「心の糧」は、以前ラジオで放送した内容を、朗読を聞きながら文章でお読み頂けるコーナーです。

「今日の心の糧」のお話しをメールで配信しております。ご希望の方はこちらからお申し込みください。

(月~土)毎日お話が変わります。

Audio Player
▲をクリックすると音声で聞こえます。

坪井木の実さんの朗読で今日のお話が(約5分間)お聞きになれます。

希望のしるし

片柳 弘史 神父

今日の心の糧イメージ

 カトリック教会は、25年ごとに「聖年」と呼ばれる特別な年を定めている。25年の節目ごとに神からの恵みを改めて思いおこし、神との結びつきを深める特別な年。それが「聖年」だ。

 今年は2025年で、ちょうどその節目に当たっており、全世界のカトリック教会で「聖年」が祝われている。

 今回の「聖年」で特に世界を驚かせたのは、バチカンが今回初めて、「聖年」の公式マスコットを発表したことだ。黄色い雨合羽を身にまとい、泥だらけの長靴を履き、杖を持って旅をする「ルーチェ」という名前のかわいらしい女の子で、彼女が「希望の巡礼者」なのだという。

 「ルーチェ」が苦労しながら旅を続けていることは、雨合羽に長靴という姿からよくわかる。冷たい雨にも負けず、泥だらけの悪路にも負けずに、神という希望を目指してひたすら巡礼の旅を続ける「ルーチェ」。その姿は、まさに「希望の巡礼者」と呼ばれるにふさわしい。

 「ルーチェ」の姿を見るとき、不思議なことに、わたしたちの心にも希望の火がともる。神という希望にたどり着くために、あらゆる困難を乗り越えて旅を続ける若者の姿は、それを見る人を、「よし、わたしも頑張ろう」という気持ちにしてくれるのだ。希望を求めて旅をする若者自身が、わたしたちにとって希望になる。そういってもいいだろう。

 「ルーチェ」に触発されたわたしたちが、神という希望、平和や一致、和解という理想を求めて人生の旅を歩み始めるとき、今度はわたしたち自身が、周りの人たちにとって希望となるだろう。希望を求めて旅をする人の周りには、希望の輪が広がっていくのだ。多くの人に共有された希望は、やがて現実となって姿を現すに違いない。わたしはそう信じている。

 

 *写真提供:片柳弘史神父