上映中の『HERE 時を越えて』は定点カメラでアメリカの、主にイギリス植民地時代から現代までの様々な場面を映す異色作だけど、先住民の夫婦が暮らしていた土地がウィリアム・フランクリンの邸宅に変わっているにもかかわらず、その間を全く描かないのが不誠実だなと思った。そこで虐殺と排除が行なわれたのは明白だから。また現代のパート(Black Lives Matterの最中と思われる)で黒人の父親が子どもに「警官に止められたら礼儀正しく、従順に、丁寧に答えろ」といった旨を教えていて、それ自体は暴力を回避するための自衛手段だけれど、同時に「怪しくない、聞き分けの良いマイノリティでないと生存を認められない」というメッセージを強化してしまうよなと思った。特にその場面「しか」描かないことによって。あと弁護士を目指すマーガレットが妊娠してキャリアを諦め、結局家族に尽くすだけの人生になったのも、映像的に「でも良い瞬間もあったよね」と無理やり感動させてて気持ち悪い。そうやって定点カメラが(中立な顔をして)長い歴史をまたいで映すのは、白人至上主義、植民地主義、家父長制の産物でしかないよね、という感想。