「一度も恋愛したことがない20代男性46%」は決して「若者の恋愛離れ」によるものではない

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
写真:アフロ

恋愛強者3割の法則

昨今の婚姻減は「若者の恋愛離れ」や「草食化」などではないという話は当連載でも何度もお伝えしてきた。それは国の基幹統計でもある出生動向基本調査でも明らかである。

1982年から2021年にかけて18-34歳の独身男女の「恋人がいる割合」というのは、大きな意味でほぼ変わっていない。多少の上下はあっても、男女合計では大体3割程度である。

注目したいのは、1980年代はまだ皆婚時代でもあり、世の中はバブル景気に浮かれており、恋愛至上主義時代ともいわれていた時代だったが、その当時の「恋人のいる割合」は男女とも2割強でしかなかった。男性に関して言えば、昭和も令和もほぼ一緒である。

統計としては1982年からだが、それ以前もこんなものだったろう。

つまり、いつの時代も恋愛相手がいる割合はせいぜい3割程度なのだ。これを私は「恋愛強者3割の法則」と名付けている。

逆にいえば、婚姻数が激減しているのは、決して「若者が恋愛していない」からではなく、恋愛の割合は同じなのに、40年前までは皆婚できて、今はなぜ若者が結婚できなくなっているのかという点に着目すべきなのである。

もっと言うなら、この40年間で恋愛率が上昇したのは、1990年代から2005年にかけてである。これは就職氷河期と合致する。婚姻数が増えず、結果として第三次ベビーブームが起きなかった頃で、今に続く「少子化の原点」の時代でもある。あの当時の若者は、恋愛はできても結婚ができなかったというわけである。

まとめると、80年代は「恋愛できなくても結婚できた」、90年代から2005年までは「恋愛できても結婚できなかった」、そして現代は「恋愛も結婚もできなくなった」と言えよう。

恋愛経験が一度もない割合

さて、上記は「恋人がいる割合」であって、「現在恋愛中の割合」である。

現在、恋愛中ではなくても今までに恋愛を経験した者はいる。そして、今まで一度も恋愛したことがない者もいる。これも法則性があり、恋愛中3割、恋愛経験ありだが今相手がいない4割、一度も恋愛したことがない3割となる。言い換えれば、恋愛強者3割、中間層4割、恋愛弱者3割となる。

しかし、これは、34歳までの全体の数字であり、20代、30代と年代別には多少異なる。

以下は、年代別に「一度も恋愛経験のない割合」を2013年から2023年の時系列に示したものである。

2023年だけを取り出すと、20代男性46.0%、女性29.8%と10年間の中で最高で、これだけを見れば、「若者の恋愛離れ」などと言われても納得してしまうかもしれない。または「コロナ禍で若者の恋愛ロックダウンの影響」などと説明されればそうかもしれないと思うかもしれない。

しかし、2013年も20代男性44.3%、女性28.1%とたいして違いはない。少なくともコロナ禍などは関係ないことがわかる。むしろ、20代男性に限れば、コロナ渦中の2021年がもっとも低くなっている。

20代までに恋愛できないと…

だからといって、以前とたいして割合は変わっていないのだから何の問題もないとは言わない、ポイントは、20代から40代にかけての「恋愛未経験率=未恋率」が、2013年では年齢を重ねるごとにそれなりに減っていったものが、2023年ではほぼ変わらなくなっている点である。

特に、男性20代と30代は2021年以降ほぼ一緒である。つまり、これは、20代までに恋愛を経験しなければその後恋愛する機会がなくなってしまうということを示唆している。

事実、婚姻減のほとんどは20代の減少である。奇しくも20-30代の児童のいる世帯を比較すると、大幅に減少し始めたのが2013年以降である。

グラフはこちら参照→「配らなくていいから取るな」政府の現金給付が国民から総スカンのワケ

20代で恋愛を経験しなければ、その後恋愛することもなく、そのまま30代も恋愛童貞となってしまう

これを恋愛力の欠如や恋愛離れと見るのは間違いで、20代のうちに「恋愛をする余裕がない」と見た方が正しい。しかも、その余裕のなさは経済的なものである。

国民生活基礎調査によれば、20代の若者が抱える経済的不安割合は2013年50%(50%も十分高いが)だったものが、2023年には73%と20ポイントも上昇している。

グラフはこちら参照→20代若者の経済的不安の解消こそが少子化対策であるのは明白なのに「とぼける人たち」

不本意未婚が5割

どんな不況になろうとも、3割の恋愛強者は恋愛をするし、勝手に結婚していく。ここは放っておけばよい。また、恋愛未経験の中にもそもそも「恋愛や結婚に興味ない」層も1割程度含む。ここも無理に恋愛や結婚を強制する必要もない。

しかし、「恋愛はしたことがあっても結婚に結び付かない」中間層4割のうちの半分の2割と「恋愛や結婚もしたいのにままならない」20-30代弱者層4割のうちの3割、合わせて5割が不本意未婚となっていることは間違いない。

グラフを見ると、男性は30代から40代で随分と恋愛未恋率が減っているように見える。これは決しておじさんがモテるようになったわけではない。むしろ、30代まで恋愛未経験な層が頂き女子系などに翻弄されて「恋愛している」気になって貢いでいる(騙されている)だけかもしれない。

提供:イメージマート

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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