同窓生から「在日の金くん」ヘイト訴訟、110万円賠償命令…名門校舞台、原告「ノーサイドを願う」
●同窓生の支援者「差別はすべての人にとっての問題である」
今回の判決で、金さんの主張が全面的に認められたかたちとなったが、傍聴に駆けつけた原告・被告をともに知る同窓生で、九州大学名誉教授の津崎兼彰さんによると、原告と被告の両方を知る同窓生の中には「なぜこのようなことが起きたのかわからない」という人が多く、そんな状況下で今回の問題を伝えることに、難しさを感じていたと明かした。 しかし、津崎さん自身は「差別を黙認することは容認につながり、ひいては加害につながるから、個人の裁判を通して差別はすべての人にとっての問題である」と金さんの姿を通して気付いたそうだ。 そんな津崎さんは現在、修猷館の同窓会で「差別を許さない宣言」を制定できないかと、模索している最中だ。 金さんの後輩で、音楽プロデューサーの松尾潔さんも、同窓生へのヘイトスピーチの「伝わらなさ」に直面したことがあったと語る。 松尾さんは以前、東京における修猷館の同窓会で講演をする際に、「先輩同士でこんな嘆かわしいことがあった。だから金さんをゲストスピーカーとして呼びたい」と幹事に伝えた。 それは叶ったものの「同窓生同士の私怨ではないか」と思われている雰囲気も感じられたという。「同窓会は親睦を目的とした集まりなので、厄介ごとを持ち込んでほしくないという空気もあった」と語った。 「そういう出来事を経たことで、悲しくて嘆かわしくて、どこか恥ずかしさにもつながる感情を持っていた。しかし、金さんと1年近くご一緒して、負の感情は誇らしいものに変わっていった。 差別が学び舎を舞台に起きたのは悲しいことであるけれど、同じ場所から差別を受ける側の金さんが立ち上がって、声をあげる強さを見せてくれた。それが僕にとっても強い自己肯定につながった。 誹謗中傷で傷ついているのにそれを公にして、自らの言葉で奮闘する金さんの姿を拝見して、強さはやさしさであることを体現している人が近くにいると、誇らしくなった」