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「日本版Second Life」Meet-Meが再評価されたわけ

この記事は、「真夏の夜の淫夢」ミームに関する内容を取り扱っています。
苦手な方はご注意ください。

Meet-Meとは、2007年にあのフロム・ソフトウェアが制作した”東京を再現した3D仮想空間”を舞台にした日本製のメタバース(生活系コンテンツやアバターに比重を置いたMMO的なゲーム)である。
ニコニコ動画をよくご覧になる方は、「面白いこと以外何でもできるゲーム」という名前で存在を知っている方もいるかもしれない。

しかし、こんなあだ名がついたゲームでありながら運営は9年9ヶ月続き、サービス終了最終日のイベント会場にはのべ2000人以上のプレイヤーがいたほどに愛され、惜しまれるゲームとしてサービスを終了したのだ。

この記事では、2016年2月に起きたmeet-meの魅力の再発見について語る。

なぜ「面白いこと以外何でもできるゲーム」なのか

さて、日本版Second Lifeともてはやされたゲームが、なぜこのような名前で呼ばれることになったのか。簡単におさらいする。

meet-meは、当時過大な期待を寄せられていたSecond Lifeの日本版……ということで、鳴り物入りで宣伝されていたらしい。
ちなみに、「広大な砂場を用意したから、勝手に好きなものを作ってね!」というコンセプトとは、むしろ間逆の設計思想である。
日本人向けに位置関係をリアルに制作した「東京23区」を舞台とし、運営の干渉もきちんと行って猥雑のない、安心安全な空間を目指す……といった具合だ。

しかし、Second Lifeの熱狂が終わったように、企業が仮想空間に進出する意味が薄いと見るやいなや、あとは管理された退屈な仮想東京だけが残されてしまった。
いくらでもコンテンツを追加できるという強みのあった「東京23区を完全再現」した自慢の広大なマップも、「核戦争後の東京」と揶揄されるほど、ほとんどのエリアには”何も”存在しない。ただひたすら等間隔に配置された街路樹と、道路のテクスチャが続くのみである。カーナビ地図から生成されたマップなので、地理や道の太さだけは丁寧に再現されているのがまたニクい。

「動画勢」の誕生

こうして、「よくわからない過疎ゲー」という体でニコニコ動画の”真夏の夜の淫夢”タグに淫夢実況動画が多数投稿されたことにより、「視聴者」という形で、今までこのゲームを知らなかった新規ファンが付き始めた。動画シリーズは淡々とゲームの特徴を紹介するものだったのだが、「かなり自由度が高いのは見ててわかるのに、全く面白そうに見えない」という旨の辛辣なコメントが多数派だった。

↓人気に火の付いた最初の動画。実は同作者のMeet-Me動画は初ではない
↓「つまらない」というよりは、「適当すぎる」ことがよくわかる名作回

人は、あまりにも不評が多いと逆に興味を惹かれたりすることがある。
視聴者たちは、昨日まで名前も知らなかった目の前の地雷に果敢に突撃し、meet-meへの集団入植を開始した。
ちなみに、私の聞いた中でこのゲームをインストールした理由として最も多かったのは、「30分ぐらい笑ってからやめようと思ってた」だった。

「やってみたらそんなにクソゲーでもなかった」期

こうして新規プレイヤーが急に流入したMeet-Meは、独自の文化圏を形成すると共に、そうして流入したプレイヤーの中に「クソゲーだと思ってたけど本当に楽しさを見出してしまった」層を作っていった。
先程も述べたとおり、このゲームの問題点はこのようなものだ。

・壊滅的なチュートリアル不足
・(設定を変えれば多少は軽減される)不親切な操作性
・コンテンツが多すぎる上に複雑で、何をしたらいいのか全くわからない
・始めても他のプレイヤーとなかなか会えない

これらの問題を見るとオンラインゲームとしては確かに至らない点ばかりだ。しかし、「動画からの急激な流入」がこれらの諸問題を一時的に解決したといえる。
チュートリアルやコンテンツの案内は動画が担っていて、動画で解説されていた場所に行ってみたいという動機だけでも始めるきっかけとしては十分だ。あとは動画の通りに楽しめばいいので、不親切なチュートリアルに付き合う必要もない。また、同じような初心者のプレイヤーが周りに沢山いる環境になったことで、操作性に関わる設定についても情報交換が進んだり、分かりにくい操作は丁寧に教え合う文化が生まれた。

一通りの操作に慣れ親しむ頃には、「できることの幅が広いしそんなにクソゲーでもない、クソゲーでもなくない……?」という空気が漂っていたのである。(もちろん、見切りをつけてすぐにやめてしまった人も確実に半分以上いた事を付け加えておく。)

動画とwikiで「攻略」されゆくmeet-me

こうして、完全に冷やかしのためにやってきた人がいつの間にかmeet-me自体を真面目に遊ぼうとするプレイヤーに変化していった。表面上のクソを丁寧に取り除くと、それなりに楽しさを見いだせることが徐々に分かってきたのである。なぜ彼らはこのゲームを「攻略」できたのだろうか。

大量に入植した彼らは、ある意味自分たちのために初心者の教導に特化した新しいwikiを整備していった。(元々存在していたwikiは、情報が古い部分があったり、プレイヤーに基礎知識があるものとして書かれているものが多かった)
しかも、すでに大体のことは動画で紹介されている上に、ゲームへの新規参入者も動画投稿者となることで調査された内容はすかさず動画化されていく。

「視聴者が動画でやりたいことを見つける」

「集団と合流して、互いに手探りで教え合う」

「発見された内容が淫夢動画になり、ブームとしてさらに視聴者が集まる」

「視聴者が動画でやりたいことを見つける」

というループが完成していた。
この傾向は2016年2月から爆発的に広まり、4月には動画としてのブームは過ぎ去り、新規参入者が減り始めた。しかし、なぜか盛り返すかのように5月頃からまた定着した住人が動画を作り始め、さらに新規プレイヤーが増えていった。(ちなみに、私はこの5月に参入している。プレイヤーのたまり場に行くと、多い時は一日30人近くの初期状態キャラが入ってきた記憶がある。)

特に最初期は、「ローンチ直後であまり情報のないゲームを手探りで楽しんでいるお祭り状態」に近いものがあったのではないだろうか。
ぶっちゃけ、2008年開始でもコミュニティの目に触れたのが2016年だったのならば、そのゲームは2016年の新作ゲームなのだ(暴論)
もちろん、2008年からの古参プレイヤーたちにあった知識網をないがしろにしてきたわけではない(と思う)。ただ、集まって車輪の再発明をしているだけでも楽しかったのだ。そういった意味でmeet-meは紛れもない新作ゲームとして私達を楽しませてくれたといえる。

余談だが、本当に動画投稿の多い月は新規の人が多くやってきて、動画投稿の少ない月は閑古鳥が鳴いていた。いかに動画文化に依存していたかがよくわかる。

どこが「意外とちゃんと」していたのか

こうして、wiki文化と動画文化によって、かなりの速度で効率的な開拓を実現した2016年の新規プレイヤーたちは、meet-meの可能性に気づき始めた。
それこそが「中途半端に高い自由度」と、「意外と導線はしっかりしているコンテンツの数々」だ。

このゲームは、奇跡的なバランスで高い自由度を誇っていた。
高いと言っても、Second Lifeのように、自分で素材を作ればその分自在にできる……といったような青天井の自由度とは違う。
具体的には「めちゃくちゃ大量に用意された既存のファッションや家具の中から選んで組み合わせる」といった自由度だ。0を1にできる環境と、1を組み立てて100を目指す環境の違いと表現すればいいだろうか。
 生活系の一部のアイテムが絶版になり、やたら高価で取引されていた(家具のトイレットペーパー1つが800万ココア≒だいたい課金アイテム5000円分)といった妙な問題を除けば、誰でも手軽に自己表現ができる環境にあった。

次に、公式のアトラクションは意外と導線がしっかりとしていた。
確かに一つ一つのチュートリアルの出来はよくなかったものの、特にRPGコンテンツに関しては、一度始めてしまえば新規プレイヤーがステップアップする導線がよくできていたと言ってもいい。
簡単に言うと、「安い鎧と剣を揃える→ドロップ品の原石を上位プレイヤーに売って装備を整える→鎧や剣を更に強化してデイリーダンジョンの周回効率を上げ、NPCにドロップ品を売ったお金で下位プレイヤーから原石を買う」という仕組みが綺麗に回っていた。(最初、ほんの少しだけパワーレベリングが必要だったけどご愛嬌)

RPGについては、手前味噌ですが自分で初心者向けの動画を作っていたので資料として参考にしてください。(これも淫夢キャラの解説という体)

これは一例に過ぎないが、Meet-Meには打てば(まあまあ)響くだけの密度を持ったコンテンツが眠っていた。「アバター付きのチャットツールに付いてるおまけの機能としてはかなりいい方」なコンテンツであり、事実としてこのRPGの攻略やレース、カードゲームで生まれた縁も多々あったことだと思う。そういう意味では、過不足ない、いや、不足はあったけど我慢できるレベルのコンテンツとして確かに愛されていた。

ユーザーイベント文化の成立

このあたりは、私は2~4月を体験していないので考察が混ざることをご承知頂きたい。

このゲームは先述したように、運営が介入して積極的に楽しみを作りに来る傾向があった。毎週月~土曜日の夕方5時から、運営スタッフ(GM)自らが初心者に様々な遊び方を紹介する「ひよこ塾」や、定期的に開催される季節イベントなどである。

ところが、ひよこ塾はともかく季節イベントの方には絶望的につまらないor最悪に理不尽なものが多々あった。
だったら、自分たちでイベントを開けばいい。「つまらないなら勝手に面白くすればいい」の精神が、ここで遺憾なく発揮された。
会場作りなどには自由度の高いハウジングがあるし、商品やイベント内容も自分たちで考えれば、少なくとも運営のイベントよりは面白くなる。

こうして、数々の名ユーザーイベントが開かれていくことになる。告知は主にmeet-me公式SNS(mixiみたいなUIだった)を利用して告知されていたのだが、グループのイベントカレンダーはほぼ常に満杯の状態だった。
初心者であっても、イベントを主催して人を集めれば、あるいは頻繁に参加しているだけでも名前を覚えてもらいやすい絶好の機会であり、この文化がコミュニティの最初期を形作ったと言っても過言ではないと思う。

ちなみに、内容については本当に様々だ。

Youtubeの動画をゲーム内で見れるアイテムを使った上映会、東京の地理を活かした観光、自転車を使ったレース、RPGの初心者をまとめて初級ダンジョンに送る引率会、ファッションショー、じゃんけん賭博大会 etc...

思いつく限りは大抵のことができた。

(ユーザーイベントや公式イベントについては、誰か別の記事で特集してくれないかな)

まとめ

人口や盛り上がりは芳しくないにせよ、長いアップデートの歴史を重ね、「そこまで悪くない、いい所もある」という所に落ち着いていたmeet-meのゲーム性は、良くも悪くも淫夢実況動画によって白日の下に晒されることとなった。

初見でのわかりにくさ、スピード感のなさによって「クソゲー」の烙印を押されることはまるで自然なことのように思える。
しかし、メタバースという「アバター付きチャットツール」のおまけとしては、むしろ本格的すぎるアトラクションが揃っていた。
その環境の上に、「つまらないなら自分たちで面白くすればいい」という、淫夢コミュニティに溢れる廃材アート志向が合わさって、少なくともプレイしている当人たちは面白がっているという状況を作ることができていたように思う。

これらが独自コミュニティを持った新規プレイヤーたちの一団に発見、あるいは車輪の再発明されたのは、「動画」「wiki」「大量の新人」という要素が奇跡的に噛み合っていたからではないだろうか。

宣伝

この記事は、meet-meの記憶を文章に残す #meetmeの記憶 という企画記事の一つです。

meet-meに興味を持った方、meet-meを少しでも楽しんでいた方、あの頃動画を見ていた方。ぜひハッシュタグに寄稿したり、ハッシュタグに寄せられた記事を御覧ください。

よろしくお願い致します。

コメント

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「日本版Second Life」Meet-Meが再評価されたわけ|Dorothea Rosewater
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