総事業費200億円超、設計料約3億3700万円の病院新築プロジェクトが頓挫。発注者による設計図書一式の受領拒否を発端とした裁判で、設計事務所が最高裁判所へ上告した。釧路病院訴訟の最新状況を伝える。
設計事務所の机の上にずらりと並ぶのは、北海道釧路市が発注した「市立釧路総合病院」の設計図書、になるはずだった書類群──。縮小印刷した図面の副本約1800枚、構造計算書や積算などの書類約1万5000ページなどを、20以上のファイルでとじたものだ〔写真1、図1〕。
釧路病院訴訟の発端は約10年前に遡る。市は2015年9月、公募型プロポーザルを経て共同建築設計事務所・武田建築設計事務所特定共同企業体(JV)と設計業務委託契約を締結した。設計は難航し、市は納品期限の延長に合意したものの、延長後の期限の18年3月、成果物が「納品に耐え得るものではない」として、記事冒頭の図書類の受領を拒否。発注者都合で契約を解除した。
「設計図書は宅配便で発送したが、『受け取り拒否』の伝票と共に戻ってきた」(共同建築設計事務所の大場道夫執行役員)のだという。
市は共同建築設計事務所を相手取り、釧路地方裁判所へ提訴。支払い済みの設計料約1億400万円の返還と違約金約3400万円の賠償を求めた。共同建築設計事務所は、未払い報酬約1億円の支払いを求めて反訴した。
2審も設計者側が敗訴
1審の釧路地裁は22年3月22日、反訴を棄却し、市の請求を全額認める判決を下す。同社は控訴したが、2審の札幌高等裁判所は24年11月29日、控訴棄却の判決を下した。このため同社は、最高裁判所へ上告した〔図2〕。
このプロジェクトでは発注者である市側の与条件が固まっておらず、設計期間中に次々と変更要求が行われた。設計がまとまるのに時間が掛かった上、予算も膨れ上がった。
1審判決はこのケースがそんな“炎上プロジェクト”だったという経過を踏まえつつも、「工程管理も設計者の業務の一内容」などと認定して、納品遅延などが設計JV側の債務不履行に当たると判断。2審もこれを支持していた。
「25年4月14日に、最高裁から上告受理申立理由書などを確かに受け取ったという『到着通知書』が届いた。ぜひ申し立てが受理され、不当判決を是正してほしい」と大場執行役員は語る。今後、最高裁が審理を開くかが注目される〔図3〕。
















































