(社説)学術会議改組 法案審議で深まる懸念
日本学術会議を改組する法案の衆議院での審議が進み、独立性を損ねかねない懸念がいよいよ深まってきた。
衆院内閣委員会での審議は担当大臣の訂正から始まった。法案を説明した本会議の答弁で、法案にある会員候補を選ぶ組織名を何回か間違えていた。もちろん間違いは誰にでもあり、改めればいい。ただ、会員選考に関して似た名称の組織が複数あるなど、屋上屋を架す複雑すぎる仕組みで、政府が介入する余地をいくつも埋め込んだ法案の本質が表れたとも言えそうだ。
委員会では、詳しいはずの内閣府の担当室長さえ、「作っていて自分でも非常にこんがらがって難しい仕組みになってますので」と答弁した。
審議で、首相が任命する監事と評価委員会、活動や予算策定に関わる運営助言委員会、選定助言委員会のメンバーが総計22~31人になることも示された。会員250人に対するチェック役の人数としては、いかにも多い。
政府は、学術会議を特別な存在だとしながら、「内閣法制局の見解」を名目に、「他の法人と同様だ」として、政府や外部のコントロールを幾重にもかけようとしている。
政府は、国が金を出す以上は説明責任が必要だと、財政民主主義を掲げて関与の正当性を主張する。透明性は必要だが、政府が介入する余地を残す過剰な組織構成になっては、弊害が大きい。
学術会議は現在も法案でも科学者の代表と位置づけられる。その独立性が損なわれれば、憲法の「学問の自由」を脅かしかねない。
7日、委員会に参考人として呼ばれた梶田隆章・学術会議前会長は「日本における学問の自由全体に対しての波及効果を考えておくべきだ」と述べた。自由な探究や研究の自律性があってこそ学問が発展し、社会や経済に役立つ。大局を見失ってはならない。
発端は5年前の菅義偉首相(当時)による会員候補6人の任命拒否だった。政府が学術会議人事に介入した理由は審議でも明かされていない。
中曽根康弘首相(当時)は1983年に国会で「政府が行うのは形式的任命に過ぎない」と答弁。拒否は想定されていなかった。だが今回、内閣府は、憲法が公務員の選定が国民固有の権利と定めることを引き、「首相が推薦通りに任命しなければならないわけではない」と答弁した。
これでは、学術会議の独立性を尊重すると国会で言われても、将来その通りになるのか、疑念が残る。
問題を抱えたまま、法案を成立させてはならない。