金持ちレズ女はニコに付き纏う   作:──

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金持ちレズ女はニコに付き纏う

少女は天涯孤独だった。

彼女の両親を凌駕する商才を遺憾無く発揮し、成人する頃には彼女の両親が生涯で手に入れた全額を上回るほどの大金を手にした。

彼女の両親は、そんな彼女に世話は必要ないだろうと踏んで成人よりも前に彼女に自由を与えた。

 

『……お前は商売でもそれ以外でも頂点に登り詰めることのできる器だ。こんな家に留まらず、お前のやりたいことをしなさい。この世界はお前の思うままだ』

 

そう言った父の言葉通り、世界のほとんどのことは彼女の思うままだった。TOPSの一角を脅かせるほどの金、エーテリアスと戦うための力、自身の手足となる者たち、その全てが彼女の望む通りの場所にあった。

そうして、彼女が泥のような安寧と退屈な中で過ごしていたある日のこと。彼女はとあるホロウレイダーに依頼をした。

 

《ホロウの中を見たい、歩きたい。そのための護衛をして欲しい》

 

彼女の中の退屈を壊すための、暇つぶしのつもりの依頼だった。

しかしホロウの中は退屈で、思ったような暇つぶしにはならなかった。

だが、ホロウから出たすぐ後のこと、ピンク髪のホロウレイダーが彼女に言った。

 

「……わかってないようだから教えておくけど、今日アンタが提示してあたしに払ったのは相場の二十倍の値段よ。──わざとなのか、それとも罠かって思ってたけど……その顔を見るに、本当にわかってなかったのね?次からは気をつけなさいよ」

 

数秒間の沈黙の後、ピンク髪のホロウレイダー、ニコは比較的親切な忠告をしたはずの雇い主の顔が、どんどんと赤くなる様を見て、それは怒りか羞恥だろうと思った。

だがしかし、顔が赤くなるにつれて口角が不気味なほどに吊り上がる。

そして、ニコ詰め寄った少女は

 

「……名前を、教えて?」

「ニコ・デマラよ」

「………ニコ、ニコ・デマラ。──私はレイア、覚えてね?」

 

突然詰められた距離に戸惑いつつ、雇い主の女に名前を教えたニコ。

すると雇い主の少女、レイアはまるで自分の中に刻み込むかのようにニコの名前を復唱し、その後自身の名前を教えるとどこからか紙とペンを取り出して素早く電話番号を書いてニコに渡した。

 

「これ、私の連絡先。何か困ったら電話してね。特にお金とか……無料にはできないけど他より絶対にあなたの得になるように貸すから」

「えっと……嬉しいけど、なんで私に?」

「好き」

「……?」

「私を騙したあなたが、私の思い通りにならなかったあなたが好きだから。なんでもしてあげる」

 

その時初めてニコは、彼女の赤くなった頬と、その表情が恋する乙女のそれなのだと理解した。

しかし、それと同時に騙したからという訳のわからない理由で無償の好意を向けられることへの恐怖も感じた。

なのでニコはその日、彼女の言葉を軽くあしらって帰路についた。

しかし……

──────────

数週間後のこと

 

「……大赤字よ」

「どうするの?ニコ」

「……少し怖いけど、一番新しい()()に連絡してみるわ」

 

ニコはあの日もらった電話番号に電話をかける。

電話はどうやら繋がったらしく、一つ目のコールがなり終わるより前に通話状態となったが、相手の声は一切聞こえない。

その時、邪兎屋の事務所のチャイムが鳴る。

 

「誰かしらこんな時に」

 

ニコがドアを開けると、そこにはあの日よりも綺麗な身だしなみのレイアがいた。

 

「呼んだでしょ?お待たせ!私が恋しかった?恋してくれた?好きになった?」

 

扉を開けるとそこにはあの時の依頼主、レイアが満面の笑みを浮かべて立っていた。

扉を開けた途端に満面の笑みでニコの眼前数センチまで距離を詰めて来た彼女に、ニコは彼女の肩を掴んで引き離し、要件を口にした。

すると

 

「……赤字?ふ〜ん、じゃあ……コレをどうぞ!」

 

そこに書かれていたのは、見るだけで頭が痛くなりそうな、理解できるものの脳が理解を拒む文字列。

 

《♡レイアちゃんの!イチャイチャ!?融資コース♡

〜♡ガチ恋女の恋心、思う存分利用しちゃえ♡〜》

 

《①百万ディニーまで:千ディニーにつき一分、私とお話♡

②百万一から一千万ディニーまで:一万ディニーにつき一分私をハグ♡

③それ以上:百万ディニーにつき一時間、私とデート♡

(分割払いも可)》

 

そして、ハートの散りばめられたピンク色に文字の書かれたスペースだけが落ち着いた色合いの紙の一番下に、白い枠の中にピンク色のメルヘンなフォントで書かれた

 

《♡♡♡融資額∞コース♡♡♡

レイアちゃんをあなたのお嫁さんにしてください♡》

 

という文字列を、ニコは見なかったことにした。

 

「……なにこれ」

「私……あなたに恋しちゃったから♡あなたが私に優しくしてくれるだけで、私からお金をあげちゃう♡っていう制度だよ」

「…」

「別に、都合のいい女扱いでも良いよ。でも、()()()()中は私にとっっっても優しいラブラブな感じでお願いね♡」

 

話が通じない。

そう悟ったニコはとりあえず、この融資を受けるか否かを考えることにした。

はっきりと言えば、断る理由がないのだ。

邪兎屋は赤字で、目の前にあるのはほとんど労働を必要としない破格の融資、ニコの選択は

 

「……とりあえず、今必要な五十万ディニー、お願いできる?」

「……!うんうん、すぐに用意するよ!ちょっと待ってね……」

 

ニコの言葉に、爛々と目を輝かせた少女は手元の携帯で何かを操作した。

そして

 

「ニコ、携帯からあなたの口座の残高を見てみて!」

「……?良いけど……ちょっ、なにこれ!?」

「私の口座からあなたのところに振り込んだの。今日は初回サービスで、希望金額の倍を振り込んじゃった♡お支払いは……、時間も考えて明日から十日間、毎日五十分私とお話しでどう?スケジュールが埋まっているなら、後日でも良いよ?」

 

突然口座に振り込まれた百万ディニーに目を向くニコ、そんな彼女を見つめながらレイアは楽しそうに笑って言った。

 

「え、ええ、そうしましょう」

「……あ、その顔──どうせ嘘だと思ってたでしょう?ついでに、その場合それを元にちょっとお金絞れないかな〜とか思ってたでしょ?」

 

玄関口から室内まで後退ったニコを、レイアは

 

「あ、お邪魔します」

 

と行儀よく靴を脱いで、さらに距離を詰めて下から彼女の顔を覗き込む。

 

「これからよろしくね……?ニコ♡」

 

こうしてニコは、レイアという得体の知れない金持ち女と繋がりを持ったのであった。

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