金持ちレズ女はニコに付き纏う   作:──

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「お支払いの時間よ!ニコ!」

 

三回目の支払いの日。

ニコと約束した通りの時間にレイアは現れた。

過去二回の支払いは本当に会話をしただけで終わった。

しかもニコを何処かに連れ出すこともなく、邪兎屋の面々に見つめられたまま。

彼女は黙って考えるニコに

 

「えっと……急用が入った?それなら、日を改めるけれど……」

 

と、少し悲しそうな目でニコを見つめている。

………………窓から。

 

「アンタが前回に続いて変な場所から出てくるから、この地域の治安官の質を疑ってたのよ」

「この地域の治安官さんとは仲がいいから、私のことを理解してもらって見逃してもらってるの。そう、これは愛!愛のためなんだから!なんの罪もないのよ!」

「愛でもなんでも、窓を開いて入ってこようとするヤツは立派な不審者よ!」

「いいえ!愛の前では全てが許されるの!」

「ンな訳ないでしょ!ああもう埒が開かないわ……はぁ、とりあえず始めましょ?今日は何を話したいの?」

 

そういうと、レイアは窓の外で器用に靴を脱ぎ、持ってきていたらしいビニール袋にそれを突っ込んで、お邪魔しますと言いながら窓枠を跨いだ。

そして、いつもよりさらにニコに近づこうとして、アンビーがそれを止めた。

 

「そこまでよ。まだ、あなたの疑いは晴れ切ってない」

「疑い……?お話はただのお話だし、お金だって渡したでしょ?」

「そこじゃない。──なぜあなたは私たちの事務所の場所を知ってるの?」

「……あ」

 

ニコが、それを忘れていたと表明するかのような声を出した。

 

「……そんなもの、決まってるでしょ?」

 

レイアは、ニコが初めて会った日に見たのと同じ、奇妙に口角が釣り上がり、今にも口が耳元まで裂けてしまいそうな不気味な笑みを浮かべた。

 

「愛、よ」

「理由になっていないわ」

「……乙女には、一つ二つの秘密があった方が魅力的って聞いたわ」

 

アンビー相手には一切質問に答えないレイア。

睨みつけるアンビーと不気味な笑みに敵意すら載せ始めたレイアの間には火花が散っているような錯覚すらあった。

しかし

 

「教えて頂戴」

「いっぱいお金使ってぇ、情報を買いまくりましたぁ♡」

 

ニコが質問した途端、先ほどの笑みは鳴りをひそめて猫撫で声で即答する。

 

「……いくらかけたのよ、ソレ」

「ざっとこのくらい」

 

レイアは、すっと三本指を立てる。

 

「三十万……?」

「億だよ、三億」

「……ハァ!?」

「情報を出し惜しむとか、されたくなかったから。ニコに関する情報を全部言い値で買ったの。あとはちょっとした推理ゲームをしてここを探し当てる簡単なお仕事だったわ」

「い、言い値って……バカなの?」

「あなたと会うためなら、それくらい端金ってこと。……それくらい、あなたのことが好きなの、ニコ」

 

冷や汗を流すニコにさらに詰め寄るレイア。

 

「ね?わかったでしょ?私はあなたの為ならいくらでもお金を渡せるのよ?私をそばに置いて、悪いことなんてないでしょう?」

「え、えっと……前向きに、前向きに検討しておくわ!」

「──今日はそれで許してあげる。急がば回れってやつよね、愛を育てるには時間が必要なのよね」

 

そう言って、邪兎屋の事務所のソファに座ったレイアはぽんぽんと自分の隣を叩いて、ニコに座れと促す。

一瞬の躊躇いの後、ニコはその誘いを受けることにした。

レイアの隣に座るニコと、それを注意深く見つめるアンビー、それを少し慌てたように見つめながらも黙り込むビリー。

妙な緊張感に包まれながらも、ニコとレイアの会話はスムーズに進んだ。

いくつかの会話の後、ニコは最も気になっていた疑問を彼女に問う。

 

「三億が端金って、アンタの懐にはどれだけのディニーが詰まってるワケ?」

「詳しくは数えてないんだけど……、やろうと思えば今のTOPSから、一企業を引き摺り落として、私個人がTOPSに入り込む……なんてことができちゃうよ」

「……へ?」

「そこまでのことができる怪物を、あなたは手懐けたの。……ねぇ、何が欲しい?何がしたい?私に教えて」

 

レイアはニコの手を握って、その手に自らの指を絡める。

 

「あなたが私に願って、この手を握り返してくれるなら私はなんだってするし、なんだって用意してあげる。……ねえ、何が欲しい?」

 

ニコは、こちらを覗く底が見えない瞳に吸い込まれるような錯覚を覚えた。

そして、全てを叶えると言った彼女の手をニコが握り返そうとしたその時、五十分の経過を知らせるアラームが鳴った。

 

「──また今度ね。……!そういえば、ニコは硬貨が好きだったわよね。また明日、待っていてね。サプライズを用意しておくから」

 

何かを思いついたらしいレイアはそう言うと、最後にニコの掌に謎の紙切れを握らせて慌ただしく去っていった。

あまりの唐突さに呆然とするニコの掌からこぼれ落ちた紙切れを拾ったアンビーは

 

「ニコ、これは小切手よ」

 

アンビーがニコへ見せたその紙は確かに小切手であり、そこには燦然と輝く『五百万』の文字が

 

「なっ、ななな……何よコレ─────!!!」

 

ニコが自身の内側で金銭感覚が壊されていく音を聞いたのは、きっと聞き間違えではないだろう。

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