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新型コロナワクチンの救済制度 いまどんな課題が?

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予防接種は、感染症の予防において非常に重要な役割を果たしています。一方で、そもそもワクチンにはごくまれではありますが、副反応による健康被害が起きることがあります。そんな時のために知っておきたいのが「予防接種健康被害救済制度」です。1976年に施行された国の制度で、認定されれば、かかった医療費や医療手当などが給付されます。

新型コロナワクチンは国内でのべ4億4千万回接種され、救済制度の申請数は2025年4月4日時点で約1万3000件(うち9054件が認定)。いまも申請が続いています。

※予防接種健康被害救済制度の対象は新型コロナワクチンでは令和6年3月31日までの特例臨時接種・令和6年4月1日以降の定期接種の場合です。任意接種などの場合は医薬品副作用被害救済制度になります。

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新型コロナワクチン接種後の体調不良 どんな症状が?

岡山大学病院コロナアフターケア外来では、2022年以降、新型コロナワクチン接種後に体調不良をうったえる160人以上の患者を診てきました。医師の大塚文男さんによると、長期間症状に悩む人の場合、症状は多岐にわたるため、診断や治療も難しいとのことです。

岡山大学病院 総合内科・総合診療科 教授 大塚文男さん

Q.症状は、どんな傾向があるのですか?

岡山大学病院 大塚文男 教授

「手足の痺れや痛み、だるいとかしんどいとか起き上がれないといった倦怠感、頭痛、発熱、関節痛、筋力の低下、めまい、発疹、吐き気、喉の違和感など症状は様々。全身の反応として複合的に現れている印象です。そのため、内科や整形外科、脳神経内科や脳神経外科、リウマチ科など、多角的な視点で診ていかないと難しいのが実情です。我々の外来では、患者さんは男性よりも女性の方が若干多く(女性が63%)、年代の中央値は53歳で、40代や50代の働き盛りの方も多いという印象です。接種後1日から1週間での症状の発生が多く、6ヶ月以上持続する症状が多いようです。」

Q.治療はどういったことを行うのですか?

岡山大学病院 大塚文男 教授

「残念ながら特効薬はないので、対症療法することが基本となります。例えば痛みに関しても、神経から来ている神経痛なのか、筋肉や筋膜由来の痛みなのか、あるいは関節からの痛みなのか、などを検査して評価しながら、痛みの性質に合った痛み止めを処方し、痛みの専門家とも連携してベストな治療法を探していきます。1つの症状を治療する場合でも、複数の専門医や診療科と連携しながら総合的に診療しないといけない難治例もあります。起こっている症状について丁寧に対応し、症状の変化も含めて、長期フォローアップしていく診療が必要と感じます。」

ワクチン接種後の体調不良により、仕事に影響を受けているという実態も見えてきました。
ワクチンの健康被害をうったえる患者の会のアンケートによると、
▼体調不良による仕事への影響は「現在はない」:26.7%
▼休職後に復職したが以前のように働けないなど「以前と違う働き方になった」:28.0%
▼退職し、仕事に就けていないなど働けていない:45.3%

症状のつらさに加えて、収入への影響も深刻な問題となっています。

予防接種健康被害救済制度とは?

予防接種健康被害救済制度は、予防接種の副反応による健康被害があった人を迅速に救済するための制度です。認定にあたっては「厳密な医学的な因果関係までは必要とせず、接種後の症状が予防接種によって起こることを否定できない場合も対象とする」という方針で審査が行われ、認定されると国から以下のような給付が行われます。

▼医療費および医療手当:予防接種による疾病の治療にかかった費用や通院・入院に必要な諸経費を支給
▼障害児養育年金:予防接種による障害が認定された18歳未満の子どもを養育する人に支給
▼障害年金:予防接種による障害が認定された18歳以上の人に支給
▼死亡一時金:予防接種を受けたことにより死亡した人の配偶者または同一生計の遺族に支給
▼遺族年金:予防接種を受けたことにより死亡した人が生計維持者の場合その遺族に支給
▼葬祭料:予防接種を受けたことにより死亡した人の葬祭を行う人に支給 ほか
※金額など詳細は厚生労働省の予防接種健康被害救済制度のHPでご確認ください。

救済制度に申請するには?

予防接種健康被害救済制度への申請は、予防接種を受けた時に住民票を登録していた市町村に行います。例えば、医療費や医療手当を請求する場合、次の書類が必要です。

▼予防接種済証または母子健康手帳の写し

▼診療録(カルテ)

▼受診証明書

▼医療費・医療手当請求書

▼領収書

申請する人は、医療機関や薬局などから必要書類を入手し、市町村の窓口に提出します。その後、都道府県を経て厚生労働省に送付され、審査が行われます。

救済制度にはどんな課題が?

国は健康被害にあった人を「迅速に救済する」としています。しかし取材を進めると、必ずしも「迅速」といえない実情が見えてきました。

市町村の窓口で申請した後、審査結果が出るまでに1年以上かかるケースが多くあります。さらに、市町村に提出するための書類をそろえる段階でも、さまざまな「壁」があることがわかりました。

ワクチンの健康被害をうったえる患者の会のアンケートでは、次のような声が寄せられています。

・「手続きが複雑で必要書類が分からず、何度か病院と市役所を往復した。」
・「体調悪い患者が、必要書類を集められる訳がない。全ての資料を集める費用や手間がかかり過ぎる。」
・「自治体も医師も制度を理解しておらず、私も含めみんな手探り状態だった。」

さらに患者の会のアンケートからは「医療機関が申請書類の作成に協力してくれない」という問題も明かになりました。患者が医療機関にカルテの提出などを依頼したときに、
▼「医師に拒否され申請をあきらめた」:18.5%
▼「一旦は拒否されたが説得して作成してもらった」:22.5%
一度は医師に拒否されたという人が4割にのぼっています。
その多くが、医師から「ワクチンと体調不良の因果関係が証明できないから」と言われたといいます。

こうした課題を解決しようと取り組む地方自治体もあらわれています。

奈良県では「医師が書類作成に協力してくれない」という患者の声を受けて、申請書の記載マニュアルを作りました。多くの人がつまずいていたのが、申請書類のひとつ「受診証明書」。この中の「疾病名や症状」の欄は医療機関が患者の疾病名や症状を記載するところですが、「ワクチン接種との因果関係を証明できないから書けない」と医療機関に言われた人が多くいました。
そこでマニュアルには、医療機関がワクチンとの因果関係を書く必要はないことや、症状名や疑いでかまわないことなどを記載し、ホームページで公開。さらに、奈良県内の医師会と協力し、新型コロナワクチンの副反応や救済制度の啓発や研修会などを開きました。

奈良県の担当者によると、誤解や無理解で申請が滞ることが徐々に減ってきたといいます。
※奈良県作成のマニュアルはこちらから(NHKサイトを離れます)

名古屋市では、患者の経済的負担を軽減する独自の制度を作りました。「名古屋市健康被害救済申請支援金」です。

名古屋市に寄せられた救済制度の申請は、この4年間で約200件。市は、患者からの申請を受け付けた時点で、書類作成にかかった費用全額と、医療費自己負担分の4分の3を給付することにしました。国の救済制度とは別にいち早く金銭的な負担を軽減しようというのです。その後、国からの認定が出れば、市の助成に加えて全額支給されます。

名古屋市の担当者は「救済制度の申請をちゅうちょする経済的、心理的な負担や壁は大きい。問題を解決するため、市として支援金制度を設けて、申請の壁を低くしたい」と話します。
※名古屋市の救済制度はこちらから(NHKサイトを離れます)

こうした自治体独自の取り組みを評価すべきだとする一方で、「国は迅速な救済を実現できるよう救済制度自体を改善すべきだ」と指摘する専門家もいます。慶応義塾大学教授で、医薬品行政を監視する国の第三者機関「医薬品等行政評価・監視委員会」委員長の磯部哲さんです。

医薬品等行政評価・監視委員会委員長 磯部哲さん

「予防接種の副反応による健康被害は不可避的に発生するものです。そうである以上、平時でもパンデミック時でも、ワクチンの迅速な開発、公平な分配、適正で効率的な接種の実施などはもちろん大事ですが、それらと肩を並べる重要な課題として、健康被害の迅速な救済を位置付ける必要があります。最近、国の予防接種基本計画が改定され、コロナパンデミック時に救済給付申請の数が急増した際、従来の仕組みでは十分に対応できなかった反省を踏まえ、審査体制の強化や審査手続の迅速化に努めることが明記されました。しかしそれらに加えて、被害者やそのご家族、医療機関や地方公共団体の関係者等々、国民の間で救済制度の認知度を上げていくこと、申請する場合に全ての関係者がスムーズに協力できるよう運用上の工夫をアップデートしていくことが重要です。厚生労働省でも現場からの諸々不便だといった声を受け、診断書の記載例等を示すなど一定の対応はしてきたようですが、改めて、どんなところに問題点や課題があるのかを幅広く検証して改善していくべきだと考えます。」

次のパンデミックに備えるためにも、ワクチンの副反応について社会全体で理解し向き合うことで、安全性をより高めることに繋がるのではないでしょうか。

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