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149.みんなでおめかし?

恒例、皆様の衣装についてただ語るだけの回です。

文字で語っているばかりなので、想像しにくいかもしれませんが…

とりあえずこんな衣装ですよ、と。

まあ、書きたかっただけなのですが…。

 女装が完了したタナカさんは、文句なしの美少女でした。

 ちょっと、睫毛がびしばしですけれど。

「何か、こういう人形あったよな」

「ああ、うん……アンティークなやつ」

 等身大のお人形と言われても、納得してしまいそうなほどにそれっぽい。

 何だかゴーストハウスに飾られていそうな感じです。


 ただ、体はちょっとごつめでしたけど。



 勇者様はすっかり諦めてしまったのでしょうか。

 しょんぼりと肩を落として、深い溜息。

 まあ、いつものことですが。

「殿下、お召し替えの用意ができました」

 そんなところに、いつもどんな時でも平然とした顔色で業務を全うするお兄さんがやって来ました。

 サディアスさんは今日も、恐らくはスケジュール表に忠実です。

「皆様も遊んでばかりいないで、もうそろそろ準備をお願い致します。入浴も致しませんと、時間はぎりぎりですよ」

「あ、本当にもう良い時間だね…」

 そうです、そうでした。

 私達も、出席するんでした。

 タナカさんの着せ替えが楽し過ぎて、忘れてた…。

「そう言えばサディアスさんは出席しないんですか?」

「従僕の身で、華やかな席に出席するなどとんでもありません。私は今夜もここで、皆様のお帰りをお待ちしております」

(たま)にはお前も来ればいいのに…」

「いいえ、殿下。そう言う訳には…」


「それじゃいっそ、サディアスさんも女装しちゃえばいいんじゃありません?」


「………は?」

「何故そうなった!」

 呆気に取られるサディアスさんと、顔を引き攣らせる勇者様。

 やっぱり勇者様は順応性と反応速度がぴかイチ☆です。

「いや、ほら。勇者様の従者だから出られないとか言うんなら、従者じゃない別身分になり済ましちゃえ☆とか思いまして」

「それで何故女装!?」

「楽しそうだから」

「面白そうだから」

「嫌がる様を見て笑いたいから?」

「リアンカもムーもまぁ殿も趣味が悪すぎる…! 特に、まぁ殿!」

 口々に答える、私達。

 苦悩する勇者様。

「伝統的に脳筋と愉快犯の多い種族の王様が、趣味良いとでも思ったんですか?」

「ある意味、良い趣味してると自負しているがな」

「ある意味って枕詞が意味を真逆に持って行ってるけどね」

「く…っ 魔境の住民め!」

「わーお、一緒くたに一纏め!」

「まあ、それぞれ種族がばらばらなんだから仕方ないんじゃない?」

 そうですね、言われてみれば結構種族がばらばらです。

 私:人間。

 まぁちゃん、せっちゃん:魔族。

 ロロイ、リリフ:真竜族。

 むぅちゃん:半魔。

 わあ、考えてみれば私以外みんな人外だ!

「………人間のリアンカが一番厄介ってどういうことなんだ!」

「勇者様ったら、何気なくすっごく失礼ですよー?」

 まあ、言わんとするところは分かりますけれど!


 サディアスさんの女装も楽しいかと思ったんですけどね…

 本人から、仕事がありますから舞踏会への出席は考えていませんと断られてしまいました。お仕事があるのなら、仕方ありませんね…

 これが勇者様なら無茶振りできるけれど、サディアスさんには居心地よく生活環境を整えてもらっているので、仕事を盾に出されると強く出難いのが本音です。

 私達はそのままサディアスさんに急かされて、それぞれ着替えに掛かりました。

 今回は妖精さんにぱっとドレスを着せてもらう訳にはいきません。

 今日は、持参のドレスを着用すると決めていたからです。

 せっちゃんは柔らかな若紫の、黒いレースと小粒のダイヤを配したドレス。

 若々しく幼くも見えるせっちゃんだけど、シックな印象の衣装がいつもより大人っぽく見せています。

 ドレスの型自体は常の物とあまり変わらず、体の線に沿ったものですけれど…この体型丸出しの衣装は、せっちゃんの華奢さを際立たせて儚く見えるほどです。

「あれ? 今日はインナードレス、着ないの?」

「はいですの。正式な席では、着ないものですのー」

「ああ、そういえばそうだっけ…」

 わあ、超危険☆

 本来、せっちゃんの着用しているドレスの型は腕も足も出さないけれど、胸元の露出は過激という意味のわからないものです。そこをドレスの下に薄物(インナードレス)を着用することで、胸元とかおへそとか隠してたんですけど…

 正式な場では、ドレスも正式なデザインで着こなすもの。

 魔族って、基本は露出過多だから…


 せっちゃんのドレスは胸元ががっぱりと開いていて、巨乳だったら際どいことになっていたと思います。

 胸の真ん中からおへそが出るまで切れ込みが続いていて…

 わあ、せっちゃんの白くて可愛いお腹が!

 出てる! 出てるよ! おへそがチラリズム!

 ……………似合うよ。似合うけど、ね。

 これは………変質者に気をつけないといけないレベルです。

 うん、犯罪を招きそうな気がする。

 舞踏会に幼児性愛者(ロリコン)が紛れ込んでいたら超危険ですね。


「……………勇者様、何か大きいブローチと羽織物貸して」

「ああ、持って行くと良い。使うと良い」


 勇者様も、まずいと思ったんでしょうか。

 私の意図するところを察して下さったんでしょうね。

 薄絹のショールと、それに合うデザインのブローチを出してくれました。

「リャン姉様?」

「………」

 そして。

 私は無言でせっちゃんにショールを被せ、そのまま前にぐいぐいと引っ張り、勇者様に借りたブローチで位置を調節しながら留めたのでした。

 そう、せっちゃんの可愛いおへそが、衆目の目に晒されないように!

 まぁちゃんは私に慎みがどうのと時々口にしますが…それより、魔王家の姫君伝統のドレスを、もうちょっとデザイン改革した方が良いと思うんだ。

 魔族は薄着露出過多な衣装が伝統なので、服装の露出度的な部分への基準が緩いというか、甘いというか…

 せめて、魔境以外の場所に出る時なんかは…さ、警戒しようよ……。

 ………せっちゃんも変態如きにどうこうされるような、弱い子じゃないけどね。


 さて、せっちゃんの衣装は大変危険でしたが、何とかブローチの活躍で難は脱したような気がします。油断は出来ませんが、一先ずはこれで良いでしょう。

 ですが魔境基準の衣装は、他所だと浮く事実に今更漠然と不安が。

 これが魔境なら、それが普通なので気になりません。

 でもちょっとこの人間の国だと、目立ちすぎるかなぁと。

 ………うん、不安。

 もしかしたら他の連中もやばくないかと、私はちょっと見回しました。


 視線に留まったのは、子竜達です。


「…あれ、その衣装どうしたの?」

「王族の集まりに行くのなら、と。お爺様方が持たせて下さいました」

「爺さん達、ちょっと堅苦しすぎなんだよ」

「でも折角持たせてくれたんだから、着た方が喜ぶし」

「リリフも、融通利かせれば?」

 どうやら子竜達には、真竜の古老達が持たせた衣装があったようです。

 本性は竜とはいえ人の姿を取れるので、独自の民族衣装めいた衣服があります。

 それに、それ相応の場所で着る正装も。

 ロロイは面倒がっているみたいだけど、どうやらリリフが押し通したみたい。

 汚れ破れを一切気にしない普段着とは別の衣装を身に纏っていました。

 薄い金属板(プレート)に装飾を施した印象の、儀典礼用っぽい鎧。

 その上に、ひらひらした衣装と短いマント。

 幅広の長い布を巻きつけたような感じだけど、ところどころに金属板(プレート)を使った装飾が入っています。

 衣装を止めるブローチ代わりでもあるのでしょう。

 宝石が象嵌され、彫刻の施された精緻な金属板だけど…

「これ、誰がつくったの?」

 正直、細工が細かすぎて大雑把な竜が作ったとは思えません。

 そもそもあの大きな体では、小さすぎてこんな細工無理でしょう。

「デザインだけして、魔境妖精郷(アルフヘイム)に発注したって言ってたけど」

「完全受注生産!?」

 妖精の技術力は、総じて高いけど…報酬もお高いんですよね。

 この衣装、結構凝ってるし。

 うん、絶対に高い。

 竜は財宝を溜めこんでるものだけど、妖精もそれを知ってるはずだし。

 妖精って、相手がお金持ってると思うと平気でふっかけてくるんですよねー…

 浮世離れしている癖に、こういうところだけやけに俗っぽい種族です。

 いや、郷を迷宮(ダンジョン)化させる時点で、十分に俗っぽいか………

「大事に着てあげなさいね」

「まあ、贈ってもらったモノは大事にするけど」

 この衣装だけで、たぶん凄く高いから。


 着る物に頓着しないむぅちゃんは、また今回も借り物衣装。

 勇者様のお下がりという、ある意味とっても豪華な衣装を身に纏っています。

 でも勇者様に合せて作られているせいか、微妙に似合わない…

 サディアスさんが無難な物を選んで着せてあげたらしいけれど、微妙に似合いません。オーダーメイドはこういうところが融通利かないんですよねー。

 そもそも似合う色からして、違いますからね…。

 勇者様は白とか青とか、そういう色が似合います。

 でもむぅちゃんはどっちかというとオレンジとか、暖色系が似合う。

 今日の衣装は灰色のシャツに銀色の装飾が入った上下とシックな感じですけど…なんか、違うんですよねー………

 首を捻ってみていたら、本人も自覚していたのでしょう。

 むぅちゃんは勇者様の衣裳部屋をごそごそとあさり、やがて大判のストールを引っ張り出してきました。

 色は金色の線が入った赤。

 勇者様にしては派手な感じですが、ストールですからね。

 衣装のアクセントとして使用する限りなら、そういう小物も使うでしょう。

 むぅちゃんの今の衣装には、ちょっと雰囲気が違いましたけど。

 でも本人は、そのストールを自分にまきつけて満足そうな顔をしています。

 本人が納得しているのなら、それでいいのかな?

 

 さて、借り物衣装といえば。

 人間の国にやってきて以来、勇者様の衣装を借りていることの多いまぁちゃん。

 彼は、今日はどうするのかな?

「まぁちゃんは今日、どうするのー?」

 まさかの自主ドレスじゃないよね?

 ちょっとだけそわそわしながらまぁちゃんの顔を覗き込んでみると、そこには面倒臭そうなまぁちゃんの顔。

 うん、いつも通りに平常運転中のようです。

 まぁちゃんは気怠げに髪を掻き揚げ、思案顔。

 どうするつもりなんだろ?

「んー………これでいいだろ」

 そう言って、おもむろに指パッチン!

 瞬間、まぁちゃんの影から闇がびゅるっと過激に飛び出してきました。

「お、おわぁ…っ!? なんだ!?」

 勇者様が超びっくり。

 立体的に具現化した闇は薄く薄く広く延び、まぁちゃんの体を一瞬で包み込んだかと思うと…ぱっと、花が風で散り乱れるように、千々に乱れて散り消えました。


 闇が消え去った後、そこに立っていたのは。


 さあ、てっぺんから何がまぁちゃんを飾り立てているのか言ってみましょう!

 まず、頭!

 そう、まぁちゃんの白銀の艶やかな髪に覆われた頭を飾るのは…

 

 王冠です。


 見紛うことも有り得ない、王冠です。


 黒く艶を見せる魔性のダイヤ。紅く輝く鋼の補強。

 象嵌された黒と紫の宝石は、王冠に埋め込まれるだけでなく、小さな玉を鎖に繋いで沢山吊るしています。

 それらが擦れあう度に、鈴の音のような涼やかな音がしました。

 黄金ではなく、敢えて維持に手間のかかる銀の鎖。

 王冠から伸びる鎖はまぁちゃんの白銀の髪に絡み、結われることなく垂らされた白い髪を彩る飾りになる。

 まあ、まぁちゃんの髪も白銀なら、鎖も銀色なので同色系統でそこまで目立たないんですけれど。そもそもまぁちゃんの髪の毛自体が、それそのものが飾りであるかのような輝きっぷりでしたからね。

 うん、髪の毛も鎖もどっちも綺麗。でもなんか溶け合って見えます。

 辛うじて、鎖に繋がれた宝石のチャームがアクセントとなって、揺れる度にちらちらと輝きを散らし、目立っています。


 それから次に、そのご尊顔。

 麗しき白皙のお顔には、額と左頬に魔王家伝統の模様がお化粧されています。

 せっちゃんの額にあるような簡略版じゃなくって、正式版の複雑怪奇で範囲の広い、仰々しい模様。

 全体的に見ると禍々しい模様なのですが、部分的に見るとちょっと可愛いかも?

 なんとなく、花のような形にも見えます。

 青味を帯びた薄墨色で描かれており、不思議な光沢を放っています。


 首元にはいつもの頸環(トルク)よりも幅広の、首全体を覆うような金属の飾り。

 王冠とそろいになっているのでしょう。

 あしらわれた装飾も、埋め込まれた宝石も同じもの。

 似たようなデザインは、明らかに対とわかります。

 それ以外にも腕や足にはめた幅広の環も、よく見ると揃いのデザインのようで。

 でもそれ以外にも、ジャラジャラと鎖の輪やら宝石のはめられた金属環やら、硬質な輝きを宿した宝飾品でじゃらじゃらと飾り立てられています。

 うん、豪華。

 

 衣装はやっぱり魔族らしく、肩が大きく出ています。

 引きずる長さのマントすら、肩より下の位置に留められているのですから徹底的です。そこまでして肩を出したいのでしょうか。

 基本はローブを崩したような形で、でも絢爛豪華なデザインよりも動きやすさを優先するところが魔族っぽい。

 足には大胆な切れ込み。

 何重にも色合いの違う細帯で結ばれた腰も、飾り帯びの垂れた部分は動きを阻害しないように結び位置が工夫されています。幾重にも布の重なった重そうな衣装であることは確かなんですが、そこかしこに実用性を優先した部分が垣間見えて、ああやっぱり戦う種族の王様なんだなぁと再認識です。

 手足や首の環も、美しい品ですが防具としての実用性が加味された品ですしね。


 そんな、黒く黒く黒尽くめ(しかし紫と白の差し色あり)でありながら豪華に美しく、しかしそれよりも『戦いやすさ』を優先した、その衣装。

 普段、略式正装ばっかりでどこか簡略化した衣装を愛用している、まぁちゃん。

 私の記憶が確かなら、アレってまぁちゃんが戴冠式した時に来ていた衣装と同デザインのような……… 


「ま、魔王様だ…魔王様が顕現なされた」

「いや、俺元から魔王のまぁちゃんだからな?」


 魔王と呼ぶしかない、そのお姿!

 見事に積み重ねられた漆黒の、麗しさすら感じさせる艶。

 うん、魔王のまぁちゃんフル正装ver.がいました。


 勇者様がまぁちゃんのお姿を見て、盛大に頭を壁に打ち付けた!

 わあ…☆

 ………がぁんって、面白いくらいに音が響いたんですけど。


 壁には、勇者様の頭の形に陥没した跡が残されていました。

 そして、もはや恒例といっても良い、いつものパターンですね。

 さん、はい♪


「あ、あ、あほかぁぁぁああああああああああああああっっ!!!」


 勇者様渾身のツッコミが、まぁちゃんの後頭部に命中→炸裂しました。

 その手に握られているのは、例のハリセン。

 紙製の癖に、身に纏わせた紫電…

 ………だけでなく、紅蓮の炎と鎌鼬がまぁちゃんに襲い掛かります。

 …まぁちゃんの魔力に、弾き飛ばされましたけど!

「おいおい勇者? 着替えただけだってのに何すんだよ」

「まぁ殿こそ、その格好は一体何のつもりだ!?」

「いや、舞踏会だろ? それ慮って正装してやったんじゃねーか」

「さも親切そうな顔して、それ嫌がらせだろ! 嫌がらせだろう!」

「人聞き悪いな、勇者? 人がせーっかくおめかししてやったってのに」

「そんな「おっすオレ魔王☆」みたいな魔王感全力全開な衣装で、人前に出せるわけないだろうがぁぁああああっ!! 会場が大騒動になるだろう!!」

「おっすオレ魔王☆」

「わあ、勇者様もセンスが磨かれてきましたねー…魔境式に☆」

「勇者さん、みんなと仲良し♪ですのー!」

「悠長なこと言ってるけど、本気でその格好での出席は有り得ないからな!?

何でいちいち、自分から正体暴露しようとするんだ!」

「勇者、人間正直に生きた方が得だぞ?」

「まぁ殿は人間じゃないけどな!」


 結局、まぁちゃんのフル正装ver.は、勇者様の全力で阻止されました。

 勇者様も私達の扱いをわかってきたんでしょうね…

 既に見たことのあるネタよりも、新鮮なネタ。

 そう、勇者様は私達に新たなネタを提供してきたのです。


「………それよりも、なあ。まぁ殿はいつも黒尽くめだけど…こんな時くらい、本気で真っ白になったいつもとは逆ver.のまぁ殿を見てみたいとは思わないか?」


 正直に言います。

 勇者様のその言葉で、好奇心がくすぐられました。


 勇者様の衣裳部屋にある衣服は、殆どが白とか青とか寒色系の色合いや清潔感のある色合いの衣装ばかり。

 まぁちゃんはその中から、少数派の黒っぽい服を引っ張り出して着ていました。

 勇者様がそんなまぁちゃんに、と提示してきたのは…

 アクセントに紫のタイや飾り宝石がある以外は、全身が白い礼服。

 合わせた装飾品も、いつもはまぁちゃんが見につけない清々しいデザインで。

 まぁちゃんが黒いのはいつものことで、正装はもう見られない訳でもないし。

 でも魔境で白いまぁちゃんなんて、そうそう見られません。

 好奇心に負けた私と、せっちゃん。

 二人がかりでまぁちゃんにお願いお願いとお強請(ねだ)りして、勇者様の目論見通りではありますけれど。

 世にも珍しい、白魔王様という珍妙な存在を演出させてもらっちゃったのです!

「お、おお…新鮮ですね」

「新鮮、ですのー」

「着ておいてなんだけどさ、違和感すっごいんだけど…俺」

 まぁちゃんは超絶美形なので、どんな服でも似合います。

 白い衣装だって、勿論物凄く似合っています。

 ただ、本人は…まぁちゃん自身は、物凄く微妙そうなお顔をしておりました。



 みんなも順調にお着替えが完了しつつあるようです。

 こうなったら、そろそろ私も着替えないといけませんね…

「とうとう、これを着る時が来ましたか…」

 荷物の中から引っ張り出して、ぴろんと広げて僅かに溜息。

 目の前に広がるのは、私が村から持参した衣装。

 といっても、一度も袖を通したことのない代物です。

 田舎にいたら絶対に着ない、というか着る機会のない代物。

 ドレスです。

 めちゃくちゃ、ドレスです。

 髪色が強すぎて、似合う色が結構限定されてしまう私。

 普段は髪色に合わせて、暖色系の服を着ていることが多いのですが…

 これは去年、贈り物として作ってもらった衣装。

 いつも似たような服ばっかりだから、(たま)には冒険してみろよ、と。

 まぁちゃんのご両親が16の誕生祝にくれた品です。

 ………引退したとはいえ、元魔王夫妻が用意してくれただけあって、物凄くお金が…いえ、資金がかかっていそうなドレス。

 着るにも、物凄く勇気のいる一品です。

 色合いは私の髪色に合わせても違和感のない紫から、足元に行くにしたがって鮮やかな青へとグラデーション変化していくのが特徴的。

 殆どの面積は青が占め、青を基調にしたドレスです。

 ………青いドレスとか、あんまり着た覚えがありません。

 これを着用するのは、本当に色々な意味で冒険かもしれない…。





勇者様はもういっかな、と思いつつ。

リアンカちゃんのくわしい衣装描写は、要望があれば次回にでも。

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