますし。
『よるはれつじゅうもでる。ほんとうはここもあぶない』
れつじゅう?なんだろう。言葉の感じからするとあまりよさそうな物では無い気がする。
僕とビキニアーマーの少女だけで少しずつ会話のキャッチボールを行っている間も仮面の人たちのお話は終わる気配を見せなかった。
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『異なる世界から呼ばれたというのですか?』
翻訳システムの学習が進み「次元の壁」に表示されるテキストは漢字かな混じりの物へと。
たった今は僕だけなのでまずは日本語へのトランスレーションを優先している。
ライスリッチフィールド語とでもいえばよいのか、こちらの言語への変換は裏側で順次行っている状態。
いずれはオパール王妃も顔を出し、あちらの代表と話をする機会もあると思われるので。
僕の出自を説明すると、ビキニアーマーの少女は目を丸くした。
そういえば彼女の名前をまだ聞いてなかったんだよな。
翻訳精度も上がってきたので一応聞くことに。
『名乗りを忘れておりました。神々の森の守護を任されし者、ハルミルと申します』
多分僕達にも聞き取れるよう翻訳システムが勝手に変換したと思われるが…。
「ハルミルさん、よろしくおねがいします」
『ハルミル、何を勝手に話を進めておる!』
仮面の方が一人、僕達の会話に気づいたようで声を荒げる。
『申し訳ありません長老。長老達のお話が長いので代わりにわたくしがサブロー様と情報交換を』
『ハルミルは劣獣が襲ってこないか見張りをしておれ!』
しかし何の話をしているのだろう。身内以外には知らせたくないのだろうか。
あ、劣獣って変換された。余計分からなくなったけど。
きつねみみ、おしっぽさまに真っ赤なビキニアーマーという属性盛りすぎかなという少女の名前が判明しました。