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米下院の中国特別委員長、対中PNTR撤回を再度主張も、議会の政権発足後100日の動きは鈍く
(米国、中国)
ニューヨーク発
2025年05月02日
米国連邦議会下院の米国と中国共産党間の戦略的競争に関する特別委員会(中国特別委員会)は4月28日、同委員長のジョン・ムーレナー下院議員(共和党、ミシガン州)が同日付の現地保守系メディア「ワシントン・エグザミナー」に掲載した論説を公表した。
同論説で、ムーレナー氏は、ドナルド・トランプ大統領の関税政策を称賛した上で、「行政措置を通じた関税は一筆で撤回可能であり、持続可能な超党派の立法措置が必要だ(注1)」と述べた。具体的には、米国の中国に対する最恵国待遇の撤回〔恒久的正常貿易関係(PNTR)ステータスの撤回〕を訴え、ムーレナー氏らが2025年1月に同内容を盛り込んで提出した法案(2025年1月24日記事参照)の可決を訴えた。
ただし、同法案の成立可能性は見通せない。現在、連邦議会は上下両院で共和党が多数派を占めるが、議席差は僅差であり(2024年12月6日記事参照)、党派間で意見が対立する法案の可決に向けて、共和党はわずかな党内の造反も許されない状況だ。一般的に、対中強硬路線に関しては超党派の一致があるものの、トランプ政権の関税政策に関しては、民主党議員が反対するのみならず、共和党議員の意見が分かれる様子もうかがえる。例えば、上院では、ロン・ワイデン議員(民主党、オレゴン州)とランド・ポール議員(共和党、ケンタッキー州)が4月10日に、世界一律の10%のベースライン関税(注2)および相互関税の根拠となる緊急事態宣言を無効とする決議案(S.J.Res.49)を共同提出した。同決議案は4月30日に否決されたものの、ポール氏を含めて3人の共和党上院議員が決議案に賛成票を投じた(注3)。
さらに、ワシントンの政治情勢に詳しいコンサルタントによれば、トランプ氏が就任後100日間で140本以上の大統領令などを発令していることを受けて(2025年5月1日記事参照)、「共和党議員は、トランプ氏の立て続けの行動にうかつに介入しないよう、様子見している」と指摘する(注4)。実際に、トランプ氏の就任後100日間で、議会が成立にこぎつけた法案は5件のみで、これは過去70年間の政権発足後100日間における法案成立数として最も少ない(「タイム」誌電子版4月29日)。行政・立法・司法の三権分立の統治制度の米国で、議会はトランプ政権の行政措置のアクセルを踏むのか、またはブレーキをかけるのか、その果たす役割が注目される。
(注1)トランプ政権が2025年2月以降に賦課を開始した対中追加関税(合計145%)は、いずれも国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく。IEEPAに基づく措置は、措置発動に先立つ関係省庁の事前調査や意見聴取の手続きが不要とされる。実際に、トランプ氏は、大統領令などへの署名を通じて、追加関税を賦課する行政措置を講じてきた。一方で、措置撤回にも関係省庁の手続きが不要とされ、大統領令などへの署名(ムーレナー氏の言う「一筆」)を通じて、撤回される可能性がある。IEEPAの詳細は、2024年12月10日付地域・分析レポート、2025年1月15日付地域・分析レポート参照。
(注2)トランプ氏は4月2日、全ての国・地域から輸入される実質的に全ての品目に10%の追加関税を課すベースライン関税と、米国との貿易赤字額が大きい国・地域に対し、より高い追加関税率を課す相互関税を発表した(2025年4月11日記事参照)。このうちベースライン関税は米国内製造業回帰を目的に、相互関税は相手国・地域の関税・非関税障壁を削減する目的があると指摘されている。
(注3)ポール議員のほか、スーザン・コリンズ議員(共和党、メーン州)、リサ・マコウスキー議員(共和党、アラスカ州)。なお、投票結果は、賛成49、反対49、欠席2で、賛否同数だったため、議長を務めるJ.D.バンス副大統領が決議案を廃案とした。
(注4)ジェトロのヒアリングに基づく。
(葛西泰介)
(米国、中国)
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