「わが国は赤くない」ブラジル代表ユニホーム、青から赤への変更情報で論争 政治色帯びる

ブラジル代表が青ユニホームと決別か。写真は中心選手として期待されるFWネイマール
ブラジル代表が青ユニホームと決別か。写真は中心選手として期待されるFWネイマール

サッカーのワールドカップで最多5回の優勝を誇るブラジル代表「セレソン」のユニホームを巡り、同国で議論が巻き起こっている。SNS上などでリークされたアウェイ用が青から赤に変わっているためだ。青はW杯初優勝を果たして以来のブラジルの伝統。愛着に加え、左派ルラ大統領に対する政治的反発からも「われわれのチームのシャツは赤くはならない」という声が上がる。

代表やクラブチームの新ユニホームを発表前に報道することで知られる「フッティー・ヘッドラインズ」がリークしたアウェイ用ユニホームは赤一色。サッカー連盟とサプライヤーであるナイキのロゴが黒色で刻まれている。

伝統ある青のユニホームは「サッカー王国」ブラジルで神聖な意味を持つ。1958年のW杯スウェーデン大会で当時17歳だったペレやガリンシャら歴代随一のメンバーが「悲願の初優勝」を果たした決勝で着用していたからだ。伝統を重んじるファンの反発は強い。元代表選手らからも「愚策」「もはや犯罪だ」「過去の歴史への侮辱」と非難を招いた。

加えて、政治的な思惑から反発する勢力もある。右派で投獄の危機にあるボルソナロ前大統領を支持する人たちの鼻息が荒い。「シャツもこの国も赤くはならない」。後任を狙う南東部ミナスジェライス州のロメウ・ゼマ知事はそう言って、模造品の赤シャツを地面に投げつけた。

現政権を担うルラ大統領は左派。赤は米国などを除き、左派をイメージさせる色であり、ユニホーム論争は「政争」の色合いも帯びてきた。一方で左派の側からは「これまでホーム用ユニホームのカナリア色を政治利用してきたのは右派だ」と反撃する声も出ている。

ユニホームを巡る論争が過熱する中、ブラジルのサッカー連盟は4月29日、リーク情報を否定。「サプライヤーのナイキとはデザインで合意はしていない」と火消しに追われた。

一方、ブラジルのサッカー連盟には、現状をなんとか変えたいという思いも透ける。セレソンが最後にW杯で優勝したのは2002年の日韓大会。次回大会では24年ぶりの優勝を目指すが、もしも逃せば、過去最長は1970~94年の24年間を上回り、史上最も栄冠から離れた不遇の時代がやってくる。

ユニホームの色の変更は、単純な商業主義か、不退転の覚悟を示す覚悟か。世界で愛されるセレソンだけに、ユニホーム論争の結末に関心が集まりそうだ。

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