山口県の下関くじら食文化を守る会(中尾友昭会長)が、クジラに関する普及啓発用DVD「下関くじら物語~過去 現在 そして未来へ~」を製作した。南極海捕鯨の基地として戦前・戦後にかけて栄えた下関ならではのクジラにゆかりの深い施設や場所の昔と今をビジュアルで紹介するとともに、昨年3月に建造された下関を母港とする捕鯨母船「関鯨(かんげい)丸」への期待も込めた作品に仕上げている。
県の鯨肉消費拡大鯨文化継承推進事業の補助金を活用する形でDVDの製作を手がけ、今回が第4弾。最初は小学校向けに歴史・文化、第2弾は中学校向けに産業、第3弾は大学生の視点で下関と長門両市のクジラとのかかわりをテーマにこれまで作ってきた。
「原点に返る」とした最新作では、下関のクジラに関する歴史・文化の過去と現在を改めて振り返った上で、「クジラの街・下関がこれからも新たな歴史を刻んでいく」とする未来へのメッセージを約8分の映像にまとめた。守る会の理事で、クジラを研究する下関市立大の岸本充弘教授が企画・監修に当たった。
明治末期や大正時代から、下関がクジラ産業で一番にぎわったとされる昭和30年代にかけて撮影されたモノクロ写真が紹介され、捕鯨船「第二十五利丸」の進水式や、シロナガスクジラをイメージした旧下関水族館の施設「鯨館」、大きなクジラのネオンサインが掲げられた社屋、多くの人でにぎわう祭りの光景などが目を引く。
現在の様子も一緒に伝えているほか、日本の商業捕鯨としては約半世紀ぶりにナガスクジラを昨年陸揚げした関鯨丸の船団についても触れており、鯨肉の消費拡大への関係者の思いがにじむ。
100枚を製作し、このうち20枚を下関市へ寄贈。中尾会長らが市役所を訪れ、前田晋太郎市長に手渡した。市立の図書館で視聴できるようにするほか、会の要望を踏まえて市内の公共宿泊施設に置くなど特に観光分野で活用していく。
中尾会長は「市民も見たことがないような過去の建物などが多く出てくる。クジラの街としての当時のにぎわいを再確認し、自信を持ってもらえれば」と話した。
(石田晋作)