現在の日本の婚姻制度では、カップル二人のうちどちらかが改姓を強いられます。

そのため結婚する二人がともに改姓を望まない場合は、「どちらかが望まない改姓をして法律婚をする」「婚姻届を提
出せず事実婚とする」「婚約を破談とする」という不幸な三択になります。


このうち2番目にある「事実婚」の実態は明らかになっておらず、公的な機関による大規模な調査もあまり行われてき
ませんでした。

そこで2025年3月に、家族社会学をご専門とする慶應義塾大学文学部・阪井裕一郎准教授と合同で、事実婚の方々の意
識調査を実施しました。


この調査により、日本の20〜59歳のうち事実婚の方が占める割合、事実婚を選択した主な理由、選択的夫婦別姓が法制
化されたら法律婚する割合など、重要なデータが明らかになりました。


これらの結果と日本の人口推計値から、選択的夫婦別姓待ちの「結婚待機人数 58.7万人」が見えて来ました。


本調査に対して、有識者・当事者からも多々コメントをいただきました。こちらもぜひお読みください。


「選択的夫婦別姓、事実婚の意識調査結果」に対する有識者・当事者からのコメント


調査概要

調査目的:

  • 日本国内の20-50代男女における法律婚/事実婚の実態を把握するとともに、事実婚選択者の意識(事実婚の
    選択理由や課題、選択的夫婦別姓の法制化による 婚姻形態選択への影響)を明らかにすること


調査主体:慶應義塾大学 文学部 阪井裕一郎/一般社団法人あすには

調査実施機関:株式会社インテージ

調査手法:インターネットによる調査 (スクリーニング調査+本調査一本化)

調査対象条件:

  • スクリーニング調査:全国の20〜59歳男女
  • 本調査:スクリーニングから法律婚/事実婚/未婚者を性年代均等割付で回収

サンプルサイズ:

  • スクリーニング調査:計10,000サンプルを回収(分析対象、母集団の人口構成比に準拠する形で回収)
  • 本調査:スクリーニングから計1,600サンプルを抽出し回収(男女20~50代を性年代均等割付)
    • 法律婚 538サンプル、事実婚 532サンプル、未婚 530サンプル、計 1,600サンプル

調査実施日:2025年3月26日〜3月31日

調査設計

調査結果

事実婚の割合

「現在の婚姻状況について、最も近いものをお選びください。」について

スクリーニング対象20-59歳10,000名のうち 2.0%が事実婚 と回答しました。

法律婚をしている(婚姻届を出している)結婚していない事実婚をしている(婚姻届を出していない)020406080100Total43.154.92.0


2.0%

020406080100男性20-29歳 n=1019男性30-39歳 n=1112男性40-49歳 n=1379男性50-59歳 n=1525どちらでもない20-59歳 n=6613.285.31.533.764.22.148.949.12.054.243.91.916.777.26.1
020406080100女性20-29歳 n= 971女性30-39歳 n=1067女性40-49歳 n=1346女性50-59歳 n=151517.081.02.048.849.51.752.545.61.958.938.42.7

現在事実婚の方が、事実婚を選択した主な理由

0%5%10%15%20%25%30%自分が改姓を望まないから相手が改姓を望まないから戸籍に家族関係をのせる必要性を感じていないから家族や親戚に法律婚を反対されているから「相手の家に入る」といった嫁・婿のような扱いが嫌だから法律婚をする前に相性を確認するため自分または相手の離婚が成立していないため同性婚が法律上認められていないため前のパートナーとの間にできた子どもの立場を考慮したためその他答えたくない19.5%13.7%23.3%5.3%14.5%7.5%3.4%3.8%8.1%8.5%26.7%

「自分が改姓を望まない」「相手が改姓を望まない」 はどちらの理由も改姓によるもの

「改姓を望まないから」を選択した方を合計すると 約3割と最も多い結果になりました。

0%5%10%15%20%25%30%自分又は相手が改姓を望まないから戸籍に家族関係をのせる必要性を感じていないから家族や親戚に法律婚を反対されているから「相手の家に入る」といった嫁・婿のような扱いが嫌だから法律婚をする前に相性を確認するため自分または相手の離婚が成立していないため同性婚が法律上認められていないため前のパートナーとの間にできた子どもの立場を考慮したためその他答えたくない28.9%23.3%5.3%14.5%7.5%3.4%3.8%8.1%8.5%26.7%

1

2

3

複数回答可(最大3つまで)

↑自分が/相手が改姓を望まないを選択した方を合計(両方を選択した方は1名としてカウント)

事実婚での困りごと

0%5%10%15%20%25%30%相続権がない/遺言書があっても相続税がかかる配偶者居住権がない共同親権がない子どもをもつことに躊躇(ちゅうちょ)がある税の控除が受けられない介護施設などに夫婦として入居できない配偶者ビザの交付が受けられない勤務先で家族を対象としたサービスを受けられない等様々な場面で説明を求められる偏見に基づく対応をされる配偶者として医療行為への同意ができない可能性がある生命保険の受取人/代理人の指定ができない可能性がある結婚の祝い金を国や行政・勤務先からもらえない不動産購入時にペアローンが組めない/組みにくい親や親族に認めてもらえない関係性の法的根拠が一切ないその他答えたくない19.7%17.1%9.8%11.8%25.2%12.4%3.9%10.9%16.4%9.2%21.8%18.6%9.4%6.4%7.7%15.8%4.5%27.8%

1

2

3

税の控除が受けられないが最も多く、ついで医療行為への同意ができない、相続権がない
が続きました。

複数回答可(最大3つまで)

選択的夫婦別姓が法制化されたら法律婚しますか?

事実婚の方の約半数(49.1%)20代では 6割以上(男性で64.6%、女性で60.0%)
が、選択的夫婦別姓が法制化されたら法律婚に移行すると回答しました。

はいいいえ0%20%40%60%80%100%全体49.1%50.9%
0%20%40%60%80%100%男性20-29歳男性30-39歳男性40-49歳男性50-59歳64.6%35.4%50.0%50.0%47.7%52.3%52.2%47.8%
0%20%40%60%80%100%女性20-29歳女性30-39歳女性40-49歳女性50-59歳60.0%40.0%43.5%56.5%36.9%63.1%37.9%62.1%

年齢

A

2025年3月人口推
計(万人)※

B

事実婚の割合%


C=A×B

事実婚の人数推計
(万人)

D

法改正で婚姻届を出
す割合(%)

E = C×D

結婚待機人数

(万人)

20歳代

1272

1.8%

22.9

62.3%

14.3

30歳代

1321

1.9%

25.1

46.8%

11.7

40歳代

1618

2.0%

32.4

42.3%

13.7

50歳代

1835

2.3%

42.2

45.1%

19.0

合計

6046

122.6

58.7

今回の調査結果(事実婚の割合と、選択的夫婦別姓が法制化されたら婚姻届を提出する割
合)を、2025年3月の人口推計から推定した20-50代の事実婚の方の人数(約122.6万
人)をあわせると、選択的夫婦別姓が法制化されたら婚姻届を提出する「
結婚待機人数
58.7万人 と推定されます。

結婚待機人数 58.7万人

※東北大学大学院・吉田浩教授 4/19 検算

現在法律婚で過去事実婚の方の、事実婚当時の困りごと

0%10%20%30%40%相続権がない/遺言書があっても相続税がかかる配偶者居住権がない共同親権がない子どもをもつことに躊躇(ちゅうちょ)がある税の控除が受けられない介護施設などに夫婦として入居できない配偶者ビザの交付が受けられない勤務先で家族を対象としたサービスを受けられない等様々な場面で説明を求められる偏見に基づく対応をされる配偶者として医療行為への同意ができない可能性がある生命保険の受取人/代理人の指定ができない可能性がある結婚の祝い金を国や行政・勤務先からもらえない不動産購入時にペアローンが組めない/組みにくい親や親族に認めてもらえない関係性の法的根拠が一切ないその他答えたくない17.7%22.6%14.5%37.1%14.5%11.3%17.7%12.9%9.7%8.1%17.7%9.7%14.5%11.3%12.9%4.8%14.5%27.8%

1

子供をもつことへの躊躇がもっとも多い回答となりました。

複数回答可(最大3つまで)

現在法律婚で過去事実婚だった63名のうち、子供を持つことに躊
躇した23名の年代別内訳

0%10%20%30%40%50%60%20-29歳30-39歳40-49歳50-59歳40.0%54.5%16.7%20.0%

20〜39歳の年代の方で、過去に事実婚だった際に子供を持つことに躊躇した方が多い結果でし
た。

選択的夫婦別姓制度の導入についての意見

20-50代の方のうち選択的夫婦別姓制度が必要と考える方は4割と最も多く、必要ないと考える
方は2割程度と少ない結果でした。

若いほどその傾向は強く、男女とも20代ではほぼ5割が必要と答えています。

必要である必要ないどちらともいえない0%20%40%60%80%100%Total40.3%20.3%39.4%
020406080100男性20-29歳男性30-39歳男性40-49歳男性50-59歳48.218.633.231.031.037.939.924.235.931.023.645.3
020406080100女性20-29歳女性30-39歳女性40-49歳女性50-59歳49.519.930.643.819.736.541.114.744.238.310.451.3

まとめ

  • 本調査の結果から、国内の20-59歳の人口うち2.0%が事実婚を選択していると推定されます。これ
    は、
    令和3年度の内閣府の調査を支持するものでした。2025年3月の20-50代の人口推計6046万人*に
    当てはめると、20-50代の方で
    約122.6万人の方が事実婚状態にあると推定されます。
  • 事実婚を選択している理由では、自分及び/又は相手が改姓を望まないからが約3割と最も多い結果で
    した。
  • 事実婚の方のお困りごととしては、税の控除が受けられないが最も多く、ついで医療行為に同意がで
    きない、相続権がないが続きました。
  • 選択的夫婦別姓制度が法制化されたら事実婚の方の半数が法律婚をすると答えており、若い世代では
    より顕著で、
    20代では6割を超えました
  • 20-50代で事実婚と推定される122.6万人と、選択的夫婦別姓制度が法制化されたら法律婚すると回
    答した各世代の割合から、20-50代の事実婚の方のうち
    58.7万人が法律婚を望む「結婚待機人数」
    推計されます。
  • 現在法律婚をされている方のうち約1割(62/538名)が過去に事実婚をしており、当時最も困っていた
    のは、
    子供を持つことへの躊躇で、これは若い世代ほど顕著でした。
  • 未婚・法律婚・事実婚の方を含む調査では、選択的夫婦別姓制度を必要と考える方が4割を超え、必要
    ないと答える方は2割にとどまりました。男女とも、ほぼどの年代においても、
    必要あるが必要ないを
    上回る結果でした。