川崎市川崎区の白井秀征容疑者(27)は、以前に交際していたアルバイト従業員の岡崎彩咲陽さん(20)の遺体を自宅に放置した疑いが持たれています。
調べに対し、「間違いありません」と供述し、容疑を認めているということです。
被害者は、容疑者からのストーカー被害を周囲に訴えていたあとの去年12月に行方が分からなくなり、先月30日に警察が容疑者の自宅を捜索したところ、床下部分にあったバッグから遺体で見つかりました。
これまでの調べで遺体には焼かれた痕があったことが分かっていましたが、捜査関係者によりますと、焼損の程度は激しいということです。
警察による現場の検証では容疑者の自宅からは焼け跡などは見つからず、警察はほかで焼かれたあとに運び込まれたとみて場所の特定など詳しいいきさつを調べています。
川崎 遺体遺棄事件 遺体は自宅外から運び込まれたか
川崎市で女性の遺体を遺棄したとして27歳の元交際相手が逮捕された事件で、遺体は激しく焼損していたことが捜査関係者への取材で分かりました。遺体は、見つかった元交際相手の自宅以外で焼かれたとみられ、警察は、場所の特定など詳しいいきさつを調べています。
専門家「もっと踏み込んだ捜査をすべきだった」
今回の事件について、ストーカーの被害者の支援や加害者の更生などにあたっているNPO法人「女性・人権支援センターステップ」の栗原加代美理事長は、警察がもっと踏み込んだ捜査をすべきだったと指摘しています。
注目すべきポイントとして具体的に挙げたのは、去年9月に被害者の女性が容疑者から刃物を向けられたとして被害届を出したのに、その後取り下げている点です。
栗原理事長は「これまでのストーカーによる事件は、被害者が被害届を出したあとに起きているケースが多い。容疑者は『よくも警察に言ってくれたな』と怒りやうらみを覚える。そこを気をつけないといけない」と述べました。
そのうえで、「女性が被害届を取り下げた際に、容疑者から怒られたり、脅迫を受けたりしていたのではないか。それで女性は被害届を取り下げたのではないか。そう考えて、警察はもっと踏み込んだ捜査をすべきだった」と指摘しました。
さらに「被害者はつきまとわれていると警察に報告しているのに、なぜ『禁止命令』を出さなかったのか、ストーカー事件に対する見通しの甘さがあったのではないかと思う」と指摘しました。
一方、交際相手から暴力を受ける、いわゆる「デートDV」とストーカー被害には共通点があるとして「別れ話が出たあとが危険で、一緒にいる時はDVになるが、別れたあとはストーカーになる。支配と執着は、どちらも同じメカニズムで起きるということを知っておいてほしい」と話していました。
逮捕の元交際相手 7回任意の聴取で関与否定
岡崎さんは容疑者からのストーカー被害を周囲に訴えていて、警察によりますと、去年12月に行方が分からなくなった際には、親族が警察官に対し容疑者の家にいる可能性があると説明したということです。
こうしたことから、警察はその後ことし3月にかけて容疑者に7回任意で事情を聞いたということですが、「知らない」などといずれも行方不明への関与を否定したということです。
容疑者は先月上旬に出国していて、3日午後1時ごろ、アメリカから羽田空港に到着した航空機で帰国しました。
黒いキャップをかぶり、メガネをかけた容疑者がコンコースを歩いてきた際、5人ほどの警察官が一斉に取り囲み任意同行を求めました。
映像からは警察官の問いかけに静かに受け答えをしているように見えます。その場で、警察官と10分ほど話し込んだあと歩き始めました。
その途中、立ち止まってマスクをつけたりパーカーのフードをキャップの上からかぶったりしたあと、居並ぶ報道各社をじっと見据えるようにしながら歩いていきました。
警察は容疑者に任意同行を求めて事情を聴き、3日夜に逮捕しました。
警察は任意での事情聴取が繰り返される中で捜査の進展をおそれて逃亡したとみて調べています。
警察の対応 受け止めや考えに食い違い
今回の事件では、岡崎さんの家族などが白井容疑者からのストーカー被害を相談したものの、警察が求めた対応をしなかったと訴えています。
―神奈川県警 “必要な措置を講じてきた”
神奈川県警察本部でストーカーやDVなどを担当する人身安全対策課は3日夜、対応の状況を報道陣に説明しました。
それによりますと、警察が被害者への対応を始めたのは去年6月で、当時交際していた容疑者とのトラブルについて本人から「彼氏とケンカになった」という趣旨の通報を受けてからだということです。警察官が対応し、祖母の家に避難させる措置をとったとしています。
また去年9月には父親から「娘が元交際相手から暴力を受けた」という趣旨の通報があったということで、警察官が被害者に話を聞いたところ「刃物を向けられた」と説明したことから、被害届を受理したとしています。
翌月、この被害届は元交際相手と復縁していた被害者自身が「事実と異なる説明をした」として取り下げたとしています。
その後、警察は2人の関係が継続していたとみられていたことから、それぞれの家族とも話をするなど被害者の意向も確認しながら、必要な措置を講じてきたなどとしています。
被害者の行方が分からなくなったのは去年12月20日で、この月の上旬から中旬にかけては本人から「元交際相手が自宅近くをうろついている」などという電話が川崎臨港警察署に9回、寄せられたということです。これに対し警察は「元交際相手と連絡を取らないこと」などのアドバイスをしたとしています。
一方、行方不明になったあとについては元交際相手にあわせて7回、任意で事情聴取を行ったほか、自宅を確認するなどしていたとしています。この際、元交際相手は被害者の行方について「知らない」などと説明していたとしています。
そのうえで、警察としては、ストーカー被害の相談を受けていた認識はないとしていて、理由については、十分に話を聞けなかったり、警察署に来るよう求めても応じてもらえなかったりして事実を丁寧に把握できなかったためとしています。
警察は当時の対応状況について、今後の捜査で解明し、改善するべき点があったか確認を進めるとしています。
―父親の岡崎鉄也さん“県警の説明 事実と違う点がある”
岡崎彩咲陽さん(20)の父親の岡崎鉄也さんは、3日午後8時すぎに川崎臨港警察署の前で報道各社の取材に応じました。
神奈川県警の人身安全対策課が、報道各社に説明した彩咲陽さんのストーカー被害などへの対応状況には事実と違う点があると、改めて抗議をしたということです。
鉄也さんは「警察署の担当者や神奈川県警の幹部、そしてわれわれが参加する公開の話し合いの場を求めたい」と話していました。
警察署には、鉄也さんのほかにも彩咲陽さんの友人など数十人が訪れ、警察官に抗議する場面もあり、一時騒然となりました。
【解説動画】警察・家族側の説明は
Q.なぜこうした事件が防げないのかと思ってしまいます。被害者の父親や関係者が警察署に詰めかけていました。
A.被害者の訴えに対する警察の対応をめぐって、双方の受け止めや考えが食い違っているんです。
まずは警察側の説明です。
警察が初めて被害者に対応したのは、去年6月。「彼氏とケンカになった」という趣旨の通報を受けて、被害者を祖母の家に避難させる措置をとったとしています。
9月には「刃物を向けられた」という申告があり、被害届を受理しました。
しかしその後、被害者みずからが「事実と違う説明をした」と被害届を取り下げたとしています。
12月には「元交際相手が自宅近くをうろついている」など、電話での連絡が複数回相次ぎました。
Q.このとき、警察はどのように対応をしたのでしょうか。
A.容疑者と連絡を取らないことなどアドバイスしたとしているが、12月20日に被害者の行方が分からなくなります。
その2日後、被害者の祖母から自宅のガラスが割られたという通報があり、警察官が現場に赴きます。
このあと容疑者宅に行き、家の確認や事情聴取を行ったとしています。
また、警察は行方不明届けが出された翌日にも容疑者宅の確認などを行ったほか、捜索を行ったとしています。
Q.遺体が発見される前にも容疑者の家を確認していたが、遺体は見つけられなかった。家族側はこうした状況をどう受け止めているのでしょうか。
A.「警察はうそをついている」と真っ向から否定しています。
中でも具体的に強く反発しているのが、12月22日に祖母の自宅のガラスが割られた際の対応です。
Q.警察は現場に行ったあと、容疑者宅の確認や事情聴取をしたとしていました。
A.家族によりますと、この日は窓ガラスの鍵の部分が割られ、窓が開けられていたということですが、警察官が来るまでの間に窓を閉めたということ。
現場に来た警察官は「窓が閉まっているんだから、事件性はない」と言って、捜査をしなかったと述べています。
また被害者の父親は、容疑者から「殺すぞ」という内容のメールがきたときも、警察が捜査しなかったと強調しています。
警察に不信感を募らせた家族は先月になって、元警察官を頼り、ともに警察署を訪れて抗議するなどしている。
警察が、被害者側の訴えを完全に放置していたわけではなく、一定程度は対応してきたとは言えますが、被害者が亡くなったという結果の重大性から考えると、遺族が当時の対応に納得できず、不信感を募らせるのも無理はないと思います。
双方の食い違いが拡大し、事態が切迫していっていることを十分にすくい取れていなかった可能性はあるといえます。
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