日本学術会議の梶田隆章前会長は7日の衆院内閣委員会で、学術会議を特殊法人化する法案について参考人質疑に臨んだ。東京電力福島第1原発処理水の海洋放出に際して科学的知見に基づく発信が不十分だとされる問題について「国際原子力機関(IAEA)も安全性に問題ないと指摘している。学術会議の多くの会員も科学的な安全性の件では同意見だと思う」と述べた。
その上で「方針が決まる前に、政府から特段の審議要請はなかった」と釈明した。
自民党の黄川田仁志氏の質問に回答した。
「科学に基づく発信すべき」
令和5年8月に開始された処理水の放出を巡っては一部野党議員や中国政府が「核汚染水」と危険視し、中国は日本産水産物の輸入を全面停止した。
梶田氏は当時、学術会議の会長を務めており、7日の内閣委では「争点は政治的なものだ。原発の事故がなければ放出は必要ない。やむなく放出したことの理解を近隣諸国を含めて求めていくのが重要だと個人的に思っている」と指摘した。
黄川田氏は海洋放出を巡り「学術会議は提言や見解を出していない。科学に基づく発言をすべきだった」と苦言を呈した。
一部会員「右の人が来る」
また、黄川田氏によれば、今年4月の学術会議総会で一部会員が「(今回の政府提出)法案が通ることによって、『右の方』に立っている人が入ってくる。そういう状態を許していいのか」などと発言したという。
これに関し、梶田氏は自身が会長時の会員選考について語り、「ダイバーシティーに考慮しながら選考を進めた。多様な考え方を持っている会員が財産だ」と強調し、「政治的な傾向がどうこうということについて、まったく議論したことがない」と説明した。
黄川田氏は「会長が知らない所で、特定の考え方に基づき、異なる考え方を排除するような選考を行ってきた人がいるということが明らかになったと考える」と懸念を示した。
参考人の永田恭介・筑波大学長は日本学術会議法について「現行法で欠けているのは国民や福祉が中心になっていないという点だ」と指摘。「そういう観点から今の法案は非常によくできている」と政府提出法案を評価した。(奥原慎平)