津軽鉄道、運転士がたった3名に 地方鉄道の人手不足、解決策を国は早急に検討を

小林拓矢フリーライター
津軽鉄道の「走れメロス号」写真:イメージマート

 青森県津軽地方にある津軽鉄道が、6月1日にダイヤ改正を実施する。その理由が、正直困惑させられるものだった。

 ふつう、津軽鉄道のダイヤ改正は、JR東日本のダイヤ改正の際か、その少し後あたりに五能線のダイヤ改正に合わせて実施される。だが、6月にダイヤ改正を実施するというのは異例である。

 津軽鉄道では現在、津軽五所川原方面行き上り列車が13本、津軽中里方面行き下り列車が13本運行されている。6月1日のダイヤ改正で上り2本、下り3本を減便し、津軽五所川原方面行き上り11本、津軽中里方面行き下り10本にする。朝と夕方の時間帯の運行が減る。

 新ダイヤの時刻表を見ると、上り津軽中里20時30分発、金木20時41分着の列車を最終列車にし、おそらくその車両を翌朝5時55分金木発、6時21分津軽五所川原着として始発にすると考えられる。

 下り列車は全列車津軽五所川原発で、津軽中里に向かうことになる。

 ちなみに現行ダイヤでは、最終の津軽中里発金木行が早朝の金木発津軽中里行になる運用となっている。

 なぜ、そんなダイヤ改正が実施されることになったのか?

津軽鉄道金木駅
津軽鉄道金木駅写真:イメージマート

乗務員が1名減、3名でやりくりしなければならない事態に

『東奥日報』5月2日号によると、津軽鉄道には専属の運転士が4人おり、そのうちの3人で1日の運行を実施していたという。だがこの3月末で1人が退職してしまった。現在、3人で全列車の運行を担当している。安全な運行のために、1日2人でできる体制に変更するとのことだ。4人のところ3人でダイヤを維持したままならば、超過勤務や休日出勤など、無理をしないと列車運行ができない状態だったと考えられる。それならば安全面で問題があるということになるだろう。

 津軽鉄道の主な利用者は、通学の高校生と観光客である。観光客は、おもに金木駅近くにある太宰治記念館「斜陽館」に向かう人である。ちなみに、津軽鉄道の車両は、「走れメロス号」と名づけられている。

 高校生と観光客を収入源の二本柱にして長年運行を続けてきた。鉄道自体も「ストーブ列車」などの試みに力を入れている。

冬の「ストーブ列車」は人気が高い
冬の「ストーブ列車」は人気が高い写真:イメージマート

 ただし、地方鉄道によくあるように、経営が厳しく赤字が続いている。

 運転士を増やしたくても、人がなかなか集まらない状況になっている。しかも、育成には時間がかかる。

 同様の事態は、ほかのローカル鉄道でも起こっている。

熊本電鉄、人手不足で減便

 熊本県熊本市を中心として運行している熊本電鉄は、2月3日から減便を開始した。『熊本日日新聞』1月8日号によると、運転士は定員9人だったところをただでさえ7人で運行していたものが、3人が退職することになり、補充がなければ4人での運行になるという。月曜から木曜は便数を159本から121本に、金曜は161本から121本に、土曜は148本から97本に、日曜祝日は120本から91本となった。始発の繰り下げ、終電の繰り上げを実施し、運転士の負担軽減のため所要時間を延長し、運行に余裕を持たせるという。

 やはり運転士の養成には時間がかかるため、もとの便数に戻すのは難しい。

 地方鉄道の運転士不足はどうしたらいいのか?

熊本電鉄で使用されるもと東京メトロ車両
熊本電鉄で使用されるもと東京メトロ車両写真:イメージマート

待遇の改善と乗務員養成の負担軽減を

 まずは運転士の待遇改善である。地方のローカル鉄道では給与が安く、それゆえに運転士がJRや都市部の私鉄・地下鉄に流出しがちである。大手私鉄が中途採用に積極的な姿勢を示しており、地方の運転士がそこから転職していくケースも見られる。

 地方の鉄道会社で働く人の給与改善のために、国は金銭的支援をする必要がある。同じような仕事ならば待遇のいい方に人が流れるのは仕方がない。自治体が支援しては、という意見もあるだろうが、地方の自治体にそのような体力はない。

 また運転士の養成にはお金と時間がかかる。運転士養成費用の国による支援や、どんな鉄道会社でも使えるような動画教材などの作成も必要だ。大手の鉄道事業者では講義形式で試験のための教育ができるが、地方の鉄道だとテキストを見ながら半ば独習というところもある。試験勉強への企業側の負担を下げる必要がある。運転シミュレーターの無料貸し出しなども必要だろう。

 地方の私鉄が、運転士の養成をしやすいような環境を国が整え、さらに待遇を改善することが求められている。国は地方鉄道の人手不足、とくに運転士不足への対応を早急に進めるべきだ。

 また応急対策として、JRや大手私鉄の定年退職者を地方鉄道で再雇用してもらえるように仲介するシステムも必要である。

 幸いにして鉄道の現場で働いている人は鉄道が好きな人が多く、さらに鉄道で働こうとしている人もそうであるのだから、やりようはあるはずだ。

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フリーライター

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。鉄道関連では「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」などに執筆。単著に『京急 最新の凄い話』(KAWADE夢文庫)『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)など。鉄道以外では時事社会メディア関連を執筆。ニュース時事能力検定1級。

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