吉田拓矢(29=茨城)が初のダービー王に輝いた。過去最高の優勝賞金9400万円を懸けた最高峰レースでズバッとV差し。21年小倉競輪祭以来、2度目となるG1制覇で、暮れのKEIRINグランプリ(GP、12月30日・平塚)出場も決めた。
バックまくりで粘り込んだ真杉匠が2着、俊敏に伸びた古性優作が3着に入った。
盟友がつくったチャンスを逃さなかった。吉田拓矢が真杉匠のバックまくりを差し切って大会初制覇。優勝会見では、「まさか自分が(優勝を)取れるとは…。仲間のおかげ。頑張ってきてよかった」と顔を上気させながら語った。
この大一番へ心身を仕上げた。初日特選をまくり追い込みで制すと、準決も総力戦で突破した。迎えた決勝は大観衆の下でも、「真杉が前と車間を空けていた。一気に行くだろうし、離れないように。強かったが、自分も余力があった」と冷静にポイントを整理。今節最高となる上がり10秒6のスピード差しを決めた。
21年11月小倉競輪祭から、この2度目となるG1制覇まで3年半がたっていた。23年8月西武園オールスターは果敢に逃げて真杉Vを演出も、暴走失格と判定され、3カ月以上も戦列を離れた。それでも、「子どもが誇りを持ってくれるような父親になろうと」と気持ちを強くした。
弟の昌司(111期)や有希(119期)はもちろん、先輩や後輩の励ましもあり、地道にバンクや街道で乗り込んだ。昨年の決勝は平原康多Vにも貢献。そして年頭に鎖骨骨折も練習量を落とさず、4月中旬には手術用のプレートを除去。「少し軽く感じる」と肩周りの可動域を広げてこの日を迎えた。
「自信を持って真杉の前を回れるように力を付けたい。関東をもっと盛り上げられるように。気を引き締めていく」。茨城支部では09年の武田豊樹以来となるダービー王。出場権をつかんだGPをにらみ、関東を強固にするよう力を注いでいく。【野島成浩】
◆吉田拓矢(よしだ・たくや)1995年(平7)5月7日、茨城県つくば市生まれ。取手一高卒。競輪学校(現養成所)107期生として15年7月弥彦でデビュー(予選1、準決1、決勝1)。21年11月小倉競輪祭でG1初制覇。総獲得賞金は5億3621万5748円。172センチ、73キロ。血液型O。