「心の糧」は、以前ラジオで放送した内容を、朗読を聞きながら文章でお読み頂けるコーナーです。
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坪井木の実さんの朗読で今日のお話が(約5分間)お聞きになれます。
鎌倉駅周辺での買い物を済ませると自然に足が向かいます。
鶴岡八幡宮参道の段葛を横切って振り仰ぐと、「絶えざる御助けの聖母」、マリアさまのモザイク画が日差しを受けて輝いています。
カトリック雪の下教会です。
階段を上がり正面の扉を開けて聖堂に入ると、大抵パイプオルガンの響きに包まれます。時には、全く物音ひとつしない静寂に包まれることもあります。どちらにしても思わずほっとして、椅子に座り深呼吸をし、跪いて十字を切り祈ります。声には出しませんが、日曜日のミサ以降の日々を振り返り感謝を捧げ、相談事を思いめぐらし、迷いがあれば決断する勇気を祈るなどして時を過ごします。すると不思議なことに心が落ち着いて「何事も主にお任せして、自分らしく頑張ればいいのだ」という安心感に包まれ、勇気が湧いてくるのです。
オルガン奏者の練習の日は、しばらくの間演奏を楽しんでから静かに退出します。
静寂で無人という日は広い聖堂を独り占めです。
十字架の道行の浮彫を1点1点祈りつつ鑑賞し、祭壇まで進みます。そして、祭壇左にある小聖堂の洗礼盤の低い柵の前に立ち、「鎌倉のキリシタン」という3枚の殉教者の歴史画をじっと見つめます。
教皇ヨハネパウロ2世が来日された年の暮れに、是非描いてほしいと主任司祭から依頼されて、2年をかけて完成させ寄贈した、私にとって最初のキリシタン歴史画がこの3作なのです。
第1作目は、北鎌倉にある駆け込み寺と言われたお寺、東慶寺のご住職に励まされ、重要文化財の聖餅箱を当時中学生だった長女に持たせて描きました。ほか2作の、牢内や火あぶりの場面も家族の協力なしには描けなかったでしょう。
原点に立ち返る私の拠り所です。